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誰か助けてください
しおりを挟む※初めは胸くそです
私の両親は毒親だ
本人達曰く、もともと子どもが大嫌いなんだそうだ
でも、この辺りの名士の家系だったため、不本意だが跡取り息子を作ることにしたらしい
だから男の子を1人産めば、後は子どもなんか要らないと思っていたんだとさ
ところがどっこい、生まれてきたのは女の子の私だった
「女の子なんか要らなかった」
だから、仕方なく第2子を作る事にした
そして2年後に待望の男の子が生まれた
結果、要らない子は養女に出すつもりだったようだ
既に、養女に出す先の家にも打診してあった
だけど第2子が生まれるまでの期間限定で育ててみた女の子は、将来モノになりそうだった
だから養女には出さず、手元において育てる事にしたのだと、父親は口元を歪めながら吐き捨てるように言った
「だから、お前は親のために生きて身を賭して尽くす事。要らない子のお前を養女に出さないでやったのだから、それくらい当たり前だろう?」
小学1年生になったその時から、毎日、それをお経のように言われ続けてきた
母は、毎日私を叩いた
「アンタの顔はね、あの憎たらしい姑にソックリなんだよ!本当に見ているだけで腹がたつ!」
お陰で毎日痣だらけだった
中学生の頃、私は溶連菌感染症に罹り、夏休み中40度の熱が下がらなかったことがあった
それでも、寝込むことは許されず、毎日、掃除洗濯買い物などの家事を、全て一人でやっていた
夕方になって、母が床に落ちている髪の毛を1本見つけて、手抜き掃除をしていると叩かれた
「40度の熱だって?フン!嘘ばっかりつくんじゃないわよ!元気じゃない!嘘はもうちょっと上手つかなくちゃ」
熱が高くて、フラフラになりながらも、必死で家事をやっているのに、誰も助けてくれる人はいない絶望に押しつぶされそうだった
弟は、待望の男の子だから大切にされ、可愛がられていた
欲しいものは何でも買ってもらえたし、自由に好きな事を何でもさせてもらえた
私は、将来、良い大学に入って有名企業に就職し、親を養うため、また、良家の子女として平凡な弟の代わりに表に立って、我が家の体面を保つため、ひたすら自分磨きをさせられた
ピアノ、油絵、習字、英会話、算盤、ダンスなど、ありとあらゆる習い事をさせられた
遊ぶ暇なんかなかった
当然友達もいなかった
親から私が友達を作る事を禁止されたためだ
部活も出来なかった
親が個人競技以外のスポーツを禁止したためだ
部活くらい自分の意思で決めたかった私は、とうとう部活に1度も参加する事なく卒業した
学年で常に一番の成績と校内女子で一番の俊足に加え、ピアノも油絵も嗜む私の事を、両親はどこに行っても自慢していたらしい
自宅では虐待していたくせに
私が高校1年生の時に、父親がお見合いの話を持って帰ってきた
相手は資産家の息子さんで、今年国立大に受かったのだとか
「あそこは広大な土地を持っている資産家だ。お前はそこに嫁に行き、あそこの土地の半分…いや、3分の1でいい。ウチに譲渡するように、旨く言いくるめてこい。お前には元手がかかってるんだ。コレくらいのことはしてもらわないと、要らない子のお前に先行投資してきた意味がなくなる」
お見合いはウチの父親から持ちかけたらしいが、後日、向こうからお断りの連絡が入って、話だけで流れたのは幸いだった
ーー 大学に行ったら転勤族の彼を見つけて卒業と同時に結婚して、家を出るんだ ーー
それだけが私の生きがいだった
大学時代の彼は同級生で、大学を卒業して1年くらいしたら結婚しようと約束をしていた
大好きだった
彼は卒業後、直ぐに実家に挨拶に来てくれた
直ぐに婚約した
来たる1年後の結婚式のために、私は就職して必死に結婚資金を貯めてたんだよね
ただ、残念ながら卒業後も私は家から通勤させられてる
もちろん就職先は父親の友人が役員をしているところで、一応エントリーだけはしておいてくれと言われ、半ば強制的に会社訪問をさせられた。
わかりきった話、私が逃げないようにするためだよ
俺の顔に泥を塗るような真似はするなと、面接当日は、逃げないように親の監視付きだった
若い女性に一人暮らしをさせる親の顔が見てみたいだってさ
ケッ!心にもない事を言いやがって!
