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冒険者編

第41話 山賊が現れた 5 B

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 俺の火炎魔法は、山賊の顔面を直撃するが──
 敵は、死ななかった。

 普通の人間なら、消し炭になる攻撃を耐える。

 完全に不意を突いたが、防がれた?
 山賊の、顔は焦げている。
 ノーダメージではない。
 オートガードか?

 俺の思考は加速するが、考察している時間はない。
 敵との戦闘に集中する。


 魔法では倒せなかったが、隙を作ることは出来た。
 その隙をついて、俺は剣を山賊の脇腹に突き刺した。

 剣は深く、山賊の腹を抉っている。
 俺は刺した剣を引き抜いて、もう一度突き刺そうとする。

 ここで勝負を、決める!!

 勝負を焦った、俺の頭を──
 山賊が掴んだ。

 ──ッ!!



 そのまま山賊は、俺を片腕で持ち上げ走り出す。

 マズイッ!!──

 闘気を、頭に纏わせる。
 

 山賊は崖まで最高速度で走り、俺の頭を岩壁に押し込む勢いで──

 ドゴォオッッ!!!

 叩きつけた。



 闘気を纏って頭部の強度を上げていたので、死ぬことは無かったが──
 それでも、岩にぶつけられた瞬間、目に火花が飛んだ。

 剣を、手放してしまっている。


 俺のHPは、半分を切った。

 山賊は俺の頭を、二度三度と岩壁に叩きつける。


 俺は短剣を装備して、山賊の手首を切りつける。

 握力が緩んで、山賊は俺の頭を手放す。

「まだ……隠し持っていやがったか──フンっ」

 山賊が気合を込めると、傷口がみるみる塞がっていく。
 それに伴いはぁはぁ、と息切れしだした。
 おそらく体力を消費して、傷を治すようなスキルだろう。

「手こずらせやがって、このチビがッ!!」

 奴が傷を治している隙に、俺の方も回復薬を取り出して治療を行う。

 俺の傷と体力が、回復する。

 



 手放してしまった剣とは、距離がある。
 拾う隙は、無い。

 武器は、このまま短剣でいく。
 

 山賊は積極的に攻勢をかけてくる。

 俺は敵の攻撃を、短剣で受けながら後退していく。

 一撃、二撃、三撃と攻撃を受けた後で──
 短剣に闘気を、ありったけ込る。
 四撃目は後退せずに、踏ん張って受けた。

「ぐっ、……ぎゃあああっぁぁああ!!!!」

 山賊の悲鳴が、山の中にこだまする。

 俺の短剣は山賊の拳を、メリケンサックごと真っ二つに切り裂いていた。
 俺はそのまま、短剣を山賊の腹に突き刺した。



 俺は跳躍して、山賊の肩の上に飛び乗り、頭を掴んで魔法で炎を作り出す。

 山賊の頭は、炎で包まれる。

 闘気はもう──
 使い切っている。





 俺に残っている余力は、この魔法だけだ。
 これで仕留められなければ、俺はこいつに殺される。
 そんな危機感が、俺を必死にさせている。

 魔法で身体能力を強化。
 渾身の力を込めて、山賊の顔をグリップして、魔法の炎を維持する。
 魔法耐性が強くても、酸素が無ければ死ぬだろう。

 山賊は無事な方の手で、俺の手首を掴む。

 ──そして



 二分後……、
 焼け焦げた山賊の死体が、地面に転がっていた。


 俺は少し離れた場所で待機させている、アカネル達と合流するべく歩き始める。

 その時、キャッー-!!
 という、甲高い女の悲鳴が響いた。

 あの声は──
 モミジリか?

 俺は声の場所へと走り出した。
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