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第1章『開店営業編』

第6話『マジックバックと設置』

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「え?アイテムボックス持ちを確保できなかった?」

 開店3日目。クリスの言葉に困惑を隠せない俺だった。
 魔導冷蔵庫の設置という大仕事があるのにそれを持ち運ぶ手段であるアイテムボックス持ちがいないと言うのは大問題である。
 俺は発注機を起動させて何か良い方法はないものかと思案する。

「…お。これは……」

 発注機で見つけたのは『魔法袋マジックバック』と言うものだった。

「これ…使えるぞ」

 種類もかなりある。しかし、使うポイントがどれも高くマジックバック(小)で10万ポイントを必要とするのには少しばかり躊躇してしまう。
 マジックパックは手提げバックや腰に付けるポーチタイプ、背中に背負うナップサックやリュックサックなどがあり、その上、バックの内容量も『小・中・大・特大・極大』の5種類もあるので選ぶのが大変である。
 金額のことも考慮し、俺が選んだのは手提げタイプ(大)だった。値段も1000万ポイントと手頃なので購入する。
 2億ポイント以上あるので1000万ポイントくらいではビクともしないしね。

 俺は注文書を見て魔導冷蔵庫をマジックバックにしまっていく。しまうと考えるだけでマジックバックの中に入れられるのは便利だな。
 用意はできた。俺はクリスに頼んで家々を回ることになった。


 ◆◆◇◆◆◇◆◆


 午前中、町中を周りまくって注文先で魔導冷蔵庫を設置し、お昼になったところで一旦お店に戻った。

「さあ、昼食にしますか」

 店頭のブースに休憩中の札を立てて食堂に集まる。
 いつもの様に総菜の項目から各種のおにぎりを発注し、カップ麺を用意する。
 ついでに、サラダも用意して栄養バランスも整える。

「それでは、いただきます」
「「いただきます!!」」
「「い…いただきます」」

 俺やナフィたちの挨拶に子どもたちも合わせるように言ってくれて昼食が始まる。

「美味しいー!」
「うめぇ、うめぇ!」
「おいひー」
「うまいの―」
「この濃い味付けがたまらないよな」
「カップ麺、最高ー!」

 子供たちは食事を食べて大騒ぎだ。
 俺たち大人はその姿を見て微笑ましく思うのだった。

「しかし孤児たちを雇うとは考えたね」
「慣れてきたら店頭販売を辞めて店内販売に切り替えるつもりだよ」
「贅沢を言えば大人の雇用も欲しいところですね」
「ナフィ、それは一朝一夕にはいかない問題だろう」
「ジョルジュの言うとおりですよ。まずはこの町の名が売れて人が集まらないと難しいでしょうね」
「ネリアの判断が正しいわね。まずは町の基盤固めが先よ」
「確かにビアンカの言うとおり、住人が増えないことには町の発展は無いわね。あーあ、何処かにダンジョンでも出来てくれないかしら」
「そんな都合のいい話は無いですよ……」
「そうよねー……」

 この町は比較的…と言うか、本当に平穏な町だ。
 町の外のフィールドもダンジョンも初心者向けの最弱モンスターばかりだし、採取できる素材なども低級の物ばかりとくれば、旨味の無い場所には冒険者は集まらないわけで…。
 そこで、別の物・・・を売りにしようとクリスは考えた。それが、俺の店だと言うのだが……。
 正直、俺の店だけじゃ町の発展なんてなー……。もっとインパクトのある観光名所でもないと……。

「まあ、考えることは多いけど今は店の運営の方が先決だね」
「そう言うことだな」

 昼食を終えた後はいつも通りに営業を再開する。
 俺はまずは発注機で商品のお取り寄せ&倉庫にしまう作業から。子供たちは連携で補充作業をしている。
 ナフィたちにレジを頼み、俺は一度寮部屋の方に移動した。

「初日にチラッと確認した程度だったけど、綺麗なもんだ…」

 塵1つ無い新品のような部屋。無論、何も無いので必要な家具は必要な状態だ。
 早速、最低限の家具をお取り寄せして行く。
 タンスと机に椅子にカーテン。二段ベッドに寝具を取り揃える。
 これを9部屋同じようにメイキングする。

