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観戦デート
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次の日の朝。俺達は郊外にある競技場へ来ていた。ここで、有名な騎士の試合が観れるらしい‥‥‥。フェイ殿下は剣の試合をよく見に来るらしく、顔なじみの人達に挨拶をしていた。
フェイ殿下が知り合いから譲ってもらったというチケットの席は、最前列のど真ん中だった。2人とも変装はしているが、お忍びで観に来ているという事は、周りの様子から察するに、どうやらバレてしまっているようだ。
決勝戦が始まると会場は熱気に包まれ、観客達の視線は試合会場に釘づけになっていた。その頃になると、もう誰も俺達のことは見ていなかった。
「フェイ殿下、どちらが勝つと思いますか?」
「それは、やはりエリスンでしょう。彼とは一度、闘ったことがありますが、かなり強いです。『奇跡的な強さ』と言っても、過言ではありません」
「奇跡‥‥‥。魔術師と闘って、対等に渡りあったという事でしょうか? それは、かなりの強さですね」
「いえ、彼も‥‥‥。少しなら魔術を戦闘中に使ってきますよ」
俺達が話をしていると、その『エリスン』が、競技場の地面へ尻もちをついていた。
「え?」
一瞬の出来事だった。相手の選手が剣を繰り出してきた瞬間、エリスン選手は防御結界を張っていた。その結界の波動で彼が手放した木剣が、こちらへ向かってきてしまっていた。
考えるより前に身体が動いていた。俺はフェイ殿下の前に立ちあがると、向かってくる木剣に背を向けて、フェイ殿下を抱きしめた。
「いてぇ!!」
木剣は背中を貫いたんじゃないかと思うくらいの衝撃で、俺の背中に当たって床に転がり落ちた。背骨が折れたんじゃないかと思いながら、背中に手を当ててみると、手には血がついていた。
「血‥‥‥。ムリ」
血を見るのが苦手だった俺は、痛さと衝撃が重なったこともあり、その場で意識を失ってしまったのだった。
フェイ殿下が知り合いから譲ってもらったというチケットの席は、最前列のど真ん中だった。2人とも変装はしているが、お忍びで観に来ているという事は、周りの様子から察するに、どうやらバレてしまっているようだ。
決勝戦が始まると会場は熱気に包まれ、観客達の視線は試合会場に釘づけになっていた。その頃になると、もう誰も俺達のことは見ていなかった。
「フェイ殿下、どちらが勝つと思いますか?」
「それは、やはりエリスンでしょう。彼とは一度、闘ったことがありますが、かなり強いです。『奇跡的な強さ』と言っても、過言ではありません」
「奇跡‥‥‥。魔術師と闘って、対等に渡りあったという事でしょうか? それは、かなりの強さですね」
「いえ、彼も‥‥‥。少しなら魔術を戦闘中に使ってきますよ」
俺達が話をしていると、その『エリスン』が、競技場の地面へ尻もちをついていた。
「え?」
一瞬の出来事だった。相手の選手が剣を繰り出してきた瞬間、エリスン選手は防御結界を張っていた。その結界の波動で彼が手放した木剣が、こちらへ向かってきてしまっていた。
考えるより前に身体が動いていた。俺はフェイ殿下の前に立ちあがると、向かってくる木剣に背を向けて、フェイ殿下を抱きしめた。
「いてぇ!!」
木剣は背中を貫いたんじゃないかと思うくらいの衝撃で、俺の背中に当たって床に転がり落ちた。背骨が折れたんじゃないかと思いながら、背中に手を当ててみると、手には血がついていた。
「血‥‥‥。ムリ」
血を見るのが苦手だった俺は、痛さと衝撃が重なったこともあり、その場で意識を失ってしまったのだった。
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