理想の夫

ねがえり太郎

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番外編 春香(はるか)の場合

8.彼女の仕返し

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 クッキーを持参すると言う口実で彼の家を訪れる。その日、彼への募る思いを告白した。

 悠馬さんは私の気持ちを受け止めてくれ、優しく、そして熱に浮かされたように激しく抱いてくれたのだ。夢のようなその出来事以来、私達の関係は堰を切るように深まった。


 ひとたび決壊してしまえば。行き場を探していた私の気持ちは、とめどなく悠馬さんと言う湖に流れ込む。いびつに堰き止められていた人口湖に、この思いが逆流することはないだろう。それは本能と言うより、むしろ自然の理に近いと言える。川の水が、上流から下流へ下る事はあっても、遡らないのと同じだ。


 しかし導火線を火種がジリジリと進むように続くかと思われた関係は、ある時まるでにわか雨に襲われたようにその勢いを失速させた。夢が覚めるように、風前の灯となりつつある、私達の関係に焦燥感を掻き立てられる。

 悠馬さんが、私の遠回しな誘いを断るようになったのだ。子供達がいない時間に、私と会うことを避けるようになってしまった。


 いったい、悠馬さんに何があったのだろう?


 先ず頭に浮かんだのは、彼の妻だ。悠馬さんが自分以外の女と会っているのだと、彼女が嗅ぎつけたのではないか? しかし遠回しにそう、尋ねると―――否定された。


「彼女はいつも通り……とても頑張っているよ」


 悲し気に呟く、何気ない台詞。そこに揺るぎない信頼や情のようなものが漂っているような気がした。胸が、潰れそうになる。


 悠馬さんは、この関係を終わらせたいと考えているのではないか?

 その予感に、私は体を震わせた。


 傲慢な女へ思い知らせたい。その想いに駆り立てられ、悠馬さんとの関係に踏み出すことが出来た。

 ある意味、彼は私の復讐の道具と言えるのだろう。けれども私にとって、もちろん彼はそれ以上の存在だ。

 彼に抱かれて、女としての幸せを再び手に入れた。彼への憧れも恋心も、触れるほどに高まるばかり。逞しい体に包まれる悦び、肌と肌が触れ合う心地良さ。一旦手にしてしまったのなら―――もう、手放して生きてゆくことなど、考えられない。

 これは人として生きてゆく上で、本能が命じる使命みたいなものだ。動機は確かに夫への苛立ちや、彼の妻への断罪だった。けれどもそんなことが些細に感じるくらいに、悠馬さんの存在が私の中心になってしまった。


 彼は、優しい人だから。

 だから、あの傲慢な妻に対しても、罪悪感を覚えてしまうのよ。

 誠実な人だから。背徳感を楽しむより、犯した罪の大きさを憂いてしまう。

 でも、それが悠馬さんなのだ。私の夫のように、そこで居直ったりしないのが彼なのだ。そんな彼を好ましく感じた。だから―――そんな彼が迷ってしまうのは、ある意味必然のこと。

 それに今では確信している。彼の妻よりずっと、私の方が悠馬さんの苦しみに寄り添えるし、近い場所にいるのだと。


 そう自分に言い聞かせ、私は湧き上がろうとするある不安を、心の奥に押し込めた。


 悠馬さんは、あの『妻』を、未だに愛している。

 だけど、妻としての役割をあの妻は疎かにしていて。寂しさから、彼は私の誘惑に抗えなかった。だから熱病のような逢瀬を重ねた後、我に返ってしまったのかもしれない。つまり私の方を見てくれた、愛してくれたと感じたのは―――ただの気まぐれでしかなかったのだ。


 かつて私は、悠馬さんと関係することを彼の妻への、いや周囲への復讐だと考えていた。初めて自分の意志で、夫や両親を出し抜けたことに達成感すら感じていた。なのに実態は……結局、利用されただけだと、言うの? 悠馬さんも結局夫と一緒だった? 自分に都合の良い時に私を利用して、必要がなくなれば捨ててしまえば良いと……?


 違う、そんな筈ないじゃない!

