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新妻・卯月の仙台暮らし
59.願いを込めます。【最終話】
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本日二度目の投稿となります。
前話未読の方は、そちらからお読み下さい<(_ _)>
『新妻・卯月の仙台暮らし』最終話です。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
丈さんの腕にしがみつくようにして少し急ぎ足で参道を歩く。
神社の敷地に入って最初に上った階段の一番上、小さな高台になっている場所まで来て一旦足を止めた。
右手には八上姫の手前に跪く大国主命の、精巧な砂像が展示されている。その二人の様子を微笑ましく見守っている、キューピッドになったうさぎも一緒だ。三体の砂の像に目を細め、それから真っすぐと参道の向こう、階段が差し示す方向に向き直る。
少しだけ、二人とも無言でその美しい光景に見入った。
「見晴らし、良いね」
「ああ、日本海が一望できるな」
階段を降りた処にある一つ目の鳥居、その向こうには国道越しに日本海が広がっている。
「また来たいね」
「そうだな」
水平線に視線を残したまま、丈さんはそう頷いた。それから一つ深呼吸をして振り向き、隣に並んで立つ私にニッコリと微笑んだ。それは一緒に暮らす私が珍しいと感じるくらい、無邪気な笑顔だった。
「じゃあ、うさぎにお願いして行くか」
「うん!」
もう一度、丈さんとここへ戻って来よう。
スッキリとした気持でそう思う。
アレコレ悩んでいた日々が嘘みたいに、晴れやかな気分。それはこの聖域の清涼な空間に邪気をすっかり振り落として貰ったかのように。
これから先、またいつか……旅行前にあったようなとんでもない勘違いや小さなすれ違いを経験するかもしれない。
でもきっと大丈夫。だって、私達は神様に誓ったのだから。『一緒にうータンを大事にして、楽しく暮らして行こう』って。
誓いを破ったら、怖ーい神罰が下るんだもん! うさぎの神様の神罰って言うと……神話のうさぎさんみたいに例えば毛を毟られる? じゃあ、円形脱毛症とか、なっちゃうのかな?
うん、それは嫌だ。丈さんは男だから禿げてもまだ大丈夫かもしれないけれど、私は困る。禿げるのは嫌だ……!
丈さんが袋から二つ結び石を出して、掌の上に置いた。私と丈さん、一つずつそれを手に取る。
結び石は五つ。二つは鳥居の上に奉納した。だから持ち帰る分を一つだけ残して、私達はそれぞれ白い小石を手に取ってうさぎにお供えする。階段を上がった処、脇の台座の上に後足で立ち上がり遠い海を見やるうさぎの足元に―――白いすべすべの結び石を、願いを込めて慎重に置いた。
「うさぎさん、また会いに来ますね」
そう呟いて、二人で手を合わせる。
時間が無いから、一瞬だけだ。顔を上げると丈さんと目が合った。
ご利益があったら。今度は三人で、お礼参りが出来るかもしれない。―――来れるといいな。
「じゃあ、帰るか」
「うん!」
と大きく頷いた時に、大変なことを思い出した!
「しまった! そう言えば『うさぎ焼き』まだ食べてない……!」
もっと余裕があると考えていたから、第一鳥居の横にある売店のうさぎ焼きは後で食べようと思っていたんだ。なのに第二鳥居で随分と時間を掛けてしまったから……ヤバい! 急がねば間に合わない……!!
「急ごう! 丈さん……!!」
そう叫ぶと、少し呆気に取られた感じの丈さんの手を、再びひったくるように掴み。私は慌てて、海を臨む境内の階段を駆け下りたのだった。
追伸:無事確保したうさぎ焼きは、もっちりとした歯ざわりでとっても美味しかったです!
【新妻・卯月の仙台暮らし・完】
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
滑り込みで何とか大賞期間中に『新婚編』にオチを付けることが出来ました。
これもお読みいただいた方々、お気に入り登録をしていただい方々、それから貴重な一票を投票していただいた方々のお陰です<(_ _)>
執筆の後押しをしていただき、ここまでお付き合いいただき誠に有難うございました!
なお番外編またはおまけ話など一応設定はあるのですが、この後は暫く他の連載を優先する予定です。いつ手を付けられるか分かりませんので、一応完結表示といたします。
が、いつか再度追加できた時そちらでまたお会い出来ると嬉しいです(^^ゞ お時間とご都合がついたら、チラっと覗いてやってください!
