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冒険者編
第70話 VSモンスター・スタンピード A
しおりを挟む俺は拠点の外周の壁の上で、押し寄せる『噛みつきバッタ』の群れを眺めている。
魔物の群れは、より巨大な魔物に捕食されていて──
そこから逃げる為に、こちらに向かって来ている。
しかし、そいつらは敵に追われながらも──
人間を見つけて明確な敵意を持ち、俺達を捕食する気で向かって来ている。
噛みつきバッタの群れは、敵に襲われながら、敵を襲おうとしている。
「──忙しい奴らだ」
戦闘能力は150以下だが、七百の大軍が猛スピードで迫って来る様子は壮観だ。
戦闘能力2300の大物が後ろに三匹控えているので、『余力を残して対処したい』と思っていたが、敵軍の威容を見ると、そうも言っていられない。
──仲間の士気が心配だ。
敵の勢いと数に飲まれて、冷静に対処できない仲間が、何人かいるかもしれない。
それはマズい。
力の温存とか、言ってる場合じゃないな。
初手で、大魔法をぶっ放す!!
──あと、十秒ほどで敵の先陣が、ここに到達するだろう。
長々と説明している時間は無い。
俺は魔導士の杖を装備して──
おおざっぱな方針を、スキル『通信』で仲間に知らせる。
『最初に俺がデカいのを放つ。後は任せた』
この魔導士の杖は、魔術師の杖と魔物素材を適当に錬成しまくっていたら、いつのまにかアップグレードされていた代物だ。
*************************
魔導士の杖 (所有者ユージ)
強度 195
魔法使用時 MP軽減20パーセント 威力増幅15パーセント
魔力操作性向上
品質A
*************************
魔法属性は火属性。
俺はこの魔導士の杖に、約三分の二のMPを注ぎ込む。
これから行使する、魔法のイメージは──
一直線に引かれた油に、火をつければ起こる様な……
空中を走る炎。
それが敵に到達した瞬間に、爆発するように燃え広がる。
そんなイメージ。
魔法は自分の周囲からでないと具現化できないので、導火線に火をつけるような手順が必要になる。
自分の周囲で大爆発を起こせば、巻き込まれて死ぬからな。
なるべく、多くの敵を巻き込みたい。
スピードではなく、攻撃範囲を優先する。
狙うのは、個体ではなく集団。
噛みつきバッタは、大きく三つの塊に分かれて、こちらに迫ってきている。
俺はそれぞれの群がりに向けて、魔導士の杖から炎の線を三つ走らせる。
炎は空中を走り、迫りくる虫の群れの内の一匹に着弾して──
俺のイメージ通りに、燃え広がった。
──辺り一面。
空を、炎が埋め尽くす。
爆発から少し遅れて、熱気が俺を通り過ぎていく──
爆発と熱気で、敵軍が混乱しているうちに……
俺は隠密結界を張って、敵に向かって一直線に走り出した。
大魔法で敵の大部分を駆除できただろうが、肝心のビッグ・ジャイアントフロッグ三匹は、ほぼ無傷だ。
途中にいる噛みつきバッタの生き残りはすべて無視して、ビッグ・ジャイアントフロッグの所まで辿り着く。
ビッグ・ジャイアントフロッグ三匹は、俺の大魔法を警戒して、拠点に近づかずにこの場所で様子を見ている。
俺はビッグ・ジャイアントフロッグ三匹の後方へと回り込み、魔導士の杖に残りの魔力を込める。
──使う魔法は火炎球。
俺の放った炎の球はビッグ・ジャイアントフロッグに着弾し、一瞬で燃え広がる。
そして、敵の巨体の半分を、焼き尽くし消滅する。
魔導士の杖を異空間へと収納する。
──攻撃魔法は、もう撃てない。
これで残りは二匹。
魔力は、ほぼゼロだ。
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