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聖女を追放した国の物語
第37話 デート B
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俺様は『それ』を召喚する。
『支配』の力で、大地に縛り付けられていた『それ』を引っ張り上げる。
「依り代は用意してあげたわ。いつまでも地下に引き籠っていないで、さっさと出てきなさい。七つに引き裂かれ、封じられた。今は名もなき、七つのうちの一柱よ」
俺様の呼びかけに呼応するように、上空に集まった死体の塊が――
ドクンッ、と脈打つ。
そして俺様の制御を離れて、一つの生命体となって活動を開始する。
そいつはゆっくりと、上空から地上へと降りてくる。
球体を維持したまま、地上から三十メートルほどの位置で停止する。
かつて破壊神だったものの、成れの果ては――
自らの形を変形させて円形の身体に、無数の触手を発生させる。
俺様のいる処刑台に近づくと、発生させたばかりの触手数本を鞭のようにしならせて、俺様の居る処刑台に向かって振り下ろした。
ズドォオォオオオオオオンンンン!!!!
破壊神の攻撃で、処刑台は崩壊した。
破壊神の触手で切り裂かれた巨大な建築物は、崩壊し粉塵が舞い上がる。
七分の一とはいえ、流石は破壊神の攻撃だ。
俺様の拒絶もダメージを綺麗に返せずに、周囲に衝撃が拡散している。
俺様は拒絶の力で無傷だが、足場がずいぶん不安定になってしまった。
支配の力を使って、周囲から死体を集めて処刑台を補強する。
破壊神の奴め――
一時的にとはいえ、俺様に『支配』されたことを根に持っているようだ。
せっかく封印から解放してやったのに、恩をあだで返しやがって――
だが、俺様に攻撃は通用しない。
それどころかダメージが跳ね返って、自分の身体が崩れるだけだ。
完全体ならいざ知らず、今の破壊神は七分の一だ。
俺様を攻撃するのは無理だと諦めたようで、腹いせにこの周りの建物を攻撃して破壊している。
破壊神からは――
手当たり次第に人間を、建物をこの街をこの国をこの世界そのものを、破壊しつくしたいという衝動が伝わってくる。
「ふぅ……」
ここまでで――
随分とエネルギーを、消費してしまった。
もうほとんど、力は残っていない。
立っているのもしんどいので、どこかに座ることにる。
腰掛はないかと見まわすと、良い椅子を見つけた。
死体が折り重なって断頭台を背もたれにして、ちょうど椅子のようになっていた。
俺様に相応しい玉座だ。
俺様は椅子に腰かけ、やみくもに破壊を続ける破壊神を見上げる。
「いつまで馬鹿みたいに暴れているのかしら? お前の相手は、あの男よ」
俺様は目の前の大通りの、先を指さす。
そこには逃げ惑う民衆と、まっすぐにこっちを見つめる男がいた。
俺様は――
ようやく、主役と対面する。
「破壊神――お前の相手はね……あいつがするわ」
そいつは地面に両足で立って、自信に満ちた顔で剣と槍を構えている。
そして、この俺様に向かって、堂々と大見えを切った。
乗ってきた馬は、すでに後ろへと逃がしたらしい。
――そういえば、邪竜王の時もそうだったな。
馬なんて使い捨てればいいだろうに、キザな野郎だ。
まあ、いいか。
やっと、待ち望んだ時間が始まる。
楽しい『アトラクション』を、わざわざ用意してやったんだ。
「さあ、王子様! 『私達』のデートを始めましょう!!」
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