※昨年七月の豪雨災害で、卯崎島のモデルとして参考にさせていただいた大久野島も土砂災害に見舞われたそうです。
ネット上の情報ですが、現在一部山頂など立ち入り禁止区域はあるものの、周回道路、休暇村及び資料館などは通常通りオープンしているとのことです。うさぎさん達も今は通常通り暮らしているようです。
この度の災害により被災された皆様ならびにそのご家族の皆様に心よりお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方々に謹んでお悔やみ申し上げます。
大久野島および、被災地の皆様の安全と被災地の一日も早い復興を心よりお祈り申し上げます。
前話未読の方は、そちらからお読み下さい<(_ _)>
『新妻・卯月の仙台暮らし』最終話です。
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丈さんの腕にしがみつくようにして少し急ぎ足で参道を歩く。
神社の敷地に入って最初に上った階段の一番上、小さな高台になっている場所まで来て一旦足を止めた。
右手には八上姫の手前に跪く大国主命の、精巧な砂像が展示されている。その二人の様子を微笑ましく見守っている、キューピッドになったうさぎも一緒だ。三体の砂の像に目を細め、それから真っすぐと参道の向こう、階段が差し示す方向に向き直る。
少しだけ、二人とも無言でその美しい光景に見入った。
「見晴らし、良いね」
「ああ、日本海が一望できるな」
階段を降りた処にある一つ目の鳥居、その向こうには国道越しに日本海が広がっている。
「また来たいね」
「そうだな」
水平線に視線を残したまま、丈さんはそう頷いた。それから一つ深呼吸をして振り向き、隣に並んで立つ私にニッコリと微笑んだ。それは一緒に暮らす私が珍しいと感じるくらい、無邪気な笑顔だった。
「じゃあ、うさぎにお願いして行くか」
「うん!」
もう一度、丈さんとここへ戻って来よう。
スッキリとした気持でそう思う。
アレコレ悩んでいた日々が嘘みたいに、晴れやかな気分。それはこの聖域の清涼な空間に邪気をすっかり振り落として貰ったかのように。
これから先、またいつか……旅行前にあったようなとんでもない勘違いや小さなすれ違いを経験するかもしれない。
でもきっと大丈夫。だって、私達は神様に誓ったのだから。『一緒にうータンを大事にして、楽しく暮らして行こう』って。
誓いを破ったら、怖ーい神罰が下るんだもん! うさぎの神様の神罰って言うと……神話のうさぎさんみたいに例えば毛を毟られる? じゃあ、円形脱毛症とか、なっちゃうのかな?
うん、それは嫌だ。丈さんは男だから禿げてもまだ大丈夫かもしれないけれど、私は困る。禿げるのは嫌だ……!
丈さんが袋から二つ結び石を出して、掌の上に置いた。私と丈さん、一つずつそれを手に取る。
結び石は五つ。二つは鳥居の上に奉納した。だから持ち帰る分を一つだけ残して、私達はそれぞれ白い小石を手に取ってうさぎにお供えする。階段を上がった処、脇の台座の上に後足で立ち上がり遠い海を見やるうさぎの足元に―――白いすべすべの結び石を、願いを込めて慎重に置いた。
「うさぎさん、また会いに来ますね」
そう呟いて、二人で手を合わせる。
時間が無いから、一瞬だけだ。顔を上げると丈さんと目が合った。
ご利益があったら。今度は三人で、お礼参りが出来るかもしれない。―――来れるといいな。
「じゃあ、帰るか」
「うん!」
と大きく頷いた時に、大変なことを思い出した!
「しまった! そう言えば『うさぎ焼き』まだ食べてない……!」
もっと余裕があると考えていたから、第一鳥居の横にある売店のうさぎ焼きは後で食べようと思っていたんだ。なのに第二鳥居で随分と時間を掛けてしまったから……ヤバい! 急がねば間に合わない……!!
「急ごう! 丈さん……!!」
そう叫ぶと、少し呆気に取られた感じの丈さんの手を、再びひったくるように掴み。私は慌てて、海を臨む境内の階段を駆け下りたのだった。
追伸:無事確保したうさぎ焼きは、もっちりとした歯ざわりでとっても美味しかったです!
【新妻・卯月の仙台暮らし・完】
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滑り込みで何とか大賞期間中に『新婚編』にオチを付けることが出来ました。
これもお読みいただいた方々、お気に入り登録をしていただい方々、それから貴重な一票を投票していただいた方々のお陰です<(_ _)>
執筆の後押しをしていただき、ここまでお付き合いいただき誠に有難うございました!
なお番外編またはおまけ話など一応設定はあるのですが、この後は暫く他の連載を優先する予定です。いつ手を付けられるか分かりませんので、一応完結表示といたします。
が、いつか再度追加できた時そちらでまたお会い出来ると嬉しいです(^^ゞ お時間とご都合がついたら、チラっと覗いてやってください!
※昨年七月の豪雨災害で、卯崎島のモデルとして参考にさせていただいた大久野島も土砂災害に見舞われたそうです。
ネット上の情報ですが、現在一部山頂など立ち入り禁止区域はあるものの、周回道路、休暇村及び資料館などは通常通りオープンしているとのことです。うさぎさん達も今は通常通り暮らしているようです。
この度の災害により被災された皆様ならびにそのご家族の皆様に心よりお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方々に謹んでお悔やみ申し上げます。
大久野島および、被災地の皆様の安全と被災地の一日も早い復興を心よりお祈り申し上げます。
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