上 下
157 / 211
・番外編・お兄ちゃんは過保護【その後のお話】

14.幼馴染の態度 2

しおりを挟む
後日談を追加します。凛視点に戻ります。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


仲直りしてホッとしていたらそれどころじゃ無くなってしまった。



休み時間に宿題を忘れていた事に気が付いて、澪のノートを映していたら通りかかった勇気が「俺も見せて」と言って直ぐにノートを持って戻って来た。そりゃそうだろう、と思った。昨日は2人ともお母さんと一緒に配信映画で古いアクションムービーを見てしまったのだ。当然宿題の事はお互いすっかり忘れてしまっていた。

少林寺拳法をやっている主人公がサッカーで活躍すると言うトンデモ映画だ。3人でお腹を抱えて笑い転げて、勇気が帰った後お風呂に入ったら疲れ切ってぐっすりだった。



隣の席から椅子を借りて私と頭がくっ付くくらい近くで、勇気はノートを拡げて澪の宿題を写し始めた。家でならそれぐらいの距離、どうと言う事も無い。だけど小学校高学年あたりからこっち、男子と女子の距離が近いとコソコソ目くばせしたり、嫌な囃し立て方をする周りの声が気になってこういう事は人目のある場所では避けて来たのだ。

「勇気、ちょっと離れて」
「離れたら見えない。もうすぐ休み時間終わるし」
「……」

尤もな事を言われて黙ってしまう。

だけど後で気が付いた。そもそもこの宿題―――誰か他の人にノート借りれば済む話だよね?



中学校に入学して以来ずっと同じクラスだけど、これまで勇気が私に近寄って来る事なんて無かった。

なのに仲直り後、すっかり安心しきってのんびりしていた私に勇気がクラスの端っこから声を掛けて来て―――それから色々な事が変わってしまった。家でしかしない名前呼びで、暗黙の了解でおおやけにしていなかった放課後や休日の予定を、まるで皆に言い聞かせるような大声でバラされたのだ。咄嗟に返事をしたものの、小心な私の心臓はその後ドキドキと波打った。クラスの中心で笑っている人気者の勇気が、いつも端っこに隠れるようにして暮らしている私を舞台に引っ張り出してしまったように思えて落ち着かなくなった。

好奇の視線に最近私はグッタリしている。それなのに―――勇気は涼しい顔だ。

「終わったっと。鈴木、サンキュー」

勇気がパタンとノートを閉じて立ち上がり、澪に手を上げて礼を言った。澪は本を手にしたまま、コクリと頷いて見せる。あまりの早業に呆気に取られていると、頭をグリグリと撫でられた。

「おっせーな!休み時間終わっちまうぞ」

頭を押さえて睨みつけると、余裕の表情でニヤリとした勇気は自分の席へと戻っていく。奴は何やら中崎君に言われ肩を叩かれて、苦笑いしている。不意に何やら視線を感じて周りを見渡すと、サッと目を逸らす男子達や、薄く笑いながらこちらをチラチラ見てコソコソ話をしている女子達が目に入った。

人見知りを拗らせてしまった私は、注目されていたという事実だけで真っ青になる。



「凛、時間」



そこで澪の冷静な声音が、私の理性を引き戻した。

私は慌てて宿題の残りに取り掛かる。

今日帰ったら、勇気めタダじゃ置かないんだから……!フツフツと熱気をたぎらせながら、私はペンを走らせたのだった。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

自衛官、異世界に墜落する

フレカレディカ
ファンタジー
ある日、航空自衛隊特殊任務部隊所属の元陸上自衛隊特殊作戦部隊所属の『暁神楽(あかつきかぐら)』が、乗っていた輸送機にどこからか飛んできたミサイルが当たり墜落してしまった。だが、墜落した先は異世界だった!暁はそこから新しくできた仲間と共に生活していくこととなった・・・ 現代軍隊×異世界ファンタジー!!! ※この作品は、長年デスクワークの私が現役の頃の記憶をひねり、思い出して趣味で制作しております。至らない点などがございましたら、教えて頂ければ嬉しいです。

フツメンを選んだ筈ですが。

イセヤ レキ
恋愛
※R18作品、エロからスタートします、ご注意ください※ 私、戸枝キララは顔や見た目が派手なだけで「普通」をこよなく愛する女だ。 この度、理想的な「普通」である、大学時代から続く彼氏の山田良さんと無事にゴールインして、幸せな新婚生活が始まると思いきや、入籍後から彼の様子がおかしくて――? ※こちらの作品は、以前掲載した5千字程の短編を大幅に加筆修正した連載版となります。 出会い編→もだもだ片思いを楽しみたい方へ。 カップル編→もだもだABCを楽しみたい方へ。 純粋なハッピーエンドがお好きな方はここでストップが吉です。 新婚編→調教系エロしかありません。メリバ寄りになりますので、ご注意下さい。 ほのぼの/ダーク/女主人公/男目線あり/現代/日常/ヤンデレ/メリバ風味/中出し/らぶえっち/いちゃいちゃ/快楽堕ち/アナル/クンニ/溺愛/ヤンデレ/腹黒/囲い込み/言葉責め/R18/調教/大学生/社会人/結婚/新婚/強制フェラ/手錠/バイブ/自慰/緊縛

【R18】黒髪メガネのサラリーマンに監禁された話。

猫足
恋愛
ある日、大学の帰り道に誘拐された美琴は、そのまま犯人のマンションに監禁されてしまう。 「ずっと君を見てたんだ。君だけを愛してる」 一度コンビニで見かけただけの、端正な顔立ちの男。一見ストーカーとは無縁そうな彼は…狂っていた。

くすぐり(fm)短編集 不定期

nana
大衆娯楽
自作のくすぐり小説適当に載せます 2週間に1つくらい?不定期更新です。

処理中です...