 ついでに食堂についている大型テレビをPCと配線を繋ぐ。これでいつでも動画を見られる。
 ついでにDVDもお取り寄せする。

「さて…と、午後の配達作業をしに行きますか……」

 発注機を魔法袋マジックバックにしまい、魔導冷蔵庫の設置に出かけるのだった。

「しかし、魔法袋マジックバックまで持っているとはね。いくらくらいするんだ?」
「小さい容量ので金貨10枚くらいから大きいので1万枚くらいですね」
「まあ、妥当な金額だね。一度品物を確認させてもらえないかい?」
「いいですよ。仕事が終わったら夕食後にでもどうですか?」
「分かったわ」

 魔導冷蔵庫を各家庭に設置し、気づけば買ってくれた全ての家に置くことが出来た。
 魔法袋マジックバック様様である。

「まさか、たった1日で魔導冷蔵庫を設置できちゃうなんて…」
「まあ、住んでる家々はみんな近所だからってのもあったけどね」

 農家は密集して建ててあり、農地は別場所にあり広大に広がっている。町の中心はまばらに建物はあるもののほとんどが無人である。
 やることは山済みだが、今はどうにもならないので一旦は棚上げ状態にするしかない。

「さあ、帰って夕食の用意と行こう」
「その言葉には賛成だ」

 クリスと店に帰る。
 店に着いたときには日が暮れ始めていた。

「「お帰りなさい」」
「ただいま」
「戻ったわよ~」

 店のみんなが笑顔で迎えてくれる。
 どうやら今日も充分に売れたらしい。
 さて…今日の夕飯はどうするかな……。
 人数が人数だし…久しぶりに手作りといきますか……。

「よし。カレーを作ろう」

 やっぱ大人数ならカレーが1番だろう。
 と言うことで材料をお取り寄せする。
 俺の家では人参・じゃがいも・玉ねぎ・ぶなしめじに肉は豚肉と鶏肉の2種類を入れる。
 さらにカレールーは市販の物を3種類使うのが俺の家では定番である。
 …まあ、今回は子供いるし甘口にしてみるか。
 後は包丁にまな板にスライサーに寸胴鍋やフライパンなど調理用具もお取り寄せする。

「よし、アミリアに子供たちのみんな手伝ってくれ」
「はい」
「「は~い」」

 子供たちに野菜の皮むきを頼む。
 お手本としてスライサーで皮むきをして見せると子供たちは楽しそうに皮むきを始めた。
 俺はまずご飯と炊き、肉を一口サイズに切り分けておき、次に玉ねぎを微塵切りにしてフライパンで半分だけ飴色になる間で弱火でじっくりと炒めていく。
 炒め終わった玉ねぎは一旦皿に移し、次に皮をむいた野菜とキノコをフライパンで炒めて火を通したら水を入れた寸胴鍋に移して火を入れる。
 野菜を煮込んでいる間に三度フライパンで肉を炒める。
 余分な油抜きをしたら煮立った鍋に肉を投入して、ひと煮立ちさせたら玉ねぎを入れて更に煮る。
 最後にカレールーを入れてそこが焦げ付かないようにかき混ぜながらルーが解けきったら出来上がりだ。
 サラダなどの副菜は総菜項目からお取り寄せする。福神漬けも忘れずに。

 お取り寄せで深皿を用意し、盛ったご飯にカレールーをかける。

「良い匂い!」
「早く食べた~い」
「待て待て。ちゃんと全員分を運んでからだぞ」
「「はーい!」」

 カレーライスの皿を並べ副菜を置き、スプーンを並べる。
 コップに水を注ぎ、大人には冷えたビールを用意した。

「さあ、いただこう。いただきます」
「「いただきます!!」」

 全員の挨拶が響き、一斉にカレーを口に運ぶ。
 全員から次に聞こえたのは「辛い!でも美味い!」の言葉だった。
 結果から言えば業務用の寸胴鍋一杯のカレーは全部食べ尽されたという事実だった。
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