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21.相思相愛
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「……どうしたの?リアム」
綺麗な指先が伸びてきて、すりすりと気遣うように俺の頬を撫でる。エドワードの純粋な瞳に見上げられ、俺は全部正直に白状することにした。
「あなたの愛らしさに悶えてる。どうしてこんなに可愛いんだろう……好きだよ、エディ」
頬を撫で続ける指先をつかまえて、ちゅっと軽く口付けた。エドワードはとろりと瞳を蕩けさせ、内緒話をするような声で「私もリアムが好き」と応えてくれる。
何回言えば気が済むんだろうってくらい言ってるけど、何回言っても足りない。だって俺は十年も片思いしてたんだ。まさかこんなふうに受け入れてもらえるなんて思ってなかったから、嬉しくて何度でも伝えたくなる。
あー、こんなにカッコよくて綺麗で頑張り屋で優しい王子様が俺の恋人って、本当に夢みたいだ。
前世の記憶をしっかり思い出したのはエドワードと初めて会ったときだったけど、そのときは『セカ愛』の攻略対象の中でも大人気だったイケメン王子、くらいの認識だったのに。
友人としてエドワードの傍で過ごすうちに、完璧に見える裏側で彼が人知れず努力を重ね、時には挫けそうになりながらもひたむきに頑張り続けていることに気付いた。
俺は、エドワードよりも誇り高く美しい人を知らない。
彼が心の奥底にしまい込んでいる悩みや弱音を俺だけにそっと見せてくれたとき、俺はこの心臓が壊れてしまうんじゃないかってくらい嬉しくて、恋を自覚したのだ。
ここまで考えて、ふと疑問に思う。そういえば、エドワードって俺のどこを好きになってくれたんだろう。この際だから、勇気を出して聞いてしまおうか。
「ね、エディ。あなたは俺のどんなところを好ましく思ってくれたの?」
優しく髪を撫でながら、さりげなく問いかける。心地よさそうに目を細めていたエドワードは、ぱちりと切れ長の瞳を瞬かせて俺を見上げた。
みるみるうちに、白い頬が桃色に染まっていく。彼は少し視線を泳がせたあと、躊躇いがちに口を開いた。
「……ひとことで言うなら、優しいところだな。ウィリアム。君は幼い頃から、皆や私自身の理想に応える完璧な王子としての私だけではなく、理想に近付くために必死に努力しているだけの凡愚たる私のことも優しく包み込んでくれた」
「凡愚だなんて、自分を貶めるような言葉は使わないでくれ。あなたは勤勉な努力家で、苦労を厭わず頑張り続けられる人だ。誰にでもできることじゃない。本当に素晴らしいことなんだよ、エドワード」
「今みたいに私が自分を大切にできなかったときに、君は私の代わりに悲しんで、私を大切にしてくれるだろう。そういうところも優しくて大好きだよ。私のためにそんなことをしてくれるのは、きっと後にも先にも君だけだ」
エドワードが柔らかく微笑み、そっと俺の手を握る。俺は嬉しいやらびっくりするやらであたふたすることしかできなかった。
「他にも好きなところはたくさんある。まず、リアムは男の私から見ても目を見張るほど美しくてカッコいい。ふわふわの黒髪と垂れ目がちな瞳が色っぽくて好きだし、たくましい体に優しく抱きしめられると心ごと蕩けそうになる」
「わぁ……」
「それから、剣を握っているときの真剣な顔も好きだ。私が怪我や不快な思いをしないようにさりげなく細やかに気遣ってくれるところも、スマートでカッコいいと思う。いつも穏やかで優しいけれど、いざというときは思い切りが良くて勇敢な姿を見せてくれるところにもときめく」
「そ、そうなんだ……えと、ははっ……好きな人に自分の好きなところを教えてもらうのって、こんなに嬉しいんだね。知らなかったよ」
俺はもうハートをノックアウトされてしまって、照れ笑いをしながら彼の手をぎゅっと握り返す。
エドワードは完全にこの状況を楽しんでいて、赤面した俺の顔を下から覗き込んで満足そうに目を細めた。
「ふふ。顔を真っ赤にして可愛らしいな。さぁ、今度はリアムの番だよ。君も私のどこが好きか教えてくれ。聞きたい」
「お、教える。教えるから、ちょっと待って……まださっきのあなたの言葉を噛み締めてるから」
「待っている間に、君の好きなところをもっと教えてあげようか」
「正直すごく嬉しいけどそんなことされたら俺の心臓が持たないよ。ほら、心臓の音、聞こえる?さっきからドキドキしてすごいことになってるんだ」
エドワードの頭を抱き込み、胸に耳を優しく押し当てさせる。
彼は「わぁっ」と驚いたように声をあげ、悪戯が成功した子どものような瞳で俺を見つめた。
「……この悪戯っ子め。俺も今からたくさんあなたの好きなところを言うから、ちゃんと聞いててね。途中で耳を塞いだりしたらダメだよ」
「ふふ。わかっているよ」
エドワードはご機嫌な様子で余裕ぶっていたが、俺が先ほどの彼に勝るとも劣らない勢いで好きなところを喋り続けていたら、どんどん顔を赤く染めて最終的に俺の首筋に顔を埋めてしまった。
可愛いな。たぶん恥ずかしくなっちゃったときの避難場所がそこなんだと思う。顔を隠しても白い耳たぶが真っ赤になってるからあんまり意味ないのもひっくるめて可愛い。
