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番外編〜おばさんズは止まらない

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 俺たちはお見合いリベンジ後、直ぐに交際を始めた。

 俺はあれから直ぐに七海さんのご両親に、結婚を前提にした交際のお許しを頂きに行ったぞ!心臓が口から出そうになるくらい緊張しまくったけど、これは武士の情けと思って勘弁してほしい。

 で、問題は彼女の母上だった!
 そう!母上は最強だったのだ!



 俺が勤める小学校の全校生徒は、たったの4人だ。 
だから運動会は地域の住民を巻き込んで、お祭りのような賑わいになる。娯楽の少ない田舎の住民皆んなが楽しみにしているのだ。
 また小学校が湖の辺りにあるため、夏場でも涼しく過ごしやすい。だから今でも運動会は9月の下旬に行われている。

 つまり、俺たちが交際を始めた直後に運動会の練習に突入したのだ。

 この情報は、七海さんを通して大西家に伝えられた。

 そう!彼女の母上にも知られる事となったのだ。

 多分デートから帰宅して、何気なく家族に話したんだろう。

 まさか、母上があんな行動を起こすとは…。



 運動会当日、競技が始まった頃。
うちの小学校の校庭に、見慣れないおばさんの一団が現れたんだ!

 普通の小学校なら、部外者が見学に来ても、全く気づかれないままになってしまっていただろう。

 でもここは、住民一人一人の顔や名前、食べ物の嗜好まで全て共有しているような地域なのだ。

 つまり、部外者が入ってくれば、直ぐにわかってしまうんだ。


 そんな特殊な地域の運動会に彼女の母上は(多分バレないと思って)"七海ちゃんの旦那さんになる人を見に行こうツアー"(ツアー客は母上を入れて総勢5名)を敢行してしまったのだ。

 必然的に    ーあれは誰だ!?ー    状態になり、母上達ツアー客は俺の情報を得るために、地域住民は母上らの情報を得るためにお互いが情報交換をし始めてしまった。

 おかげで俺が夏休み中に見合いした事も、結婚したい相手がいる事も、七海さんが市役所に勤めている事も、全て地域住民の知るところになってしまって、この日の運動会はかつてない盛り上がりを見せて終了したのだ。

 トホホ…


 問題は運動会終了後だった。

 俺は次の日が代休になる事もあって、明け方まで急遽結成された"祝!誠先生の結婚を応援する会"の面々に散々飲まされ、2人の馴れ初めから始まり、根掘り葉掘り聞かれたのだった。

「誠先生よぉ。結婚するって話じゃねえか?」

「初めて聞いたぞぉ。黙ってるなんて水臭いやっちゃ」

「明日、学校休みじゃろ?今日はじっくり聞かせてもらおうかのぅ」

 俺はなけなしのHPをごっそり持っていかれてしまった。
 七海さん、ヘルプミー…。




 その頃、大西家では…

「なっちゃん!誠さん、本当に良い人で良かったわね~。地域の皆さんにも私のお友達にも大好評だったわよ」

「はぁ?ちょっとあんた!何したのよ⁈」

「あら!誠さんの学校の運動会をちょっとだけお友達と見に行って来ただけよ」

 ドヤ顔をしている母親の顔を見て、コイツが1番の危険人物だと再認識した七海であった。

 誠さん、ごめんね…。


 その後、2人の結婚話はツアー客だったおばさんズにより、尾ひれを付けて全市内に拡散していったのだった。
 おばさんズ、恐るべし!


 いつの時代も、おばさんは最強です。






☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


 地域の方々とおばさんズの会話を書いていたら、イラッときたので、会話部分を削除してしまいました。

 こんなおばさんにはなりたくない。
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