94 / 375
捕まった後のお話
4.惑っています。 <亀田>
しおりを挟む
昼間から、と言うのはダメだろう。
そう思っていたのに、自分で作ったルールをアッサリ破ってしまった。
どうも最近の俺は堪え性が無い。これが病だと言うのなら、俺の症状はもう末期に当たるのだろう。職場とプライベートの区別も付けられないわ、プライベートはプライベートで欲望の赴くままに行動してしまうわなどと……孔子は四十を不惑と表現したそうだが、後一年とちょっとで何事にも惑わない人間になれるような気が、俺にはまるでしない。―――これでは完全に無理だろう。
珈琲とお茶請けに出したチーズケーキを食べた後、それほど広くない部屋を探検したいと言うので、冗談半分で洗面所やお風呂まで見せてやった。いたって普通のマンションなのだが、大谷はやけに感心した様子で歓声を上げていた。
「わぁトイレと浴室が別だ、羨ましい!」
確かに大谷の家のユニットバスよりは広いかもしれない。次に案内したのは書斎だ。二つある個室の内の一つを書斎にする事にして、作り付けの本棚を入居前のリフォームで設置した。壁一面天井から床まである本棚に何だかんだ買った本を並べているから、小さな図書館みたいになってしまっている。
「おおー、スゴイ。本ばっかり……」
しかし大谷のお好みの本は無かったようだ。基本実用書ばかりだからな。後は偶に歴史関係の本を読むくらい。大谷は漫画や小説をよく読むようなので本の趣味は全く被っていないようだ。
「あ!うさぎ本がこんなに……!」
ここ数年購入したウサギ関連の書籍は、ミミがお月様に帰った時に他のうさぎグッズと一緒に処分しようかと思いつつ、何となく段ボールに詰めてクローゼットの奥に仕舞い込んでしまい、処分しそびれていた。つい最近それらを、うータンと交流するようになってから本棚に復活させたのだった。
「『うさキモ』のバックナンバーだ!見て良いですか?」
「ああ」
大谷は大層嬉しそうに、うさぎ愛好家が好んで買う専門誌『うさぎのきもち』を一つ手に取り、開いた。大物歌手がうさぎを膝に乗せて笑っているページを見て、フフフと楽しそうに笑う。
「この雑誌見ると意外な有名人がうさぎを飼っていてビックリしますよね。この人が、こんな愛らしいうさぎを飼ってるなんて、意外過ぎる」
「CDのジャケットに飼いうさぎと映っているらしいな」
「ホントだ!この号買って無いから知らなかった。硬派な歌を歌っているイメージなのにうさぎ好きってギャップありますねぇ」
それから暫くの間、持っていないバックナンバーを眺めて楽しそうに声を上げる大谷と、うさぎ談義で盛り上がった。
ああ、何だかこんな穏やかな休日って良いな、なんて呑気に喜んでいたが、次に案内した寝室で少し理性を飛ばしてしまった。
ベッドに押し倒された大谷が、少し潤んだ瞳で俺を見上げているのを見てしまったら―――俺の頭がおかしかろうが、常識から少し外れていようが、自分のコントロールが出来ない状態であろうが……そんな事はどうでも良い些末な事に思えたのだ。
うん。やっぱ俺、末期だな。
でも不思議と、後悔は無かった。
そう思っていたのに、自分で作ったルールをアッサリ破ってしまった。
どうも最近の俺は堪え性が無い。これが病だと言うのなら、俺の症状はもう末期に当たるのだろう。職場とプライベートの区別も付けられないわ、プライベートはプライベートで欲望の赴くままに行動してしまうわなどと……孔子は四十を不惑と表現したそうだが、後一年とちょっとで何事にも惑わない人間になれるような気が、俺にはまるでしない。―――これでは完全に無理だろう。
珈琲とお茶請けに出したチーズケーキを食べた後、それほど広くない部屋を探検したいと言うので、冗談半分で洗面所やお風呂まで見せてやった。いたって普通のマンションなのだが、大谷はやけに感心した様子で歓声を上げていた。
「わぁトイレと浴室が別だ、羨ましい!」
確かに大谷の家のユニットバスよりは広いかもしれない。次に案内したのは書斎だ。二つある個室の内の一つを書斎にする事にして、作り付けの本棚を入居前のリフォームで設置した。壁一面天井から床まである本棚に何だかんだ買った本を並べているから、小さな図書館みたいになってしまっている。
「おおー、スゴイ。本ばっかり……」
しかし大谷のお好みの本は無かったようだ。基本実用書ばかりだからな。後は偶に歴史関係の本を読むくらい。大谷は漫画や小説をよく読むようなので本の趣味は全く被っていないようだ。
