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冒険者編
第45話 山賊が現れた 7 B
しおりを挟むこの山賊を鑑定した結果、俺の奴隷になることは無かった。
──よかった。
コイツをスキャンして得た情報で、重要なものは二つの『スキル』だろう。
スキル『成長速度三倍』と『不死』。
どうやら、成長速度三倍のスキルの効力で、コイツは人より三倍の速さで強くなれる代わりに、年を取るのも三倍速くなるようだ。
そんなスキルを持っている割には、対して強くなかったが──
これまで、ろくに体を鍛えてこなかったんだろう。
それだと宝の持ち腐れになるどころか、このスキルはデメリットでしかない。
そして、もう一つの『不死』というスキル──
このスキルは、一度しか発動しない限定タイプ。
死んでしまっても、翌日にHP1の状態で、復活できるという破格のスキルだ。
ゲームなんかではよくある能力だが、『無制限に復活』だとゲームバランスが壊れるので、一度だけという制約が付けられたのだろう。
その他にも、『HP自動回復強化』というスキルもあった。
この世界では、HPは寝れば回復するが、休んでいても自然回復する。
それを強化してくれる、というスキルらしい。
地味だが羨ましいスキルだ。
スキル以外にも『特別扱い』という才能が付与されていた。
所属する集団の中で、特別扱いを受けやすくなるという効果があるらしい。
なんかコイツ、かなり優遇されているな──
女神は、こいつに結構期待してそうだが……
まあいい。
目的地のイーステッドで、騎士団にでも引き渡せば、その先は塀の中で臭い飯を食うだけの人生になるだろう。
……いや、待て。
こいつを街に着くまで、荷物として運び続けるとか嫌過ぎる──
「とりあえず、殺しておくか──」
罪科ポイントが聖科ポイントよりも、一万以上多い犯罪者だ。
別にいいだろう。
俺がそう言って、槍で山賊の心臓を突きさそうとするのを、ラズが止めた。
「……ま、待って下さい。ユージ!!」
ラズがなぜ止めるのか、リズが不思議そうにしている。
「そいつは殺さずに、小鬼族の村に連れて行ってください!!」
「……そっか! お姉ちゃん、処刑だね。皆の前で処刑しなくちゃ!!」
…………。
──それも、そうだな。
小鬼族の村は、山賊に襲われて被害を受けている。
山賊を生け捕りにして連れて行けば、いい手土産になる。
ちょうど馬車の荷台には、ラズとリズを縛っていたロープがある。
俺はそのロープで山賊を縛りあげて、馬車の荷台へ放り込んだ。
せっかく馬車が手に入ったので、荷物はそこに乗せる。
山賊のアジトから頂戴した食料は、干し肉と小麦や大麦が大量にある。
山賊団は大所帯だったからな。
保存食は持ちきれないほどあった。
放置していたモンスターを解体して、素材を馬車に乗せる。
それから、小鬼族の村に向けて出発した。
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