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農場奴隷編
第25話 キラー・ビーの巣 A
しおりを挟む夏の暑さが過ぎ去って、日中は過ごしやすくなったが夜になると肌寒い。
軽く運動して、体を温めてからモンスター討伐へと赴く。
今日は気合が入っている。
なにしろこれから挑むのは、トラウマの場所となっている南の山だ。
あれからレベルも上がったし、使える魔法も増えた。
特に攻撃魔法を習得したことで、俺は飛躍的に強くなった。
「まあ、慎重にやれば行けるだろう」
いつまでも、トラウマを抱えているわけにもいかない。
こんなところで足踏みしていては、この先冒険者としてやっていけないだろう。
所有奴隷を三人も抱えているのだ。
俺がしっかり稼げるようにならなくては──
俺は南に向かって、移動する。
農場の柵の前まで来たところで、山へ向かって広域探知を行う。
やはり、山の中にいる魔物は、強力な奴が多い。
その場から移動しない魔物は、植物系だろう。
魔力反応の無い、不自然な空間もあった。
隠密結界だ。
敵をマークできないが、大体の位置と数は分かる。
俺はさらに南西と南東の状況も把握するために、それぞれ広域探知を飛ばす──
「ん?……おおっ!」
現在地から約六百メートル南西の位置に、百を超える魔物の集団があった。
一番強い魔物は戦闘能力630、恐らくこの集団のボスだろう。
名前はクイーン・ビー。
その周囲には戦闘能力100から50くらいのキラー・ビーが百匹くらいいる。
反応の無い隠密状態の敵がさらに四十匹。
以前探知した時には、こんな群れは無かったはずだ。
魔物が巣を作って、大きくなったのか──
もう一度同じ方向へ探知を飛ばすと、魔物の位置に変化があった。
隠密状態の敵のいくつかが、こちらに向かって移動している。
偵察に来る気だろう。
厄介な隠密タイプが向こうから来てくれる。
数を減らせれば、その後が楽になる。
「やるか──」
俺は蜂の魔物の集団を討伐することに決めた。
女神の結界のある農場内に、魔物は侵入してこない。
入れないわけではないらしいが、強力なモンスターほど結界を嫌って来ない。
それを利用して数を減らそうと思う。
再び広域探知を、蜂の巣のある方向へと放ち挑発する。
敵の偵察隊は、まっすぐにこちらに向かって来ている。
おびき寄せることは、成功している。
その間に俺は、自分の魔力を土属性に変化させておく。
隠密結界を張っている敵は、魔力で追跡することは出来ない。
だいたいの位置を確認する為に、何度か広域探知を放つ。
こちらに向かってきている敵は、風属性のノーマル十匹と、隠密状態が二十匹と少し、合計三十以上になる。
──山の中の木の合間に、敵の姿が見えた。
俺は姿の見えた敵に向かって、魔法で作った岩石で攻撃していく──
ドッ、ドッ、ドッ!!
魔法を標的に当てる練習は、かなり積んでいる。
敵にヒットするイメージで高速で打ち出される岩石は、敵の身体を順番に破壊していく。キラー・ビーは飛行の補助に風の魔法を使っているようだが、俺の土魔法の攻撃はものともせずに突き破る。
隠密結界で姿を隠している敵も、魔力を使った探知で違和感のある場所を見つけて、魔力を込めた目でよく見れば、その姿を発見できる。
農場には、女神の加護がかかっている。
キラー・ビーの群れは、それを嫌ってかこちらには入って来ない。
入ろうかどうしようかと、躊躇っている感じだ。
俺の広域探知を感知して、偵察に来たキラー・ビーは三十二匹いた。
一時間くらいで、一方的に殲滅できた。
キラー・ビーの巣はここから南西に約六百メートルのところにあった。
俺は南西へ、四百メートルまで広域探知の魔力を飛ばす。
敵の別動隊や他の魔物が近くにいないことを確認し、それからキラー・ビーの、魔石と素材の回収を行った。
「今日は、この辺で帰るか──」
敵の数のわりには、あっけなく殲滅できた。
ボーナスステージのようなものだ。
この調子で、敵の巣を攻略してやろう。
その日から数日は、魔物素材の圧縮と装備の合成に時間を使った。
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