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46.学園卒業
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エドワードと俺は、王立学園高等部の三年生に進級すると同時に婚約を発表し、多くの国民を驚かせた。
王族や高位貴族の結婚は男女間で行われるべきという慣習を、王太子と筆頭公爵家の令息が同時に破ることになるわけだからね。
頭の固い老齢の貴族たちは口を揃えて反対してたらしいけど、国王陛下から許可が下りてる以上、彼らに口を出す権利などない。
それに、俺がエドワードを庇って死にかけた話は世に稀に見る美談として国中に知れ渡っている。大半の国民は俺たちの婚約を心から歓迎し、祝福してくれた。
学園で過ごす最後の一年は、とても充実したものだった。
俺は夏頃まで怪我が完治せず、残念ながら勇剣祭には出場できなかったので、エドワードと一緒に観戦を楽しんだ。
ちなみに、優勝者はカールだった。非常に優秀な剣の使い手である彼は、学園を卒業した後、騎士団に入団することが内定している。
夏休みはエドワードとバカンスに出かけ、人目を気にすることなく、思う存分いちゃいちゃした。
唇がぽってり腫れるくらいたくさんキスしたし、離れてる時間の方が短いんじゃないかってくらいずっとくっついていた。えっちな行為は結婚後の初夜までしないでおこうという約束なので、もちろん気合いで我慢したよ。
キスだけでとろとろに蕩けてたエドワード、本当に可愛くて最高だったな。あの夜のことを思い出すだけで、今でもちょっと興奮してしまう。
俺とイザベラの十八歳の誕生日パーティーには、エドワードとセバスチャン殿下がそれぞれのパートナーとして参加してくれた。
セバスチャン殿下は、学園を卒業してから隣国に戻っている。そんな彼が婚約者であるイザベラのために遠路はるばる来てくれたので、イザベラはとても嬉しそうにしていた。
冬頃に開かれたエドワードの十八歳の誕生日パーティーにも、婚約者の俺たちはパートナーとして出席し、ホールの中央でダンスを踊った。
ぴったり体をくっつけて、ひそひそと小さな声で内緒話をしながら微笑みを交わしていると、一年前にバルコニーで踊った夜を思い出す。
あれから一年しか経っていないというのが信じられないほど、俺たちを取り巻く環境は大きく変化した。
それでも俺のエドワードを愛する気持ちは変わらず、彼の俺を愛してくれる気持ちも変わらない。その事実が何よりも嬉しくて、自然と唇が綻んだのを覚えている。
卒業式の後、イザベラはセバスチャン殿下との婚儀に向け、ひと足先に隣国に渡った。
『セカ愛』ではヒロインがどのルートを選んでも悪役令嬢として断罪されていたイザベラが、現実世界では隣国の王子様と結ばれて幸せになるって思うと、感慨深いものがあるよね。
これからめったに会えなくなっちゃうのは寂しいけど、彼女が幸せに生きててくれるなら良い。
イザベラは家族と抱擁を交わし、馬車に乗る直前に、もう一度俺に抱きついた。耳元で「どうか幸せに」と囁くと、涙に濡れた声で「ありがとう。いつまでも大好きよ、お兄様」と返ってきたものだから、俺は堪えきれずに泣いてしまった。
そうして別れを惜しんだ後、イザベラは輿入れのために用意された馬車に乗り、エバンス公爵邸を去っていった。
娘の前では涙を見せず気丈に振舞っていた母が、両手で目元を覆って泣き始め、父にそっと抱き寄せられる。
イザベラを乗せた馬車が小さくなってやがて見えなくなるまで、俺たちは彼女を見送っていた。
エドワードと俺も、秋頃に予定されている婚儀に向けていろいろと準備を進めていた。
この国には王位継承順位の高い王族が同性と結婚した前例がなく、婚礼衣装に関しては、デザインから生地まで全部俺たちの好きなようにしていいことになった。
今のところ、ふたりとも自ら進んでレースとかフリルがたくさんついた中性的で可愛らしい衣装を着たいとは思わなかったので、揃いのデザインを取り入れた花婿衣装にしようかという話になっている。
さっそく王室御用達の仕立て屋を王宮に呼んで、採寸してもらってから衣装のイメージとか要望を伝えた。
それを踏まえて仕立て屋が考えてくれたいくつかのデザイン案の中から、俺たちはあれやこれやと相談しながら、それぞれが一番気に入ったものを選んだ。
エドワードは恋人の贔屓目を抜きにしても最高に綺麗でカッコいいから何を着ても似合いそうなんだよね。
どう思う?って聞かれて「これはちょっと裾が長すぎて歩くとき大変かもしれないね」とか「この衣装はシルエットが綺麗に見えて素敵だと思う」とか、俺も意見を言ったりしたんだけど。
最終的に「きっとあなたは何を着ても似合うから全部着てほしいと思った」って本音が零れて、照れたように眉を下げて微笑んだエドワードに「もう……」と甘く叱られてしまった。