「あ!うさぎ本がこんなに……!」
ここ数年購入したウサギ関連の書籍は、ミミがお月様に帰った時に他のうさぎグッズと一緒に処分しようかと思いつつ、何となく段ボールに詰めてクローゼットの奥に仕舞い込んでしまい、処分しそびれていた。つい最近それらを、うータンと交流するようになってから本棚に復活させたのだった。
「『うさキモ』のバックナンバーだ!見て良いですか?」
「ああ」
大谷は大層嬉しそうに、うさぎ愛好家が好んで買う専門誌『うさぎのきもち』を一つ手に取り、開いた。大物歌手がうさぎを膝に乗せて笑っているページを見て、フフフと楽しそうに笑う。
「この雑誌見ると意外な有名人がうさぎを飼っていてビックリしますよね。この人が、こんな愛らしいうさぎを飼ってるなんて、意外過ぎる」
「CDのジャケットに飼いうさぎと映っているらしいな」
「ホントだ!この号買って無いから知らなかった。硬派な歌を歌っているイメージなのにうさぎ好きってギャップありますねぇ」
それから暫くの間、持っていないバックナンバーを眺めて楽しそうに声を上げる大谷と、うさぎ談義で盛り上がった。
ああ、何だかこんな穏やかな休日って良いな、なんて呑気に喜んでいたが、次に案内した寝室で少し理性を飛ばしてしまった。
ベッドに押し倒された大谷が、少し潤んだ瞳で俺を見上げているのを見てしまったら―――俺の頭がおかしかろうが、常識から少し外れていようが、自分のコントロールが出来ない状態であろうが……そんな事はどうでも良い些末な事に思えたのだ。
うん。やっぱ俺、末期だな。
でも不思議と、後悔は無かった。
0
お気に入りに追加
1,548
あなたにおすすめの小説
初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と叫んだら長年の婚約者だった新妻に「気持ち悪い」と言われた上に父にも予想外の事を言われた男とその浮気女の話
ラララキヲ
恋愛
長年の婚約者を欺いて平民女と浮気していた侯爵家長男。3年後の白い結婚での離婚を浮気女に約束して、新妻の寝室へと向かう。
初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と愛する夫から宣言された無様な女を嘲笑う為だけに。
しかし寝室に居た妻は……
希望通りの白い結婚と愛人との未来輝く生活の筈が……全てを周りに知られていた上に自分の父親である侯爵家当主から言われた言葉は──
一人の女性を蹴落として掴んだ彼らの未来は……──
<【ざまぁ編】【イリーナ編】【コザック第二の人生編(ザマァ有)】となりました>
◇テンプレ浮気クソ男女。
◇軽い触れ合い表現があるのでR15に
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇ご都合展開。矛盾は察して下さい…
◇なろうにも上げてます。
※HOTランキング入り(1位)!?[恋愛::3位]ありがとうございます!恐縮です!期待に添えればよいのですがッ!!(;><)
【完結】そんなに側妃を愛しているなら邪魔者のわたしは消えることにします。
たろ
恋愛
わたしの愛する人の隣には、わたしではない人がいる。………彼の横で彼を見て微笑んでいた。
わたしはそれを遠くからそっと見て、視線を逸らした。
ううん、もう見るのも嫌だった。
結婚して1年を過ぎた。
政略結婚でも、結婚してしまえばお互い寄り添い大事にして暮らしていけるだろうと思っていた。
なのに彼は婚約してからも結婚してからもわたしを見ない。
見ようとしない。
わたしたち夫婦には子どもが出来なかった。
義両親からの期待というプレッシャーにわたしは心が折れそうになった。
わたしは彼の姿を見るのも嫌で彼との時間を拒否するようになってしまった。
そして彼は側室を迎えた。
拗れた殿下が妻のオリエを愛する話です。
ただそれがオリエに伝わることは……
とても設定はゆるいお話です。
短編から長編へ変更しました。
すみません
愛されない妃ですので。
ごろごろみかん。
恋愛
王妃になんて、望んでなったわけではない。
国王夫妻のリュシアンとミレーゼの関係は冷えきっていた。
「僕はきみを愛していない」
はっきりそう告げた彼は、ミレーゼ以外の女性を抱き、愛を囁いた。
『お飾り王妃』の名を戴くミレーゼだが、ある日彼女は側妃たちの諍いに巻き込まれ、命を落としてしまう。
(ああ、私の人生ってなんだったんだろう──?)
