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第2章『ラクテリア王国進展編』

第15話『ファミリーレストラン・ビジョン開店⑮おもちゃ屋繁盛記』

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 遊具販売店『おもちゃ屋』は数日で大繁盛となった。

 元々この世界になかった店なので目新しさもあって冷やかしで入るのが多かったのだが、値段の安さと言うのもあってついでに買っていくという感じだったのが、あっという間に噂が広がり大繁盛することになった。

 店を開くに伴って増やした遊具は『トランプ』や『ボードゲーム』に『ジェンガ』。
 また、遊技場にはテーブルゲーム用の円卓を10箇所設置、またここでだけ遊べる『ビリアード』と『ダーツ』を設置すると入り浸る客が増えた。
 タダではないのに人気が出たのは正直驚いた。

 まあ、飲料にお酒を追加したうえ、お摘みメニューも豊富に揃えたのが原因だろう。

 当初は普通に遊ぶ場だったのだが、人の欲と言う業は深い。
 ゲーム=賭けという図式は切っても切れないらしい。

 将棋やチェスは格式が高いせいで、ボードゲームやジェンガは子供向きということもあって『そういう』見られ方はないが、ほかの遊具は金銭を賭ける対象になるのは容易だった。

 中で気軽にできるトランプを使った『ポーカー』や『ブラックジャック』は大人気になり、仕事休みの冒険者たちが朝早くから夜遅くまで行じるほどであった。
 それに伴い、策として『場所代』を取るようにした。1テーブルを2時間で銀貨1枚、1日貸し切りで銀貨5枚。
 店の営業が午前9時から夜12時までなので1日貸し切りは人数で割り勘すれば充分に安いといえるだろう。

 ……しかし、圧倒的男性率。しかも、ほとんど賭け場に占領されている。
 そこで、新たな遊戯場を増設することになった。思い切って2階フロア全体を賭けの対象にならない遊具全般の遊び場にしたのだ。
 天井部分を広くしたので開放感があり、また壁部分も木造の格子戸にしたので開ければ景色360度景色が見放題になっている。
 ただし、2階の開放時間は朝8時から午後5時までであるが。

 また、定期的にイベント大会を開きランキングを作成。しかも、上位5位までは景品が与えられるのだ。
 盛り上がらないわけがない。

「スバル殿。すまないが顔を貸してくれませんか?」
「どうかしましたか?」
「実は、ある貴族から高級チェス盤と駒の依頼がありまして……」
「注文なら普通に受け付けますが?」
「それが、特別製の物が欲しいとのことで……」
「分かりました。お話を伺いに行きましょう」
「無理を言って申し訳ない」

 そういえば、直に貴族と会うのは初めてだな。
 何かお土産があった方がいいかな?

 しかし、そろそろ……とは思っていたが、『どっち』が引っかかったのやら……。
 できれば、『善人』の方であってくれればいいんだけど……。

 呼び出しの連絡が改めてきたのは3日後だった。

「しかし、副ギルマスのロアンさんだけですか?ホムラは?」
「さすがにギルドをほったらかしにできませんからね。それに、その人は人によって口調を変えられるような器用な方ではありませんからね」
「納得です」
「それで、その荷物は?」
「お土産の品です。あった方が良いかと思いまして」
「スバル殿も抜け目がありませんね」
「まあ、このくらいは常識の範囲内ですよ」

 まあ、これから先お世話になるかもしれないしな。

 馬車に乗り走ること2時間。
 貴族街の中でも爵位持ちが住むエリアは1軒1軒の敷地が広い。
 俺たちが向かったのはその1つ、ルーファス伯爵家である。

「敷地内にどれだけ建物があるんですか?」
「確か、6つだったかと……」

 門をくぐり走ること15分。
 正面の建物は見えるが、長い庭園で着くまで馬車で15分もかかった。
 どんだけ広いんだ?