 悠馬さんはそんな人じゃない。彼は優しい、優し過ぎる人なだけ。


 彼と私は同士だった。『社会で活躍しているから』『仕事があるから』と言う免罪符を掲げ、私達を虐げる夫や妻に対して、ともに反旗を翻した筈だ。二人が結ばれたその日、感じた爽快感は私だけのものではない。彼も確かに、その妻に対する溜飲を下げていた筈だ。その手ごたえを私は感じていた―――私たちはあの時、革命を起こした共犯者だった。


 私には、悠馬さんしかいない。

 私が温かい温もりと癒しを得られる対象は、彼しかいないのだ。

 そう。今更、この関係を無かったことにして。彼だけが何事も無かったように、自分の家庭を取り戻すなんて……そんな都合の良いことを、彼が考えているわけじゃない。


 そうよ。そんなワケないじゃない。ネガティブになるのは、止めよう。

 そんな彼に対して失礼な考えは、捨ててしまわなければ。


 彼は、私を救ってくれる騎士なの。

 後ろ向きに考えてしまっては、いけない。

 二人の物語は―――まだ始まったばかりだもの。










 息子の航太郎は、ますます夫に似てきている。

 さかしい所も口が上手い所も、人目を引く整った双眸も―――何もかもそっくりだ。航太郎の何処を探しても、私の要素はまるで見当たらない。夫一人の遺伝子で形作られたような幼い体を目にする度、私は苛立ちを抑えきれない。

 しかし、その苛立ちを航太郎に直接ぶつけることはしなかった。万が一にでも、体に傷を付けたりしたら。息子を目に入れても痛くないほど可愛がっている義母に、見つかってしまう。そうなったら大変だ。


 航太郎の習い事は、全て義母の指示に沿っている。私が口を出す余地なんてこれっぽっちも残っていない。義母は航太郎を、完璧な跡継ぎに仕立てたいと考えているらしい。……彼女が育てた、私の夫のように。


 ほどなく、家政婦から義母へ情報が漏れていることに気が付いた。ある時義母から、航太郎への態度を咎められたのだ。その場に居たのは、家政婦の吉井だけだったはず……。

 私は松島の後任に、夫に親し気にしない、見栄えもそれほどよくない、少し年嵩の女性を選んだ。けれども元々その派遣事務所は、夫が手配したのだ。義母の思惑が入り込んでもおかしくはないのだと、漸く悟った。


 私は、家政婦の出入を減らすことを検討した。

 食事はなるべく纏めて、作り置きして貰うように変更する。『食事くらい自分で用意したい』『あなたの帰宅予定が見えないので、融通の利く形に変更したい』と、主張した。掃除に関しては、週に二度、大手清掃会社のサービスを利用することにした。幼稚園の付き合いでどうしてもママ友の勧めを断れないのだと言い張ったのだ。

 夫はどちらも特に異論をはさまず、速やかに対応した。こういう時はビジネスライクな夫婦関係も、悪くないと思う。もし私が直接義母に何かを提案したら、きっと最初から聞き入れては貰えないだろう。


 夫に対して、私が自分の思いをぶつけることはもうない。

 私が何を言っても、精一杯傷つけようとしても、彼には小さな刺の一つも残せないのだと理解したからだ。


 しかしその押し込めた憤懣が、彼にソックリな航太郎を見るたびに溢れだしてしまう。体に傷をつけることは出来ないから―――かわりに、言葉に刺が籠るのは仕方がない。


 夫を小型化したような航太郎。賢いとは言っても、たかが幼児だ。幼い彼は私が放つ刺に傷つき、時には愕然とし、時には慌てる。うっすら涙ぐむのを目にすると―――スッと胸のつかえがおりるのを感じる。どうしても落ち度を見つけられない時は、褒め殺しのような言葉で貶めたりもした。


 けれども悠馬さんが現れてからは、そんなどす黒い気持ちが湧いて来ることも少なくなった。けれども最近は……悠馬さんに避けられるたびに、航太郎の存在が煩わしてくて仕方なくなる。


 航太郎は、義母がかつて神童だったと自慢する夫と同様に、いやそれ以上に頭が良いらしい。


 なるほどそうかもしれない、と納得することもある。ふとした言葉が、生意気なのだ。図星をつくような言葉を吐くことがある。何も分かっていないくせに、と返って腹立たしさが増すばかりだが。

