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43.謁見

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槍に貫かれた傷も塞がり、王宮の中をちょっと散歩できるくらいには体力が回復した頃、国王陛下と王妃様から呼び出しがあった。
大切な話があるとのことで、エドワードと一緒に謁見の間に来るように言われている。

体の調子も悪くなかったし、意を決して謁見の間に向かうと、怪我人である俺のためにふかふかの椅子が用意されていて驚いた。
跪こうとしたら「まだ本調子ではないのだから無理をするな」とのお言葉を賜り、胸に手を当てて礼をするに留める。
促されるままに椅子に腰掛けると、エドワードがそっと寄り添うように俺の隣に立った。

「よく来たな、ウィリアム。改めて、此度は重罪人であるセシリア・マーガレットの攻撃からエドワードを庇ってくれたこと、まずは感謝したい」
「私もエドワードの母として、そなたには深く感謝しています」
「もったいないお言葉でございます、陛下」

てっきりエドワードと別れてくれって頼まれるのかなと思ってたんだけど、なんかそういう雰囲気じゃない。
両陛下は全く悪意を感じさせない和やかな表情をしていて、その後ろに控えている宰相も穏やかな眼差しで成り行きを見守っている。

「さっそく本題に入るが、そなたはエドワードを伴侶として……将来的には王配として支えていく覚悟ができているか?」
「はい。私は生涯をかけてエドワード殿下だけを愛し、支え、守り抜く覚悟がございます」
「うむ、そうか。では、エドワードはどうだ?同性のウィリアムを伴侶に選べば、長らく守られてきた王室の伝統が破られたと非難する者も出てくるだろう。そのような者たちと向き合っていく覚悟はあるか?」
「もちろんあります。私は、愛に性別はないと存じます。もし同性を伴侶に選んだという理由で非難されたとしても、私たちが国民のために心血を注いで善政を敷けば、おのずと支持されるようになるでしょう。それに、結局のところ何をしても難癖をつけようとする者は一定数いるので、言いたい者には言わせておけば良いのです」

さらっとした口調でめちゃくちゃカッコいいこと言ったな。すでにベタ惚れしてるのに、また惚れ直した。俺の恋人がカッコよすぎる。好きだ。

「うむ。そなたたちの覚悟はよくわかった」

陛下は満足そうに頷いて、慈愛に満ちた目でエドワードと俺を見つめた。

「ウィリアム・エバンス公爵令息。自らの命を顧みることなく、我が息子にして王太子であるエドワードを守った褒美として、民たちから熱望する声があることも踏まえ、そなたとエドワードの婚姻を許可する」
「っ……!感謝致します、陛下!」

俺はもう座ってなんかいられなくて、思わず立ち上がってしまった。
エドワードが腕を組んで体を支えてくれたので、傷に障らないよう、一緒にゆっくりと跪く。

「エドワード殿下は私にとって、この世のどんな宝も及ばぬ至宝のような御方でございます。褒美として殿下との婚姻のお許しを賜りましたこと、陛下に心より感謝申し上げます」
「父上。ウィリアムとの婚姻を認めていただけること、私からも深く感謝申し上げます」

俺たちが喜色の滲む声で謝意を伝えると、陛下と王妃様は顔を見合わせて微笑んだ。
その後、陛下から退出の許可をいただいたので、俺はエドワードに付き添われて部屋に戻ることにした。

人払いをしてから部屋に入り、彼を優しく腕の中に抱き寄せる。

「あぁ、エディ、俺の愛しいエドワード。あなたとの結婚を許してもらえるなんて夢みたいだ……嬉しすぎて、まだちょっとふわふわしてる……」
「ふふ。私も夢見心地だよ。今回の件で私たちの交際は認めていただけても、婚姻の許可となると説得に時間がかかるだろうと思っていたから……すごく嬉しい」

俺の腕の中で、エドワードが無邪気な微笑みを浮かべている。切れ長の瞳は柔らかく蕩け、頬には赤みがさしていた。めちゃくちゃ可愛い。

「ん……♡」

俺たちは優しい表情で見つめ合い、どちらからともなく唇を重ねた。
とろ火で砂糖を煮込んだみたいに甘くゆるやかなキスをしてから、こつん、と額を合わせる。たまらなく幸せな気持ちで胸がいっぱいだ。
ありったけの愛情を込めてぎゅっとエドワードを抱きしめると、俺は彼にだけ聞こえる声で、耳元にそっと愛を囁いた。
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