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冒険者編
第69話 拠点構築 B
しおりを挟む次の日からは、ミノタウロスを警戒しつつ、魔物狩りを開始する。
防衛拠点も作ったし、敵に攻めてきて貰いたい。
問題はどうやって敵を誘うかだが──
広域探知を飛ばせば、気付いたモンスターはやって来るだろう。
しかし、魔力に敏感で厄介な奴が多い。
それに、想定外に多数の魔物を引き寄せてしまう危険もある。
こっちで敵の数をコントロールできない、という難点もある。
この辺りが、危険区域に指定された原因の、ミノタウロスもやってきかねない。
いずれ倒す予定だが、多数の魔物を引き寄せたところに来られても困る。
敵が来るのを待つか、こっちから釣りに行くか──
俺が悩んでいると、物見櫓から──
「おーい、兄貴。向こうの様子が変だぜ!」
「ご主人様―、なんかいっぱい来るよー」
リコリンと、ナーズが異変を報告してきた。
リコリンは、俺に結構懐いてきている。
呼び方も『兄貴』になった。
あの二人は性格が真逆で、最初は馬が合わなかったが、年が近いこともあり、すぐに仲良くなった。
今も遊びがてら、一緒に物見櫓に上がっていたところだ。
指輪の通信で、全員に警戒信号を送ってから──
俺も状況確認の為に、物見櫓へと上がる。
物見櫓からはこの周囲を、三百六十度見渡せる。
平原エリアは地平線の果てまで、荒野エリアは岩山の後ろは無理だが、かなりの範囲を見通せる。
問題の異変は、平原エリアの地平の果てにあった。
無数の黒い影と砂煙。
それがこちらへと、押し寄せてくるのが見える。
俺は広域探知を砂煙の方角へと放つ。
異変の正体は、『嚙みつきバッタ』という名前の魔物の群れ──
戦闘能力は100から150程度だが、問題はその数だ。
全部で七百匹以上いる。
それが群れを成して、押し寄せてきている。
遠目に見ても、迫力が凄い。
ただこの事態の真の脅威は、噛みつきバッタの群れではない。
噛みつきバッタを捕食しようと、その後ろから『ビッグ・ジャイアントフロッグ』という魔物三匹が追い回している。
『ジャイアントフロッグ』と呼ばれるカエルの魔物の、さらに上位種だ。
戦闘能力は三匹とも約2300。
厄介な魔物の群れと──
かなりの強敵が三匹。
俺は全員に事態を通達して、戦闘態勢を取るよう指示する。
まずは、レイレルとサリシア、ナーズそしてリコリンは物見櫓から、弓で敵を攻撃。それ以外は拠点に籠り地上で迎撃。
戦闘の第一段階はこれでいく。
下手に外に出れば、敵の集中攻撃を受ける。
俺は外に出ようとしていた、ドワーフのトールルを慌てて止める。
「盾使いは、部隊の先頭に立つのでは──?」
「防御陣地を構築してるんだから、今はいいんだよ。この中に居て敵が入り込んできたら、盾で押し潰せ」
俺はそう指示を出して、トールルの尻をパシンと叩いた。
「ふぎゃッ!!」
慌てていたので、少し強く叩いてしまったようだ。
ちょっとフォローしておこう。
「正念場だ。気合い入れてけよ!」
「叩かれずとも、気合は十分入ってます!!」
彼女はドワーフとして鍛冶師の才能を持ち合わせなかったことに、多少なりともコンプレックスがある。
盾使いとして、活躍したいのだろう。
まだ弱いから、無理させる気はないが──
噛みつきバッタは全長一メートルで、魔物にしては小柄だが跳躍力がある。
陣地内に侵入されるだろうし、物見櫓の上も危険だ。
弓の攻撃に集中し過ぎず、接近した敵とは短剣で戦うように言って注意しておく。
それ以外のメンバーには、ビッグ・ジャイアントフロッグとの戦闘も視野に、余力を残しながら、噛みつきバッタと戦うように言っておいた。
ビッグ・ジャイアントフロッグは、五メートルを超える巨体の魔物だ。
長い舌を伸ばして、噛みつきバッタを捕獲して、引き寄せて捕食している。
敵の数を減らしてくれるのはいいが、いずれはあいつらもこちらに来るだろう。
さて、どう戦うか──?
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