 そうだ、こんなこともあった。驚くことに航太郎は、同じことを二度としないようにと、メモをとっていたのだ。子供用の自由帳に、私が注意した言葉が綴られていたのを見つけた。地雷を踏まないように、チェックリストでも作っているつもりなのだろうか。幼いなりに、ひらがなで綴られたその字を見つけた時―――私はこう思った。


 子供の癖に。


 それを目にして、私はますます苛立った。

 賢いようで、やっぱり子供だ。航太郎は全然、分かっていない。


 チェックリストを作ろうが、失敗を繰り替えさないように気を付けようが同じことだ。


 私は彼の行動を叱っているのではない。

 夫が憎くて、夫にソックリな彼のやる事なす事腹が立つので……こき下ろしているだけだ。

 そんな単純な事も、わからないのか。


 腹立たしさが、昔の記憶を呼び覚ます。新生児の頃、泣き声で私を責め立てていた航太郎を思い出した。

 この子はあの頃からずっと、変わらない。その存在自体で、私を攻め続けるのだ。だから私は、苛立たずにはいられないのかも、しれない。湧き上がる憎しみを、止めることはできないのは誰の所為?

 いっそ航太郎がもっと愚鈍なら。見た目も粗末だったなら。夫に全く似てなければ……少しは私も優しくなれたかもしれない。本当は私だって『良い母親』でいられれば、『優しい母親』でいられればどんなに良かっただろう、と思う事がある。


 だけど―――悠馬さんがいる場所では。

 悠馬さんの視線がありさえすれば、私は航太郎に優しくなれる。彼の目の前では、私は自然に『良い母親』になれるのだ。夫の小さな再現でしかなかった航太郎が、今では悠馬さんと私を繋ぐ大事な存在になりつつあった。


 私だって……いつもいつも、怒っていたくはない。優しい、良いお母さんで、すばらしい夫の素敵な妻になりたかった。


 私が『良い私』でいられるのは、悠馬さんがいる場所だ。私には……悠馬さんが必要なのだ。だから悠馬さん、私に飽きないで……! 私の手を、離さないで……!







 私が必死になればなるほど、悠馬さんの心は離れて行った。

 この頃は二人切りになるのを、あからさまに避けようとする。


 ハッキリ言わないと、分かって貰えないのだろうか?……と、悠馬さん不足で落ち着かない心を抑えきれず、悩んだ末に強引に迫ろうとしたことがある。すると触れようとした手を躱されてしまった。

 目の前でキッパリ拒絶された事実が悲しくて、私は思わず泣きだしてしまった。すると悠馬さんは困った顔をして。だからだろうか? 次に誘った時は躊躇いならがも、応じてくれたのだ。


 やっぱり彼は、優しい騎士様だ。

 この時私は学習した。同情が男性に対する餌になることを。思えば、二人の距離が近づいた切っ掛けも、同情だったのかもしれない。可哀想な夫に虐げられている私を、彼はその手で慰めようとしてくれたのだろう。


 だから誘いになかなか乗ってくれない悠馬さんに、また泣き落としを仕掛けた。

 女の為に夫が用意したプレゼント。その証拠を手にした私は、再び彼に泣きついたのだ。


 本当はもう、夫の浮気相手なんてどうでも良かった。だって、私は身も心も悠馬さんのものなのだから。夫と触れ合うなんて、汚らわしいとしか思えない。だから今では浮気相手に感謝の気持ちを抱くことすら、ある。

 だから、クリーニング店の店員が見つけてくれたメモが、幸せの切符のように輝いて見えた。

 やった!これで、悠馬さんに泣きつく口実ができる!

