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スライムの森

第21話 危ない橋 B

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「あの、それでですね。────こちらで雇った、冒険者のスズヨウさんなんですが、……戦闘中に、逃げ出してしまったんです。スライム・キングに怯えて、────怖気付いたんでしょう。ボスの出現と同時に、森の中に消えてしまって────この場合、どうすれば……」

「ああ、それは御気の毒でしたね。────ですが、そういった事も含めて、『冒険』であり、そういった危険性を孕んだ仕事が『モンスター討伐』です。────ギルドが仲介した冒険者の不手際とはいえ、保証は出来かねます。ご理解ください」


 ……。

 僕は嘘はつかず、自分が非難されない形で情報を開示した。
 相手の反応を見たかったのだが、どうやら、保証金を狙ったクレーマーと思われたようだ。
 

「わかりました。……あの、それとですね。────逃げ出したスズヨウさんなんですけど、単独でスライムを倒すことの出来ない人でしたので、もう殺されてしまった可能性が高いと思うんですけど……。この場合、パーティのリーダーだった僕が、なにか、────仲間を死なせてしまったことに対する、責任と言いますか、罰やペナルティを科せられることはありますか────?」


 念のため────

 僕はもう少し深く、探りを入れてみた。
 スズヨウさんはもう死んでいるが、そこはぼかして話す。

「先ほども申し上げましたが、『そういうことも含めて』冒険です。冒険者は皆、危険な仕事と理解したうえで、自ら志願して参加しています。仲間の死は残念ですが、雇用主が責任を問われることはありません。────ですが、『正当防衛』の場合を除き、故意に仲間を殺害した場合は、ワールドニュースでアナウンスされ、ペナルティを科せられることになりますので、注意してください」


 ……。

 …………。

 受付の人の説明を聞き、肝を冷やした。

 僕は『故意に』スズヨウさんを殺害した。
 自ら手を下してはいないが、死ぬように仕向けたのは確かだ。
 
 だが僕の犯行は、ワールドニュースになっていない。
 あれは『正当防衛』だったと、ゲームの管理者が判断したからだろう。

 そうでなければ────
 僕が人を殺したことが、ニュースになっていたのだ。

 ゲーム世界の全てのプレイヤーとNPCに、周知されるところだった。

 




 正当防衛か否かを判断する、明確な基準は分からない。
 
 ゲームの管理者が、アウト判定していれば『犯罪者』になっていた。
 僕の名前がワールドニュースで、『殺人犯』として流れたことになる。

 …………。

 ……。


 僕はかなり危ない橋を、渡っていたようだ。




 さて────

 聞きたいことは聞けたし、知りたい情報は手に入った。

 僕は宿屋の部屋に移動し、ベットに寝転がる。
 
 
 戦闘はしていないが、どっと疲れた。
 今日はもうログアウトしたいが、最後にこれだけ確認しておこう。



 僕は冒険者ギルドで貰った、地図を広げる。
 地図には『ブイロ村』と『スライムの森』が描いてある。

 そして────
 その南東と北東にそれぞれ一つずつ、村とダンジョンの位置が記されていた。

 
 *************************

 名前    タナカ ジロウ           
 
 職業      冒険者Lv20 魔法使いLv16                       
 戦闘タイプ     特質系 時空間能力者
 魔力属性        闇  
 

 最大HP      130/140
 最大MP      360/670

 膂力         28
 体力        130
 魔力        830
 俊敏         62
 命中         55

 精神力       125
 運          70
 魅力        115       


 装備
 旅人の服 旅人の靴 旅人のマント 冒険者の鎧 冒険者の兜 冒険者の盾 魔導士の指輪 勇者のネックレス

 スキル
 魔力操作 魔力属性変化 魔力具現化 魔力放出

 魔法
 なし

 特技
 ダークショット スロウ ワープ

 所持金
 金貨52枚 

 ボーナスポイント
       0 

 *************************
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