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カトリーナの旅立ち 1
しおりを挟むあっというまに冬は過ぎ、今日は教皇様からのお迎えが来る日だ。
カトリーナは久しぶりにポーラに乗って町へ向かっている。
「もうすぐ学校が始まるのになぁ」
カトリーナはパパの腕の中でふぅっとため息をついた。
カトリーナが首都へ旅している間に、3年目、市民学校最後の年が始まるのだ。
カトリーナはそれがつまらない。
「すぐ帰って来られるよ。それにヒューには毎日会ってるじゃないか」
「マリアンとか他の子にも会いたいのー!」
ヒューには今年も冬の間毎日会いに行っていた。
この旅の間ももちろん会いに帰るつもりだ。
でもマリアンや他のクラスメイトには根雪になってから会っていないのだ。
『おでかけ』を隠しているから会うわけにはいかない。
とっても便利なのにままならないものだ。
「教皇様のお話すぐ終わるといいね」
「そしたらすぐ帰らないでちょっとは観光もしないかいカトリーナ?」
町に着き、馬具にくくりつけてきた大きなトランクを下ろすと、いつもなら厩舎に連れていくポーラをその場で帰すことにした。
「ポーラありがとう。先にうちに帰ってくれるかい」
「ありがとうポーラ。気をつけてね」
(『げんきになあれ』)
首をなでなでしてあげるとしっぽをぶんっと振って、パカラッパカラッと軽やかな足音をたて来た道を戻っていった。
うちのポーラほんとに賢い!
「フライはフライでも食べられないフライはなーんだ!」
「フライパン!」
「フライバーニー!」
「フライバーニーはフライじゃイマイチだが煮込みがうまい。正解はカトリーナ! フライパンでしたー!」
「おっとこいつはやられた。フライバーニーを煮込みでとはパトリックはシブいな」
「集落育ちだからね」
教皇様からのお迎えを待つ間、トランクに座り、パパと門番のおじさんとなぞなぞを出し合っていた。
首都の方向、まだ遠くに馬車の影が見えた。
「あれかな?」
「おっそうだろうな。しばらく寂しくなるな、気をつけてな」
ちょっと早いが門番のおじさんとお別れの挨拶をする。
おじさんはお仕事モードになるのだ。
キリッと顔を引き締め、姿勢を正した。
カトリーナはトランクに腰掛けたままなぞなぞ続行だ。
ちなみにフライバーニーは野鳥だ。
ものすごく面倒な下拵えが必要な上、煮込み以外ではびっくりするほどまずい。
しかし集落では食料が足りなくなると食べていた、らしい。
町では食用とは思われていない。
一見都会っ子なパパの集落育ちが垣間見えるなぞなぞだった。
「じゃあ私が問題出すね! さいしょは4本足、次は2本足、最後は3本足……」
「それ知ってる! 答えは、ヴァンランディヤーンだ!」
カトリーナが問題を言い終わる前にパパが答えたが、なんだそれは。
「なにそれ!? ちがうよ人間だよ!」
「ヴァンランディヤーンは3本足が一番強いんだよ。4本足が実は一番倒しやすいんだ」
パパ、ヴァンランディヤーンってなんなの?!
答えは人間なんだってばー!
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