上 下
47 / 128
第2幕 霊界 ネオ大江戸辰区縄張り激闘編

菊の助一族VSカムラ

しおりを挟む

「・・・秦右衛門・・・なぜ、ここに?」
 カムラはいるはずのない秦右衛門の姿を見て、汗を一筋頬に流す。



「ワシらをそう簡単に欺けると思うとは舐められたもんじゃっ。」
 秦右衛門の隣で、少年菊の助がニヤニヤしながら腕組みをしている。

「・・・菊の助・・・。」
 秦右衛門に続いて、菊の助の出現にカムラは焦りを隠せない。

「・・・ワシらが生きてきた時代はお主ぐらいの策は誰でも考えるっ・・・戦国の世をなめるなよっ、ワッパがっ!」
 菊の助が大いに胸を張って、カムラに一喝する。

「・・・チッ・・・。」
 カムラは菊の助の一喝に舌打ちするしかなかった。

「殿っ、どういうことですかっ?」
 状況がいまひとつ掴めない善朗が菊の助に尋ねる。

「・・・こやつらは佐乃道場を潰そうとしておるのじゃっ・・・数日前、辰区で揉め事の中で虎丞組の人間が佐乃道場の門下生に刺されて消えた・・・佐乃側の完全な正当防衛じゃが、メンツだなんだという逆恨みの弔い合戦じゃろ?ワシらが騒いだ所で、ここまでくれば、こやつらはもう止まらん・・・なら、こやつらの策に乗って、動き出すのを待ったまでっ。」
 ニヤリと笑って、菊の助がカムラを見る。

「・・・・・・。」
 カムラは自分達がはめたと思っていた相手の手の平で踊っていた事に苦虫を潰す。

「・・・予想以上に準備されていたね・・・カムラ君もなかなか用意周到だ・・・ちゃんと善朗君のことも抑えていたんだろ?」
 秦右衛門が着物の中で腕を組みをしながら、右手を着物から出してあごを触ってニヤける。

「・・・・・・。」
 カムラの雰囲気を見て、虎丞組の組員達が臨戦態勢に入る。



 菊の助は臨戦態勢に入ったそんな組員達を一睨みする。
「ワッパ共がっ。」
「ッ?!」
 すると、驚く事に菊の助に一喝された組員達は突然金縛りにあって、身動き取れなくなる。


 金縛りあって、動けない組員達をぐるりと見る菊の助。
「・・・これがおぬし達とワシとの力の差じゃ・・・小突いただけで消し飛びそうな奴は端から舞台にもあがれんっ。」
 菊の助の霊力の圧だけで組員達は戦闘不能になった。

 これが幽霊の戦い方の一つ。(実力者が一睨みするだけで、敵が気を失うという覇っ・・・あっ)

「善朗君、ここは僕達に任せて、君と大前は佐乃道場に行きなさいっ。」
 腕組みをして、組員達を掻き分けて、カムラの目の前に陣取る秦右衛門。

「・・・・・・。」
 カムラは金縛りにあったわけではないが、秦右衛門の出方を伺って、下手に動けない。

「はっ、はいっ!」
 善朗は門のところにほうきを置いて、秦右衛門や菊の助に一礼して、佐乃道場へと向かう。

「喧嘩じゃっ、喧嘩じゃッ!」
 大前は皿にあったおはぎを一瞬で平らげて、皿をちゃんと置いて、善朗に万歳しながらついていく。

「ちょっ・・・ちょっと待ってくださいっ!」
 乃華が止めなければいけない立場で困惑する。

「乃華ちゃん・・・殿が言ったように、ここまで来たら、もう行く所まで行かないとお互い止まれないんだよ・・・心配なら善朗の事、頼むね・・・。」
 秦右衛門は腕組みをして、ウィンクしながら乃華にそう告げる。

「・・・・・・。」
 乃華は秦右衛門の言葉を渋々ながらも飲み込み、善朗の後を追った。

「・・・あの少年が行った所で、どうかなるとでも?・・・行かせるべきじゃないんじゃないか?」
 カムラが精一杯の言葉で秦右衛門を責める。

「確かに、君の言う事ももっともだけど・・・善朗君を舐めすぎだな・・・。」
 ニヤリとした顔をしながらも、目の奥をギラつかせて、秦右衛門が腕組みをしたまま臨戦態勢に入る。

「・・・少々、動ける者も残っておるな・・・どうじゃ、消える覚悟がある奴は居るかっ?」
 青年菊の助が無手の構えで、虎丞組の組員を恫喝する。

「・・・・・・。」
 なんとか動ける組員達はお互いの顔を見合わせてみるが、別の意味で動けない。

「殿ッ!どうかなされましたかっ?」
 そうこうしていると、流石に武家屋敷の中で宴会をしていた面々が酒ビンを持ったり、バットを持ってきたりとワラワラと集まってきた。


「・・・んっ?吾朗っ、金太はどうしたっ?」
 菊の助はワラワラと集まる面々の中に金太の目立つ姿がないことが気になった。

「・・・・・・出て行ったまま帰ってきておりませんが?」
「あのバカモンがアアアアアアアアアアアアアアッ!」
 吾朗が素直に答えると、菊の助が地団駄を踏んで怒鳴る。

「・・・あらあら・・・金太の奴、あれほど注意しとけよって言ったのに・・・。」
 秦右衛門は金太の失態に流石に頭を抱える。


「吾朗ッ!今すぐ、探して、ケツひっぱたいて来いっ!」
「御意ッ!」
 菊の助がカムラにかっこつけた手前、金太がまんまと罠にはまっている事が恥ずかしくなって、吾朗にすぐさまつれてくるように怒鳴り散らす。
 吾朗はとんだとばっちりだが、殿の逆鱗に触れないように即座に街へと走っていった。


「・・・・・・。」
 緊張感の削がれる場面にカムラが唖然とする。

「・・・申し訳ないね・・・君もなかなかの策士だったよ・・・。」
 苦笑いでカムラを改めざるを得なくなった秦右衛門だった。



しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話

妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』 『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』 『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』  大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。

[恥辱]りみの強制おむつ生活

rei
大衆娯楽
中学三年生になる主人公倉持りみが集会中にお漏らしをしてしまい、おむつを当てられる。 保健室の先生におむつを当ててもらうようにお願い、クラスメイトの前でおむつ着用宣言、お漏らしで小学一年生へ落第など恥辱にあふれた作品です。

名前を書くとお漏らしさせることが出来るノートを拾ったのでイジメてくる女子に復讐します。ついでにアイドルとかも漏らさせてやりたい放題します

カルラ アンジェリ
ファンタジー
平凡な高校生暁 大地は陰キャな性格も手伝って女子からイジメられていた。 そんな毎日に鬱憤が溜まっていたが相手が女子では暴力でやり返すことも出来ず苦しんでいた大地はある日一冊のノートを拾う。 それはお漏らしノートという物でこれに名前を書くと対象を自在にお漏らしさせることが出来るというのだ。 これを使い主人公はいじめっ子女子たちに復讐を開始する。 更にそれがきっかけで元からあったお漏らしフェチの素養は高まりアイドルも漏らさせていきやりたい放題することに。 ネット上ではこの怪事件が何らかの超常現象の力と話題になりそれを失禁王から略してシンと呼び一部から奉られることになる。 しかしその変態行為を許さない美少女名探偵が現れシンの正体を暴くことを誓い…… これはそんな一人の変態男と美少女名探偵の頭脳戦とお漏らしを楽しむ物語。

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

処理中です...