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第ニ章 もう一人のヒーロー。

29 夢を見る手前 ※

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 ルーツ様が達す時は一生懸命に口内を舌で愛撫しなければいけない。それが暗黙のルールとなりつつある。必ず外には出さない。中でしっかりと受け止める必要がある……。

「はーっ、はーっ、はーっ……んっ」

 呼吸を整えなければまともに話すことすらままならない。けれどもルーツは容赦なく自分の思うがままに口を塞いできた。
 舌が重なり合い、弄ると下の方が私の中でどんどん硬くなっていくような気がする。
 これ、は、イく、イっちゃう、私、も無理……!!

「ん~~っっ!!」

 涙と声が溢れ、膣内なかで小刻みに波うつのを感じた。
 
***

「はぁ……はぁ……」

 汗と蜜で体中ベトベト……。抱き合ってシャワーを浴び、ベッドはもう一つあったので新品の方へと移動した。ルーツ様にやり方を教えてもらい、初めて髪をタオルで巻いてみた。初めての事を覚えてウキウキした気分になりながら、私はベッドに座り込む。

 ルーツ様、ルーツ様……。

 まだ、ウトウトしている気がする。
 何だろうこの感覚……。治まらない。

「まだ治らないんだ?」

 そう冷めた声で隣に座り呟くルーツ様。

「ルーツ様……、さっきからずっとウトウトするんです」
「うん。君から蜜を貰ったせいか、呪いの効力が伸びている気がする」
「効力?」
「今、君がかかってる呪いのね」
「の……呪い?」
「これじゃあ、ますます兄さんには返したくないな……」
「兄さん?」
「……ううん、こっちの話」

 一方的に、ぶつぶつと呟いているルーツ様。なんの話だか、分かるようで分からない。するとルーツ様は私に近寄ってきて、私が後ろに手をつけるとその上から手を重ねてきた。
 まるで、今にでも押し倒されそうな状況。

「ルーツ、様……?」
 
 平然とした表情が一度の瞬きで、まるで気分が晴れないような、なんとなく苦しそうな表情に変わった。そしてどことなく、何かを後ろめたいのか私と目を合わせずにいる。

「どうしたんですか?」
「わっ……!」

 ルーツ様の首に腕を回すと、ルーツ様は私の重さに耐えきれなくなったのか体勢が崩れそうになる。でもそれは私にとっては計算通りの事で、立ち位置を逆転するようにルーツ様を押し倒し、抱きしめた。

「ルーツ様、……大好きです。ルーツ様にお会い出来て、本当に嬉しい」
「……キラさん……」

 鼓動が激しく波打つ。なかなか治まらず、ルーツ様の胸の中に顔を埋めると少しは楽になる。ルーツ様の胸に耳を当ててみると、彼の加速した鼓動が聞こえてくるような気がした。

「……あれ、緊張してます?」
「! いや……」

 切羽詰まったような声に違和感を覚えながらも、もしかしたらルーツ様も同じ気持ちなのではないかと期待している自分がいる。
 すると、ルーツ様も腰に腕を回してきてくれて……。

「もう少しだけ、夢見させて」

 その言葉を残し、ルーツ様は目を閉じて、眠りに落ちたみたいだった。 
 私もルーツ様につられて、ルーツ様に包まれながら意識が遠のいた……。


***






「ん……」

 窓から日差しが掛かる。虚ろな目を無理矢理起こすように開くと、そこにはルーツがぐっすりと眠っている姿が映った。
 なっ……!! なんで……?? まるで子供のような、よくよく見るとどこか可愛げのある表情をしている。
 私を抱き枕とでも勘違いしてるんじゃないかな……?? もしくは、ぬいぐるみ?
 
 あ…………、そうだ。

 私はここで全てを思い出した。

 また、またしても! 呪われて彼の思うがままに操られた……!! もうどうしたらいいの? どうやったら呪いから逃れられるの? 私はやりたくてやったわけじゃない。でも、まるで私の意のように身も心も勝手に動き出して。最終的には私、ルーツの事「大好きです」とか言ってなかった……!?
 
 
 



「あ……ああっ……」

 思わず叫びそうになったところを急に頭の中で天秤が浮かび上がり、昨日の失態とルーツの寝顔が天秤にかかる。すると……ギリギリ、ルーツの寝顔が私の失態よりも重く勝ち上がってしまった。

 うう。起こしたら、ちょっと可哀想……。
 
 そして、昨日のかな? 石鹸の甘い香りが残っている気がして、鼻をくすぐられている気がする。
 良い匂い……。

 っは……! ルーツを起こさないように退けばいいものの、私とした事が思わず添い寝を続けようとしてしまった。

 そっと……そぉーっと……。

「んんっ……」

 温もりから離れようとしたところ、勘付いたのかルーツが声を漏らし、ぎゅっと抱き寄せてくる。

「ひゃっ……!」

 再び心地よい温もりが戻ってきたけれど複雑な気持ちに陥った。
 ね、寝てるんだよ、ね?




 ずずっ……。

 今、寝息と共に、鼻を啜るような音がした気が……?

 様子を伺おうと顔を上げると、ルーツはぐっすりと気持ち良さそうに目を閉じていた。

 ………………。

 なんだか、今、この時間が平和に感じてる。
 操られることもなく、侮辱されることもなく……。
 これがずっと続けばいいのになぁと思う。

「ん……ん?」
「あっ、ルーツ様! ちがっ、ルーツ……起きました?」
 
 ぽやぽやとした寝起きの、未だ半分以上は寝ていそうな様子。瞼を擦り、力が抜けて隙ができたところで、私は起き上がりベッドから離れた。
 ああ、私とした事が……。髪にタオルを巻いたままだったとはいえ、勿論崩れてるしグチャグチャだ。
 服もはだけて色々見えちゃってるし。もう!

「ルーツ……今日は、あの門を開けるんですよね。私、心配ですが自分を信じてやり遂げてみせます」

 まるで独り言のようにポツリと呟いたけど、ルーツは何も反応をしなかった。私は敢えてルーツに背中を向けているので様子が分からない。

「ちょっと心細いですけど、ルーツがいれば……大丈夫です、よね?」

 …………無視。
 また寝ちゃったかな。

「ルーツ? ねえ、ルーツ……」
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