「お待ちしておりました。私、ルーファス伯爵に仕える執事長のベルモンドと申します」
「商会ギルドの副ギルドマスター、ロアンです。こちらが……」
「お初にお目にかかります。今日はお招きありがと言うございます。スバル・クジョーと申します」
「これはご丁寧な挨拶を。では、我らの主人のところにご案内しましょう」
「お願いします」

 屋敷の中に入り、ベルモンドさんの後に続く。
 しかし、すぐに裏口から出て後ろに見えるもう1つの屋敷に入る。
 手前の立派な屋敷と違い、どう見てもランクが落ちる造りの屋敷だ。
 いわゆる別館と言うやつに見える。

 なるほど、良い目くらましというわけか。
 それにしてもあんな立派な屋敷を罠に使うとはな。
 金持ちってのは凄いな。

「旦那様、客人をお連れいたしました」
「ベルモンド、ご苦労様。飲み物の用意を頼む」
「申し付かりました」

 椅子に座り、机の上の書類に目を通している背広姿の男性がいる。
 金色短髪のイケメンだ。無駄にキラキラしている。

「お待たせしてすまないね。今回の件で色々と忙しくてね」
「ルーファス伯爵は今回のイザミナ大森林の集落討伐の報奨金を出してくれたんですよ。それに、回収したオーク肉や素材の買取にも積極的協力してくれましてね」
「なに、冒険者あっての城塞都市。この程度のことは協力と言うほどでもありません」

 どうやら思った以上に人格者のようだな。
 貴族とかって偉そうに踏ん反り返っているイメージだったが、ここまで腰の低いというのも珍しいじゃないだろうか?

「まずは座っていただいてゆっくり話をしましょうか」
「恐縮です」

 俺とロアンはルーファス伯爵に薦められて、ソファに座る。

「では、先につまらない話を片付けてしまいましょう」
「と言いますと?」
「オークキングのことだね。なんでも人の言葉を喋る個体だったとか?」
「はい。片言ですが喋っていました」
「そうなるとやはり今回の件はおかしいね」
「ですね」
「お二人とも、どういう事ですか?」
「人の言葉を喋る魔物ということはそれなりに知能が高いことは分かりますね?」
「だからこそ、あれほどの規模の集落をまとめられたのでしょう?」
「いえ、逆に違和感だらけですよ」
「どういう事です?」
「ゴブリンやオークが女性を攫う理由は何ですか?」
「それは、種族の繁栄ではないかと?」
「ですよね?なのに攫った女性たちはほとんど手が出されていません。特に小さい集落の女性たちは1人として襲われていない」
「それは、オークキングの命令で……」
「それこそ、矛盾だと思いませんか?」
「どういう事です?伯爵」
「彼らの目的が種族の繁栄であるなら、オークキングだけが女性を孕ませるというのは理に適っていません」
「しかも、大集落にいた女性たちの数に対して、オークキングが手を出したのは十数人だけ。集落が出来た時期を考えても少なすぎる。ということはつまり……」
「喋るオークキングは何者かが作ったと考えるのが妥当でしょうね」
「そ、それでは……」

 そう。
 今回のイザミナ大森林のオークキングの集落の事件の裏側には黒幕の存在がある。
 しかもそれは――。

「貴族……それも爵位持ちが絡んでいることは明白でしょう」
「まさか……いや、確かに喋るオークキングなどそれ相応の術者や資金力がなければ作れる代物ではありませんね」
「多分、ゴブリンやオークに女性を攫わせたのも莫大な利益を得るためだろうな。ただそれはお金が欲しいという単純な理由じゃない。その資金を使ってもっと悪どいことを考えているんじゃないのかな?」
「でしょうね。そしてそれは王国への反逆……転覆を狙っているのでしょう」
「ま、まさか――」
「まあ、国の運営が全部同じ意見で統一なんてそれこそ怖いことは無いしね。ただそれでも、力づくってのはいただけないけどな」

 政治の世界は正直に言って関わりたくないが、今回の場合は『彼女たちの件』もあるので放っておくわけにもいかない。
 これは俺の世界で言うところの『テロリスト』と同じだ。
 自分たちの目的のために標的に向かって行く分には文句は言わない。
 だが、関係のない一般人を巻き込むのなら俺は許さない。

「今回の件、キッチリ終わらせないとな」
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