清涼宮に到着するまでの半日間、俺たちは馬車に揺られながら、ずっとそんな感じでいちゃいちゃしていた。
綺麗な指先が伸びてきて、すりすりと気遣うように俺の頬を撫でる。エドワードの純粋な瞳に見上げられ、俺は全部正直に白状することにした。
「あなたの愛らしさに悶えてる。どうしてこんなに可愛いんだろう……好きだよ、エディ」
頬を撫で続ける指先をつかまえて、ちゅっと軽く口付けた。エドワードはとろりと瞳を蕩けさせ、内緒話をするような声で「私もリアムが好き」と応えてくれる。
何回言えば気が済むんだろうってくらい言ってるけど、何回言っても足りない。だって俺は十年も片思いしてたんだ。まさかこんなふうに受け入れてもらえるなんて思ってなかったから、嬉しくて何度でも伝えたくなる。
あー、こんなにカッコよくて綺麗で頑張り屋で優しい王子様が俺の恋人って、本当に夢みたいだ。
前世の記憶をしっかり思い出したのはエドワードと初めて会ったときだったけど、そのときは『セカ愛』の攻略対象の中でも大人気だったイケメン王子、くらいの認識だったのに。
友人としてエドワードの傍で過ごすうちに、完璧に見える裏側で彼が人知れず努力を重ね、時には挫けそうになりながらもひたむきに頑張り続けていることに気付いた。
俺は、エドワードよりも誇り高く美しい人を知らない。
彼が心の奥底にしまい込んでいる悩みや弱音を俺だけにそっと見せてくれたとき、俺はこの心臓が壊れてしまうんじゃないかってくらい嬉しくて、恋を自覚したのだ。
ここまで考えて、ふと疑問に思う。そういえば、エドワードって俺のどこを好きになってくれたんだろう。この際だから、勇気を出して聞いてしまおうか。
「ね、エディ。あなたは俺のどんなところを好ましく思ってくれたの?」
優しく髪を撫でながら、さりげなく問いかける。心地よさそうに目を細めていたエドワードは、ぱちりと切れ長の瞳を瞬かせて俺を見上げた。
みるみるうちに、白い頬が桃色に染まっていく。彼は少し視線を泳がせたあと、躊躇いがちに口を開いた。
「……ひとことで言うなら、優しいところだな。ウィリアム。君は幼い頃から、皆や私自身の理想に応える完璧な王子としての私だけではなく、理想に近付くために必死に努力しているだけの凡愚たる私のことも優しく包み込んでくれた」
「凡愚だなんて、自分を貶めるような言葉は使わないでくれ。あなたは勤勉な努力家で、苦労を厭わず頑張り続けられる人だ。誰にでもできることじゃない。本当に素晴らしいことなんだよ、エドワード」
「今みたいに私が自分を大切にできなかったときに、君は私の代わりに悲しんで、私を大切にしてくれるだろう。そういうところも優しくて大好きだよ。私のためにそんなことをしてくれるのは、きっと後にも先にも君だけだ」
エドワードが柔らかく微笑み、そっと俺の手を握る。俺は嬉しいやらびっくりするやらであたふたすることしかできなかった。
「他にも好きなところはたくさんある。まず、リアムは男の私から見ても目を見張るほど美しくてカッコいい。ふわふわの黒髪と垂れ目がちな瞳が色っぽくて好きだし、たくましい体に優しく抱きしめられると心ごと蕩けそうになる」
「わぁ……」
「それから、剣を握っているときの真剣な顔も好きだ。私が怪我や不快な思いをしないようにさりげなく細やかに気遣ってくれるところも、スマートでカッコいいと思う。いつも穏やかで優しいけれど、いざというときは思い切りが良くて勇敢な姿を見せてくれるところにもときめく」
「そ、そうなんだ……えと、ははっ……好きな人に自分の好きなところを教えてもらうのって、こんなに嬉しいんだね。知らなかったよ」
俺はもうハートをノックアウトされてしまって、照れ笑いをしながら彼の手をぎゅっと握り返す。
エドワードは完全にこの状況を楽しんでいて、赤面した俺の顔を下から覗き込んで満足そうに目を細めた。
「ふふ。顔を真っ赤にして可愛らしいな。さぁ、今度はリアムの番だよ。君も私のどこが好きか教えてくれ。聞きたい」
「お、教える。教えるから、ちょっと待って……まださっきのあなたの言葉を噛み締めてるから」
「待っている間に、君の好きなところをもっと教えてあげようか」
「正直すごく嬉しいけどそんなことされたら俺の心臓が持たないよ。ほら、心臓の音、聞こえる?さっきからドキドキしてすごいことになってるんだ」
エドワードの頭を抱き込み、胸に耳を優しく押し当てさせる。
彼は「わぁっ」と驚いたように声をあげ、悪戯が成功した子どものような瞳で俺を見つめた。
「……この悪戯っ子め。俺も今からたくさんあなたの好きなところを言うから、ちゃんと聞いててね。途中で耳を塞いだりしたらダメだよ」
「ふふ。わかっているよ」
エドワードはご機嫌な様子で余裕ぶっていたが、俺が先ほどの彼に勝るとも劣らない勢いで好きなところを喋り続けていたら、どんどん顔を赤く染めて最終的に俺の首筋に顔を埋めてしまった。
可愛いな。たぶん恥ずかしくなっちゃったときの避難場所がそこなんだと思う。顔を隠しても白い耳たぶが真っ赤になってるからあんまり意味ないのもひっくるめて可愛い。
清涼宮に到着するまでの半日間、俺たちは馬車に揺られながら、ずっとそんな感じでいちゃいちゃしていた。
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