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農場奴隷編

第30話 出発 C

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 俺達は農場の整理をした後、冒険者の町を目指すことになった。

 今まで溜めた装備と、農場を襲撃したゴブリンのドロップアイテムがある。

 旅人の服とマントが、人数分揃ったのはありがたい。
 新米冒険者にしては、立派な装備だとイルギットが言っていた。

 俺が集めた魔物素材なんかも持って行きたい、小さいが量が多いと嵩張る。
 余っているマントを紐で縛って、即席で巾着袋もどきを作って入れていく。

 どこかでちゃんとした、旅行グッズを買う必要があるな。


 サリシアとナーズにスラ太郎を従魔として紹介して、準備は完了した。

 最初の目的地は、この農場の北にあるサイザルという町だ。
 準備を整えた俺たちは、農場を出発する。

 最初の目的地、サイザルはここから歩いて二時間ほどで着く人口三千人くらいの町で、この辺り一帯の農場から収穫される農作物の集積地になっている。

 そこまでの道のりで出現した魔物は、全部でスライムが五匹。
 戦闘能力は50未満。

 街道には女神の加護があるので街道で、強いモンスターが現れることはない。
 俺にとって、この程度のモンスターは敵ではない。

 アカネルとイルギットが自分も戦ってみたいと言い出したので、モミジリと一緒に戦わせてみた。武器は三人ともはがねの剣だ。
 一人ずつ戦いを挑み、数回攻撃を加えて倒すことが出来た。

 スライムを倒し終えたアカネルが、俺の方を見て呟く。

「あんた凄いわね。簡単に倒して……」
「まあ、ずっと鍛えてきたからな」

 どうやら強くなって、モンスターを倒すことに興味が芽生えたようだ。


 最初の目的地、サイザルの町が見えてきた。
 イルギットが振り返り、訪ねてくる。

「ねえ、あのゴブリンの群れに、人間がいたのよね?」
「ああ、恐らくは魔物使いだろう……」

 イルギットの父親は、第一王子の派閥に属していた。
 今回の襲撃は、権力闘争の一環として行われた可能性が高い。

「そいつと……そいつの雇い主は、私が殺すわ」
「ああ、サポートは任せろ」


 そして、鑑定で得た襲撃者の名前は『トモヤン』……。

 恐らくは転生者だろう。


 春先の冷たい風が、身体を通り抜ける。
 女神歴1012年。

 転生して前世記憶を思い出してから、二年が経過して──
 俺はようやく、旅立ちの日を迎えた。

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