 ちょうど良いことに、私の誕生日が近かった。


 悠馬さんの妻の会社の近くのホテルを指名して、利用したいと強請る。

 しかし彼は、頑なにそれを拒んだ。

 君は知らないかもしれないけれど、そこは妻の会社の近くなんだ。違う場所でも良いかな……と。


 私は内心、舌打ちする。

 ばれれば関係が終わるかもしれない、という事は都合よく頭から消え去っていたのだ。


 彼女に彼は私のものなのだと、見せつけたい。いっそ見せつけた結果、悠馬さんが彼女から怒りを買い、離婚の切っ掛けになっても良いとすら思う。そうすれば、かつて妄想した私と悠馬さんの新しい生活が始まるかもしれないから。


 世間から後ろ指を指されるかもしれない。それでも良い。悠馬さんが居れば、私は耐えられる。彼が働き、私が家を守る。理想の家庭だ。愛があって、幸せな家庭が今度こそ手に入る。

 航太郎は夫の一人息子だから、当然置いていけと言われるだろう。名前からして、検討する余地も無く、彼の母親が決めてしまった。息子なのに、母親の私には決定権すらない。航太郎は私の息子では無く―――あの家の跡継ぎ、なのだ。

 そう、私も夫にそっくりな息子など連れて行きたくない。悠馬さんは優しいから、例え航太郎が一緒でも温かく迎えてはくれるだろう。だけど、私は新しい家族で新しいスタートを切りたい。嫌な記憶は、そこには持ち込みたくないと考えている。


 しかし私達の関係を知っても、悠馬さんの妻は、あるいは離婚を選択しないかもしれない。けれども二人の夫婦仲に決定的な亀裂をつけられれば、言う事無い。そうすれば、今の関係を続けられるだろうから。

 妻から失望され、落ち込む悠馬さん。彼を理解せず切り捨てる冷たい傲慢な女には、いずれ悠馬さんも見切りをつけるだろう。その間、私はそっと彼に寄りそう。慰める私にいつか悠馬さんは依存する。結婚は結婚、恋愛と切り離して考えるのも、悪くはないと―――やがて彼も分かってくれるはず。公に手に入らなくとも、悠馬さんの心が手に入るなら良い。ひっそりと息を顰めつつ育む愛情だって、悪くないと思う。




 そんな私の目論見は、意外にも最高の形で実現した。

 居る筈の無い場所に、私達が選んだホテルのエントランスに悠馬さんの妻が現れたのだ。明らかに部屋を出て来たばかりの私達を見つけた彼女の目が、一瞬驚きに見開かれる。

 悠馬さんの妻の顔をはっきり正面から見るのは初めての事だった。


 あか抜けたスタイル、整った眉の気取った女がそこにいた。

 その唖然とした顔を目にして―――ゾクゾクと背筋が震えた。

 ああ、楽しくてしょうがない。


 好きな事をして世間を渡っていけてる気になっている、鼻持ちならない女に一泡吹かせてやったのだ。私のように、夫やその浮気相手に抑圧され、好きでも無い男の子供の世話に明け暮れる平凡な主婦に夫を寝取られる。それはさぞ、プライドが傷つくことでしょうね?


 私はこれ以上できないと言う、最高の笑顔で自己紹介をする。

 息子がいつもお世話になっています。満ちゃんと仲良くしていただいて……!


 しかし明らかにフロントからチェックアウトしてきた所を見ている筈なのに、彼女はその事に何も触れなかった。泣きわめきもしない、詰りもしない。堪えた涙を恨みがましい目で零す事も無い。


―――なんだか、詰まらなくなった。


 もっと、悔しがって欲しかった。

 彼女が見下している、夫の言いなりにならなくちゃ生きてはいけない専業主婦に、信頼している夫を寝取られて。悔しさにギリギリ歯を噛みしめて、その美しい涼しげな顔を歪めて汚く罵るくらいして欲しかった。そしたら……言ってやれたのに。


 夫を蔑にして、好きな事やっているあなたが言えることですか? 彼を満足させてもいない、大事にされて尽くされても褒めようともしない。そんなあなたが、今更何をおっしゃるの?


 そうやって、断罪してやりたかったのに。


 悠馬さんは、本当に目を瞠るほど動揺していた。

 そして、逃げるように。子供のお迎えがあるからといって、その場から飛び出して行った。

 私を紹介してくれないから、私は自分で自己紹介をするしか無かったのだ。


 騎士様のそんな一面を目にして、少し残念に思う。


 だけどまあ、仕方ない。

 修羅場に慌てて取り乱すくらいは、私は広い心で見守ろうと思う。私だってもう夢見る少女ではない。大人の女なのだ。そのような些細なことは許してあげなければ。これからずっと、二人の関係は続いて行くのだから。
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