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・番外編・お兄ちゃんは過保護【その後のお話】

44.幼馴染の質問

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勇気の後から部屋に入った私が無意識に扉をカチリと閉めると、勇気が戻って来て扉を再び開け放った。

あ、そうか。お母さんが気になるなら扉を開けて置けって言ったんだっけ。

律儀だなぁ。小さい頃から一緒にいる私達が2人でいても、何が起こる訳でも無いのに。そうは思ったけれども、以前澪と勇気をこの部屋に残して飛び出した後モヤモヤとあらぬ想像してしまった私には、もうお兄ちゃんが心配してしまう気持ちも何となく想像が付く。本人達の心持ちがどうかと言う事と関係なく、大事な人に関しては『万が一』と言う事を考えてしまうものなのだ、たぶん。

そう思えるだけ、私もちょっとは大人になれたかな……?まだまだなのかもしれないけれども。

さて、ちょっと大人になった私から、要件を切り出す事にしよう。
あくまで落ち着いて、ね。もう感情に任せて言い逃げしたりとかしないモン。

「で、勇気が聞きたい事って、なに?」

扉を閉めてこちらを向いた勇気に、立ったまま向かい合って尋ねた。
怒っていないって言う割に、今も勇気は眉根を寄せて難しい表情で私を見下ろしている。

「凛は……何で野球部に入ったんだ?野球にも興味無いし、知らない相手と話すのだって苦手だろ?わざわざ、あんな態度でお前に接する仁見と一緒に仕事するような場所に飛び込んで来たのは―――何でだ?」
「それは……」

何と言ったら良いのだろう。
勇気への反発心もあった。でも元々の理由は、もう少しちゃんとした自分になりたいって考えた事だった。切っ掛けは―――勇気と澪がお互い特別な気持ちを持っているんじゃないかと感じた事なんだけど。でもそれに関しては私の勘違いだって、お兄ちゃんに一刀両断されてしまった。お兄ちゃんが違うって言うなら、違うのかもしれないけど……だから余計、どの辺りから私の考えを勇気に言っていいのか分からない。
私は両手を組み合わせて、言葉を選びつつ口を開いた。

「ちゃんと人と関われる人間になりたかったの。勇気と澪と家族としか付き合えない自分が子供っぽいなって。確かに人付き合いは苦手だけど……この先逃げてばっかりいられない。将来のためには出来るようにならないとって思ったの」
「別に、俺と鈴木がいれば十分だろ?……本当は違うんじゃないか?お前は他に関わりたい人間が出来たから、野球部に入ったんじゃないのか」
「え……」

心当たりが無い事を尋ねられると、どうして良いか分からなくなる。私は口籠った。勇気が不穏な空気を醸し出しているから、私は何となく逃げ出したい気持ちに駆られてしまう。

「凜は……門倉先輩が好きなのか?」

ん?んん?

「か、どくら先輩……を?私が?」

え?え?……えええ?!

「仁見が言った事、否定しなかっただろ」
「え?あれ、勇気……聞いてたの……?!」
「聞いてて悪かったな」

ムッツリと勇気は、機嫌悪そうに低い声でそう言い捨てた。

悪いとかそういう事じゃないけど。
何でそんなに機嫌が悪いのか。

イマイチ勇気の感情の通り道が―――理解できない私だった。

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