そう思って人生に終止符を打ったミレーゼだったが、気がつくと結婚前に戻っていた。
しかも、別の人間になっている?
なぜか見知らぬ伯爵令嬢になってしまったミレーゼだが、彼女は決意する。新たな人生、今度はリュシアンに関わることなく、平凡で優しい幸せを掴もう、と。
*年齢制限を18→15に変更しました。
元侯爵令嬢は冷遇を満喫する
cyaru
恋愛
第三王子の不貞による婚約解消で王様に拝み倒され、渋々嫁いだ侯爵令嬢のエレイン。
しかし教会で結婚式を挙げた後、夫の口から開口一番に出た言葉は
「王命だから君を娶っただけだ。愛してもらえるとは思わないでくれ」
夫となったパトリックの側には長年の恋人であるリリシア。
自分もだけど、向こうだってわたくしの事は見たくも無いはず!っと早々の別居宣言。
お互いで交わす契約書にほっとするパトリックとエレイン。ほくそ笑む愛人リリシア。
本宅からは屋根すら見えない別邸に引きこもりお1人様生活を満喫する予定が・・。
※専門用語は出来るだけ注釈をつけますが、作者が専門用語だと思ってない専門用語がある場合があります
※作者都合のご都合主義です。
※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。
※架空のお話です。現実世界の話ではありません。
※爵位や言葉使いなど現実世界、他の作者さんの作品とは異なります(似てるモノ、同じものもあります)
※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
旦那様に離婚を突きつけられて身を引きましたが妊娠していました。
ゆらゆらぎ
恋愛
ある日、平民出身である侯爵夫人カトリーナは辺境へ行って二ヶ月間会っていない夫、ランドロフから執事を通して離縁届を突きつけられる。元の身分の差を考え気持ちを残しながらも大人しく身を引いたカトリーナ。
実家に戻り、兄の隣国行きについていくことになったが隣国アスファルタ王国に向かう旅の途中、急激に体調を崩したカトリーナは医師の診察を受けることに。
【完結】真実の愛だと称賛され、二人は別れられなくなりました
紫崎 藍華
恋愛
ヘレンは婚約者のティルソンから、面白みのない女だと言われて婚約解消を告げられた。
ティルソンは幼馴染のカトリーナが本命だったのだ。
ティルソンとカトリーナの愛は真実の愛だと貴族たちは賞賛した。
貴族たちにとって二人が真実の愛を貫くのか、それとも破滅へ向かうのか、面白ければどちらでも良かった。
【完結】待ってください
仲 奈華 (nakanaka)
恋愛
ルチアは、誰もいなくなった家の中を見回した。
毎日家族の為に食事を作り、毎日家を清潔に保つ為に掃除をする。
だけど、ルチアを置いて夫は出て行ってしまった。
一枚の離婚届を机の上に置いて。
ルチアの流した涙が床にポタリと落ちた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる