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プロローグ

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「柊さんって....」 

 始まりは軽い陰口からだった。

 私は、たまたま聞いてしまった陰口を気にして次の日から明るく振る舞った....が、これが大きな過ちだった。
 
 その日を境に友達と言ってくれた子からはいいように使われ、仕返しをしない私にただのじゃれ合いと言い暴力や暴言を振るわれる毎日。
 この事を母に相談しようにも家にいない。そもそも母は私に無関心なので言ったところで意味がない。

 でも、そんな私でも楽しみは一つだけある。それは滝を見る事。落ちていく水を見ている時間が唯一の癒し。

 いつものように最近のことを思い出しながら落ちていく水を見つめていると、なんだか全てがどうでも良くなってきた。

「もう生きるの疲れた....。そうだここから飛び降りれば楽になるかな」

 どうせ悲しむ人など誰一人としていない、それどころかお荷物が消えて皆んな清正するんじゃない?

 私は生きることがどうでも良くなり滝へと飛び降りた。そう、飛び降りたはずだった。

 飛び降りてすぐ突然頭の中で声が響いた。

「貴方これから死ぬのでしたら、その体私にくださいません?」

 気がつけば真っ白な空間に豪華なドレスを着た女性が私の目の前に立っていた。

「あれ?私飛び降りたはずじゃ?ここどこ?それに貴方は誰?」
 
「私はアリシア。もう一度言います、私が貴方の代わりに生きますのでその体くださいません?」

「体をくれ?ちょっと待って言ってる意味がわからないんだけど?私死んだのよね?」

「たしかに、いきなり体をくれと言われて、はいどうぞと言う方はいませんわね。あ、まだ死んでいませんので」

「なんか一人で納得してるし....」

「そうですわね.....。それなら私の話を少しいたしましょう」

「ひょっとして死神か何か?私を迎えに来た的な?」

「貴方不敬ですわよ。私は人間です!」

 この時代に不敬とか言う人いるんだ。

「ごめんなさい、続きをどうぞ」

「私は国を崩壊させた犯人として、処刑されてしまいましたの」

 処刑?今処刑って言った?それに国って何?

「処刑される間際、私は神に強く願ったのです。もっと長く生きたい、もっと誰かを愛し愛されたかったと」

 だめだもう話についていけない。これはきっと死ぬ前に見る幻覚なんだ。とりあえず話を合わせておこう。

「それで気がつけば私の中にいたってことね」

「あら、案外物分かりがいいのですわね。貴方は人生を辞めたい、反対に私はもう一度人生を歩みたい。これは利害の一致じゃありません?」

「うぅ....そうだけど、他人が私の体を使うって嫌だなぁ」

「なんなんですの貴方、死にたいんでしょ?死んだら意識は無くなるんだから別にいいじゃありませんか。それともなんですの?今になって生きたいと?」

「それは.....」

 悩んでいる私を見かねてアリシアがある提案をして来た。

「あーもうわかりました。ではこうしましょう!二人で一人の体と言うのはどうでしょう?」

「二人で一人の体?」

「そうです。見たところこの世界は私がいた世界とは違うみたいですし、普段の生活は私が、分からないことは貴方が私に教えてくださいません?それなら他人に貴方の体を使われてないでしょ?」

「つまりメインはアリシアさんで私は貴方が生きやすいようにサポートしろってこ?」

「まぁ、そんなところですわ」

「それもどうかと思うけど、私自身の体に私がいるわけだし。それに、表に出てるのは私じゃないし」

「決まりですわね!貴方名前は?」

「私は桜花。柊桜花」

「これからよろしくお願いしますわ。って私もアリシアではなく桜花になりますのね」

 アリシアとのやり取りの後、私は滝から飛び降りる直前に戻っていた。


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