そういうエドワードも、俺用の衣装デザイン案を見ながら「どれも君に似合いそうで迷ってしまうな」と唸っていたからお互いさまだ。
王族や高位貴族の結婚は男女間で行われるべきという慣習を、王太子と筆頭公爵家の令息が同時に破ることになるわけだからね。
頭の固い老齢の貴族たちは口を揃えて反対してたらしいけど、国王陛下から許可が下りてる以上、彼らに口を出す権利などない。
それに、俺がエドワードを庇って死にかけた話は世に稀に見る美談として国中に知れ渡っている。大半の国民は俺たちの婚約を心から歓迎し、祝福してくれた。
学園で過ごす最後の一年は、とても充実したものだった。
俺は夏頃まで怪我が完治せず、残念ながら勇剣祭には出場できなかったので、エドワードと一緒に観戦を楽しんだ。
ちなみに、優勝者はカールだった。非常に優秀な剣の使い手である彼は、学園を卒業した後、騎士団に入団することが内定している。
夏休みはエドワードとバカンスに出かけ、人目を気にすることなく、思う存分いちゃいちゃした。
唇がぽってり腫れるくらいたくさんキスしたし、離れてる時間の方が短いんじゃないかってくらいずっとくっついていた。えっちな行為は結婚後の初夜までしないでおこうという約束なので、もちろん気合いで我慢したよ。
キスだけでとろとろに蕩けてたエドワード、本当に可愛くて最高だったな。あの夜のことを思い出すだけで、今でもちょっと興奮してしまう。
俺とイザベラの十八歳の誕生日パーティーには、エドワードとセバスチャン殿下がそれぞれのパートナーとして参加してくれた。
セバスチャン殿下は、学園を卒業してから隣国に戻っている。そんな彼が婚約者であるイザベラのために遠路はるばる来てくれたので、イザベラはとても嬉しそうにしていた。
冬頃に開かれたエドワードの十八歳の誕生日パーティーにも、婚約者の俺たちはパートナーとして出席し、ホールの中央でダンスを踊った。
ぴったり体をくっつけて、ひそひそと小さな声で内緒話をしながら微笑みを交わしていると、一年前にバルコニーで踊った夜を思い出す。
あれから一年しか経っていないというのが信じられないほど、俺たちを取り巻く環境は大きく変化した。
それでも俺のエドワードを愛する気持ちは変わらず、彼の俺を愛してくれる気持ちも変わらない。その事実が何よりも嬉しくて、自然と唇が綻んだのを覚えている。
卒業式の後、イザベラはセバスチャン殿下との婚儀に向け、ひと足先に隣国に渡った。
『セカ愛』ではヒロインがどのルートを選んでも悪役令嬢として断罪されていたイザベラが、現実世界では隣国の王子様と結ばれて幸せになるって思うと、感慨深いものがあるよね。
これからめったに会えなくなっちゃうのは寂しいけど、彼女が幸せに生きててくれるなら良い。
イザベラは家族と抱擁を交わし、馬車に乗る直前に、もう一度俺に抱きついた。耳元で「どうか幸せに」と囁くと、涙に濡れた声で「ありがとう。いつまでも大好きよ、お兄様」と返ってきたものだから、俺は堪えきれずに泣いてしまった。
そうして別れを惜しんだ後、イザベラは輿入れのために用意された馬車に乗り、エバンス公爵邸を去っていった。
娘の前では涙を見せず気丈に振舞っていた母が、両手で目元を覆って泣き始め、父にそっと抱き寄せられる。
イザベラを乗せた馬車が小さくなってやがて見えなくなるまで、俺たちは彼女を見送っていた。
エドワードと俺も、秋頃に予定されている婚儀に向けていろいろと準備を進めていた。
この国には王位継承順位の高い王族が同性と結婚した前例がなく、婚礼衣装に関しては、デザインから生地まで全部俺たちの好きなようにしていいことになった。
今のところ、ふたりとも自ら進んでレースとかフリルがたくさんついた中性的で可愛らしい衣装を着たいとは思わなかったので、揃いのデザインを取り入れた花婿衣装にしようかという話になっている。
さっそく王室御用達の仕立て屋を王宮に呼んで、採寸してもらってから衣装のイメージとか要望を伝えた。
それを踏まえて仕立て屋が考えてくれたいくつかのデザイン案の中から、俺たちはあれやこれやと相談しながら、それぞれが一番気に入ったものを選んだ。
エドワードは恋人の贔屓目を抜きにしても最高に綺麗でカッコいいから何を着ても似合いそうなんだよね。
どう思う?って聞かれて「これはちょっと裾が長すぎて歩くとき大変かもしれないね」とか「この衣装はシルエットが綺麗に見えて素敵だと思う」とか、俺も意見を言ったりしたんだけど。
最終的に「きっとあなたは何を着ても似合うから全部着てほしいと思った」って本音が零れて、照れたように眉を下げて微笑んだエドワードに「もう……」と甘く叱られてしまった。
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