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番外編・うさぎのきもち
6.うさぎ専門店
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勾当台公園駅で下車し、定禅寺通を広瀬川に向かって歩き突き当りを右へ。スマホのマップを頼りに住宅街を歩いているとうさぎのイラストが描かれた小さな看板を見つけた。
『この奥 うさぎひろば』
矢印に従って道を進むと突き当りにある四階建てマンションの、地上階に設置されている店舗に辿り着いた。『うさぎひろば』と表記された小さな看板を掲げている小さな店舗だ。
途端に挫けそうになる。スマホで確認した時はもう少し大きい店のように感じていたが、この規模の店舗だと店員に気付かれずスッと入ってスッと戻って来るのは難しいだろう。
確かに当初考えていた通り専門店で尋ねれば、実情にあった詳しい事は教えて貰うかもしれない。しかし、だ。その質問をする為には自分の状況を説明しなければならないよな。と今更ながら気が付いた。
『同棲している彼女が置いてったうさぎの世話の仕方が分からないんです』『彼女に聞けば良いんじゃないですか?』『いや、連絡しても返事が無くて』『もしかして喧嘩中ですか?』『いや~お恥ずかしい……そうなんですよ、女って何考えているか分かんないですよね?三年も一緒にいたのに』って、そんな身の上話できねーよ。
それに何を買うのかもまだ特に決めていない。餌もまだたっぷりあったし……ん?あの餌、そう言えば。
今朝手にした餌の袋の画像が頭に浮かぶ。空気に晒さなくて良いようなジッパー付きの、更に密封容器に厳重に保管されていた袋の表、下の方に……『うさぎひろば』と書いてあったような。まさかあの餌はこの店のオリジナルか?じゃあ、何か?もしかしてあの餌はこの店の……ってだけじゃなく、もしかしてうちにいるあの耳の垂れたうさぎ、ヨツバそのものもひょっとしてこの店で買ったうさぎなんじゃないか?
だとするとかなり気まずい。みのりがこの店の常連だった可能性があるからだ。
俺はクルリと背を向けた。
止めだ。デカいペットショップにしよう。駅に戻ってスマホで検索するか?
いやでもなぁ、ここが一番近かったんだ。郊外になると車を借りなきゃ難しいだろ。便利な街中に住んでいるから車を持っていなくてもあまり不便は感じない。駐車場は高いし遠出する時はレンタカーを使っていた。
ったくなぁ、下調べが雑過ぎる。と、自分を非難する。いつもならもう少し慎重に事を進める筈なのに。気にしまいと気を付けているが、かなりみのりの家出で動揺しているのかもしれない。
帰るか。
「あ、あの……っ!」
上着のポケットに手を突っ込み、肩を落として一歩踏み出そうとした時。背中に震える声が掛かった。ゆっくりと振り向くと、店から飛び出して来たらしい眼鏡を掛けた小柄な女性が両手を握りしめ、怯えた表情で俺を見上げていた。
「い、いらっしゃいませ……!」
「いや、あの」
「あの、開いてます!ちゃんと開いてますので入って下さい!」
そう絞り出すように言って、彼女はバッと俺の上着の背を掴んだ。
「あっ」
それは思わず、と言った感じだった。
手を出してしまった事に慌てて、顔を真っ赤にした彼女は今度はバッと上着から手を離したのだった。
この状況で立ち去るとか……出来る気がしない。
俺はオドオドとした店員に促されて、その店に足を踏み入れる事になったのだった。
『この奥 うさぎひろば』
矢印に従って道を進むと突き当りにある四階建てマンションの、地上階に設置されている店舗に辿り着いた。『うさぎひろば』と表記された小さな看板を掲げている小さな店舗だ。
途端に挫けそうになる。スマホで確認した時はもう少し大きい店のように感じていたが、この規模の店舗だと店員に気付かれずスッと入ってスッと戻って来るのは難しいだろう。
確かに当初考えていた通り専門店で尋ねれば、実情にあった詳しい事は教えて貰うかもしれない。しかし、だ。その質問をする為には自分の状況を説明しなければならないよな。と今更ながら気が付いた。
『同棲している彼女が置いてったうさぎの世話の仕方が分からないんです』『彼女に聞けば良いんじゃないですか?』『いや、連絡しても返事が無くて』『もしかして喧嘩中ですか?』『いや~お恥ずかしい……そうなんですよ、女って何考えているか分かんないですよね?三年も一緒にいたのに』って、そんな身の上話できねーよ。
それに何を買うのかもまだ特に決めていない。餌もまだたっぷりあったし……ん?あの餌、そう言えば。
今朝手にした餌の袋の画像が頭に浮かぶ。空気に晒さなくて良いようなジッパー付きの、更に密封容器に厳重に保管されていた袋の表、下の方に……『うさぎひろば』と書いてあったような。まさかあの餌はこの店のオリジナルか?じゃあ、何か?もしかしてあの餌はこの店の……ってだけじゃなく、もしかしてうちにいるあの耳の垂れたうさぎ、ヨツバそのものもひょっとしてこの店で買ったうさぎなんじゃないか?
だとするとかなり気まずい。みのりがこの店の常連だった可能性があるからだ。
俺はクルリと背を向けた。
止めだ。デカいペットショップにしよう。駅に戻ってスマホで検索するか?
いやでもなぁ、ここが一番近かったんだ。郊外になると車を借りなきゃ難しいだろ。便利な街中に住んでいるから車を持っていなくてもあまり不便は感じない。駐車場は高いし遠出する時はレンタカーを使っていた。
ったくなぁ、下調べが雑過ぎる。と、自分を非難する。いつもならもう少し慎重に事を進める筈なのに。気にしまいと気を付けているが、かなりみのりの家出で動揺しているのかもしれない。
帰るか。
「あ、あの……っ!」
上着のポケットに手を突っ込み、肩を落として一歩踏み出そうとした時。背中に震える声が掛かった。ゆっくりと振り向くと、店から飛び出して来たらしい眼鏡を掛けた小柄な女性が両手を握りしめ、怯えた表情で俺を見上げていた。
「い、いらっしゃいませ……!」
「いや、あの」
「あの、開いてます!ちゃんと開いてますので入って下さい!」
そう絞り出すように言って、彼女はバッと俺の上着の背を掴んだ。
「あっ」
それは思わず、と言った感じだった。
手を出してしまった事に慌てて、顔を真っ赤にした彼女は今度はバッと上着から手を離したのだった。
この状況で立ち去るとか……出来る気がしない。
俺はオドオドとした店員に促されて、その店に足を踏み入れる事になったのだった。
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(なろうさんとカクヨムさんなど他のサイトでも掲載しています場合があります。単独の短編としてアップされています)
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