ところが結婚式の1ヶ月前になって、突然彼が結婚をやめるって言ってきたんだよね
「君のお父さんから連絡があって、結婚したら俺の給料から毎月最低10万円ずつ、君の実家の口座に振り込むように、またボーナスは全額振り込むように言われた。それがのめなければ結婚させられないってさ」
「えっ?」
「君の事は好きだけど、君の家族まで背負うのはちょっとキツイかな?それに、折角入ったこの会社を辞めてまで、君と逃げる選択肢は僕にはないかな?だから、悪いんだけど結婚の話はなかったことにしてくれる?」
結婚して家を出る
私の計画が頓挫した瞬間だった
「親にお金を入れるのは当たり前の事だろうが!」
父親はこともなげに言い放った
なんとなく、こうなる事はわかっていたような気がする
なんで、こんな家に生まれてきたんだろう
その後も私は貯金だけは続けていた
私の結婚がダメになって1年後、弟が学生結婚をして家を出て行った
その時の費用は全て私の貯金から出ている
母が私が仕事に行っている間に、私の部屋から通帳と印鑑を探し出して、必死に貯めていた私の定期貯金を勝手に解約して、それを弟の結婚資金として使ったらしい
後日、旅行に行こうとして、自分で定期貯金を解約しに行ってわかった
ーー これ、全額解約されてますよ ーー
それを窓口で聞いて知った私の顔は、相当な間抜け面だったのだろう
銀行の窓口のお姉さんが
「あの、大丈夫ですか?」
と、聞いてきたくらいだ
これ、りっぱな犯罪だよね
家族でも、やっちゃいけないやつだよ、これ
私は帰宅後、直ぐに両親に問い詰めた
私の定期貯金を勝手に解約したのは、あなた達ですよねと
すると、両親は平然として言い放った
「あら、あなたの物なんて、この世には何もないのよ。全て私達のもの。今まで要らない子のあなたを、ここまで育ててきてあげたんだから、生涯をかけて恩返しするのは当たり前でしょ?あなたの貯金もね、全て私達のものなのよ。そんな事もわからないの?本当に非常識なバカね」
で、その後両親は弟の結婚式のご祝儀を全額使って、海外旅行に出かけて行った
ああ…もう、たくさんだ…
ーー ここにいたんじゃダメだ。この世界に居る限り、両親からは逃げきれる気がしない。ここではないどこかに行かなきゃ。誰か私をどこでもいいから、こことは違う世界に連れて行ってくれないかな。贅沢は言わないから、ここじゃないどこか違う世界なら、どこでもいいんだけど ーー
ーー キミの願いを叶えてあげようか? それには、ちょっとボクのお願いをきいてくれなきゃ困るんだけど、どうする? ーー
突然、頭の中に男性の声が響いた
ーー え?あなた誰?私をどこかに連れて行ってくれるの? ーー
ーー うん、ちょっと条件があるんだけどね ーー
ーー 条件って何? ーー
ーー あの子を愛してくれる事。簡単でしょ? ーー
ーー それだけでいいの?勇者になって世界を救うとかない? ーー
ーー それはないよ。魔王とかいないし ーー
ーー それなら、いいかな…よろしくお願いします ーー
ーー ほんと?よかった。しっかり頼んだよ。じゃぁ早速… ーー
ーー あ、待って!何かあった時のために、あなたと連絡がとれるようにしてください ーー
ーー あ、そうだね。ボクの名はハイネだよ。連絡したい時は、名前を呼んでね。それだけで大丈夫だから ーー
ーー うん、わかった ーー
言うや否や私は白い光に包まれて、気を失った
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