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冒険者編

第37話 山賊が現れた 1 A

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 俺たちは、山の中の道を歩いている。

 道には女神の加護がかかっているため、出現するモンスターは雑魚ばかりだ。
 山道と言っても、舗装されているので歩きやすい。

 ちょうどいい機会なので、隊列の先頭をアカネルとモミジリとイルギットの三人に交互に任せることにした。

 生い茂る木々に太陽の光が遮られるせいで、山の中の道は、かなり薄暗くなるところもある。茂みに潜んで襲い掛かってくる敵もいる為、三人には緊張感を持って歩いてもらう。

 この山歩きは、良い訓練になっている。

 魔力探知を道に沿って、定期的に放っているので、予期せぬ強敵に遭遇するといった事態に、陥る危険はない。





 一日歩いて日が落ちる前に、野宿の用意をする。
 寝袋をサイザルの町で買って、持ってきている。

 テントの購入は悩んだが、荷物が嵩張るし、準備に時間がかかりそうなので、止めておいた。このパーティで、荷物持ちを担当するのは、消去法でナーズになる。

 ……この子に大荷物を持たすのは、流石に気が引ける。

 出来るだけ荷物を少なくして分散し、一人に労力をかけないようにした。

 荷物持ち専門の人員も、欲しいところだ。






 山道の横の、少し開けた場所をキャンプ地として、焚火を起こす。

 薪はサイザルで買ってきたものを使い、火は俺の魔法でつける。

 食事は麦を買い込んできたので、それを鍋で煮て、お粥にして食べる。
 後は、冒険者ギルドの系列店で購入した、湯沸かしに水を入れ、沸騰させて茶葉を入れて飲む。
 

 麦のお粥と、温かいお茶──
 今回の旅の間の食事は、これでいくことになる。



 夜は交替で、見張りをする。

 イーステッドまでは、歩きで三日はかかる。
 俺は回復薬を使って不眠不休でいくつもりだが、見張り役に油断されても困るので、俺が眠らずにいることは伏せておく。

 山賊が出るという、情報があったのだ。
 気を引き締めていく。







 二日目までは大したトラブルもなく、順調に旅を進めたが──
 その日の夕方に、異変は起きた。
 俺たちが野営しようとした場所から、広域探知を放つと──
 一キロほど北の道の先に、複数の人の反応があった。


 魔力探知に引っかかったのは、全部で二十一人。
 そのうちの十九人のステータスから、罪科ポイント超過の警告が表示された。

 話に聞いていた、山賊の群れだろう。





「ちょっと行って、狩って来る」

「はっ? 何言ってんのよ!!」
「あ、危ないんじゃ……」


 アカネルとモミジリは、相手の人数と無法者の山賊に警戒しているようだが、相手の戦闘ステータスは、一番高い奴が290で次が180、後は50前後しかない。


 敵の中で、一番戦闘能力の高い奴は、恐らく魔法使いだ。

 魔力探知を当てた時の、魔法抵抗が他の奴とは明らかに違った。
 だが、俺の魔力探知に反応するだけの、魔法感知能力は無さそうだ。

 俺が奇襲を掛ければ、楽勝だろう。

「大丈夫だって、お前らは一応、その辺に隠れてろよ。ああ、あんまり山の奥に行くと強い魔物が出るかもだから、気を付けろよ」

「いや、あんた……やっぱり頭、おかしいわ。山賊よ! わざわざ、戦いに行くなんて……」
「そ、そうだよ。一緒に隠れて、やり過ごそうよ──」



 アカネルとモミジリだけではなく──
 俺以外の五人の意見は、隠れてやり過ごすが多い。

 二年間魔物と戦い続けた俺とは、まだ感覚が違うようだ。

 五人は安全策を主張する。
 まあ、言われてみれば、それもそうかと思う。

 例えば前世で──
 二十人規模の反社会的な人たちが、街を歩いているのを見たらどうする? 

 よし! 
 退治しよう!!
 
 などという奴がいれば──

 頭おかしいんじゃないの?
 ──と、十中八九言うだろう。



 だが、ここは異世界で、俺は今回補足した山賊を、軽く蹴散らすくらいの強さを手にしている。
 山賊は俺にとって、獲物でしかない。

 俺は大丈夫だからと言って、隠密結界を張り、山賊のいる方へと走り出した。

 倒せる獲物が近くに居るんだから、狩っておく。
 それだけだ。

 敵との距離は、まだ開いている。

 気付かれる恐れは、ないだろう。
 俺は山道を走って、敵に近づく。

 そろそろ相手から視認されるかなというところで、道を外れて木の上に上る。

 魔力を土属性に、変化させて敵を待つ。



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