上 下
31 / 148
農場奴隷編

第23話 魔法の訓練とヒロインのピンチ B

しおりを挟む
 労働奴隷にだって性欲はある。
 それを刺激してしまうと、こういった危険もあるのか──

 俺は慌てて駆けだした。

 すでに奴らはモミジリを囲み、ケツを揉みだしている。


「おい、お前らッ!!」

 俺は強い口調で怒鳴りつける。
 奴らは一瞬ビクッとなり、こちらを向く。

「な、なんだ……ユージか」
「おい、向こうへ行ってろ。お前にはまだ早い──しっしっ……」
「だ、誰にも、言うなよ。──言ったら、ただじゃ置かないからな」


 奴らは相手が俺だと確認すると、デカい態度で俺を追い払おうとする。

 俺は農場の管理者に目を付けられない様に、普段は大人しくしているからな。
 仕事はよくさぼるけど──

 なるべく騒ぎは起こしたくない。
 だが、この事態を招いてしまったのは俺だ。

「ゴチャゴチャ言ってないで、そいつから離れろ。そいつは俺の女だ」

「……は? お前、誰に向かって言ってるのか解ってるのか?」
「調子に乗ってんじゃねーぞ。マセガキがッ!!」
「い、痛い目を見なくちゃ、判んないかな? ボクちゃん?」

 三人の男が凄んでくる。



 労働奴隷が従順なのはあくまで雇用主や仕事に対してだ。
 同じ奴隷──
 しかも年下に対しては、イキった態度で来る奴もいるのか。

 三人の男は指の骨をポキポキ鳴らすジェスチャーをしながら、俺に近づいてくる。





 俺は三人をボコボコにしてやった。
 
 身体能力強化や、闘気を使うまでもない。
 最初に殴りかかってきた男の腕をいなして、その勢いを利用して地面に転ばすと、すかさず男のみぞおちに蹴りを入れる。

 たったそれだけで、そいつは痛みで気絶した。

 張り合いがない。


 仲間が一瞬で無力化されたのを見た残りの二人は尻込みをするが、俺に喧嘩を売ったこいつらを見逃してやる気はない。

 俺は二人に自分から接近すると、片方の腹に右ストレートを打ち込んだ。
 男は俺のスピードに対応できずに、棒立ちで立っている。

 そいつは気絶せずになんとか耐えたが、痛みで腹を押さえてうずくまっている。

 最後の一人は腰を抜かして、へたり込んでいる。
 俺はそいつの顔に、手加減した軽い蹴りを入れる。

「ぶごっ……」

 男はそれで、簡単に後ろに倒れ込んだ。
 
 俺は男の首を掴んで、力を込めて息が出来ないようにする。

「おい……この女は、俺のなんだ。それといつも一緒にいる、もう一人もな──手を出せば次は殺す。残りの二人にも言っておけ……いいな?」
 
 男は喉が塞がっていて喋れない。
 コクコクと首を振って、意思表示する。

 
 俺は三人の男をシメた後で、モミジリの側まで歩いていく。
 モミジリは桶を手に持ったままポカンとしていたが、俺が近づくと──

「あ、ありがとう。助かったわ」
 

 いや、いいんだ。
 もとはと言えば、俺のせいだからな。

「そ、それにしても、強いんだね」
 モミジリは尊敬の眼差しで、俺を見つめる。

 よしてくれ。
 これじゃあマッチポンプじゃないか。
 流石に、なけなしの良心が痛む。
 
「……カッコ、良かったよ」
 モミジリは頬を赤らめて、告白するようなノリで褒めてくれた。

 マジでごめん。
 自作自演で好感度を上げる気はなかったんだ。
 でもまあ、これだけ素直に褒められると悪い気はしないが──

 俺はモミジリの肩を抱き、調理場へと送り届けた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

【ラスト・パラダイス】 一人ぼっちのダンジョン攻略 少年は命がけのゲームを、孤独に戦いぬく

猫野 にくきゅう
ファンタジー
 僕には、友達がいない。  友達を作らないのではなく、作る能力が無い。   学校の教室でも、常に孤立している。  そんな僕がある日、クラスで一番の美少女から声をかけられる。 「田中ってさ、ゲーム得意そうだよね。  手伝って欲しいゲームが、あるんだけど……」    彼女から誘われた僕は────  命がけのゲームに、挑戦することになる。

貞操逆転世界に無職20歳男で転生したので自由に生きます!

やまいし
ファンタジー
自分が書きたいことを詰めこみました。掲示板あり 目覚めると20歳無職だった主人公。 転生したのは男女の貞操観念が逆転&男女比が1:100の可笑しな世界だった。 ”好きなことをしよう”と思ったは良いものの無一文。 これではまともな生活ができない。 ――そうだ!えちえち自撮りでお金を稼ごう! こうして彼の転生生活が幕を開けた。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

玲子さんは自重しない~これもある種の異世界転生~

やみのよからす
ファンタジー
 病院で病死したはずの月島玲子二十五歳大学研究職。目を覚ますと、そこに広がるは広大な森林原野、後ろに控えるは赤いドラゴン(ニヤニヤ)、そんな自分は十歳の体に(材料が足りませんでした?!)。  時は、自分が死んでからなんと三千万年。舞台は太陽系から離れて二百二十五光年の一惑星。新しく作られた超科学なミラクルボディーに生前の記憶を再生され、地球で言うところの中世後半くらいの王国で生きていくことになりました。  べつに、言ってはいけないこと、やってはいけないことは決まっていません。ドラゴンからは、好きに生きて良いよとお墨付き。実現するのは、はたは理想の社会かデストピアか?。  月島玲子、自重はしません!。…とは思いつつ、小市民な私では、そんな世界でも暮らしていく内に周囲にいろいろ絆されていくわけで。スーパー玲子の明日はどっちだ? カクヨムにて一週間ほど先行投稿しています。 書き溜めは100話越えてます…

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス

R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。 そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。 最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。 そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。 ※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

喰らう度強くなるボクと姉属性の女神様と異世界と。〜食べた者のスキルを奪うボクが異世界で自由気ままに冒険する!!〜

田所浩一郎
ファンタジー
中学でいじめられていた少年冥矢は女神のミスによりできた空間の歪みに巻き込まれ命を落としてしまう。 謝罪代わりに与えられたスキル、《喰らう者》は食べた存在のスキルを使い更にレベルアップすることのできるチートスキルだった! 異世界に転生させてもらうはずだったがなんと女神様もついてくる事態に!?  地球にはない自然や生き物に魔物。それにまだ見ぬ珍味達。 冥矢は心を踊らせ好奇心を満たす冒険へと出るのだった。これからずっと側に居ることを約束した女神様と共に……

処理中です...