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カトリーナとヒューの夏のある日 2

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 それから今日のお目当て、氷屋さんのシャーベットを買って、お店の前の椅子に腰掛けて食べることにした。

 カトリーナはレモン、ヒューはミルクを選んだ。
 もちろん味見させてもらった!
 あーんで!
 だからあーんしてお返ししてあげる。


「ヒューのミルクの、おいしい!」
「レモンもおいしいね」

 笑い合っていると、

「おあついねー氷がとけちまうなー!」

 と、氷屋さんのおじさんににやにやからかわれた。
 照れちゃう!



「カトリーナ、あと行きたいところはない?」

 シャーベットを食べながらヒューが聞く。

「うん、ないよ。今年もシャーベット食べられてよかった!」


 カトリーナはヒューに連れてきてもらうまで、この国にシャーベットがあるなんて知らなかった。
 ヒューが昨年の夏、冷たいお菓子が売ってるよ、食べに行かない?て誘ってくれたのだ。


 あまずっぱくて冷たくて、加藤里菜が好きだったレモンシャーベットと変わらなかった。感激した!





 そろそろ行こうか、と立ち上がろうとしたヒューの隣に、痩せた男の人……フレッドくんくらいの年かな? が腰掛けた。

「おじさん、悪いけど少し座らせて。くらくらするんだ」

「それはかまわないが……大丈夫か? お前細工師のとこの弟子だな。顔色やばいぞ」


 店先から出てきたおじさんが男の人を覗き込んで言った。
 たしかに顔色が悪かった。
 土色だ。


「うん、おつかいの帰りなんだけど、急にくらくらして……」


 土色の男の人はだらだら汗をかいて俯いた。
 熱中症かな……?


 カトリーナはシャーベットを食べたカップをヒューに差し出し、

「ヒュー、ここにお水をいれて」

 とお願いした。

「もしかしてこの人に飲ませる? ……ならこっちね。」

 頷くとヒューは自分のカップに水を入れた。


「おじさん、お塩ある? 少しだけここに入れてほしいの」

(『ちょっとだけいたいのとんでけ』)

 カップを受け取り、氷屋さんのおじさんに差し出す。

「塩? あるが、飲ませるのか?ぜったいまずいぞ」

「汗をかきすぎて塩が足りないんだと思うの。まずくても飲んだら良くなる……と、思います。おばあちゃんが言ってました」

 加藤里菜のおばあちゃんだけど。
 そう言って夏の農作業のときは塩飴を舐めさせられてた。


「へぇ……そういうことがあるのか。年寄りの言うことってのは意味があるもんだからな。……ほら、こんなもんでいいか?」


 一旦店に戻ったおじさんが、カウンター越しにスプーンで塩をぼちゃっとひとすくい入れてくれる。
 ……多いかな?
 まぁ、試してみよう!


 ジェラートのスプーンでくるくる混ぜとかしていると、さっとヒューがカップをとり男の人に差し出した。

「飲んで」

 男の人は朦朧としているのか、言われるまま一口飲んでぐっとむせた。

「出すな。飲んで」

 ヒューが容赦なく飲ませる。

「おえっなんだこれ、まずっ……あっ楽になってきた」

 顔色が少し良くなった。
 うーん、塩かな?『いたいのとんでけ』がきいたのかな?
 わかんないけど効いてるみたいだからいいか!

「全部飲んで、少し休んでください」


 カトリーナが声をかけると、まずいが効いたとわかっているのか、ぐえぐえ言いながら飲んでいた。


「おおほんとうに良くなったな。やはり年寄りの言うことは聞くもんだな」

「よかったです! 私たち帰りますね、ごちそうさまでした! おにいさんおだいじに!」

 うんうん頷くおじさんに、カトリーナはレモンシャーベットのカップを返し、ヒューと手を繋いでお店を離れた。


「ありがとうな! また来てなー!」



 魔法は(ちょっとしか)使ってないけど、元気になってよかった!


「ヒュー、手伝ってくれてありがとう!」

「いくらでも手伝うよ。夏の間にまたシャーベット食べに行こうね」



 まだ明るい夏の夕方を、ヒューのママとルカくんの待つお家へ向かい寄り添って歩いた。







 次に訪れた時、氷屋さんのシャーベットに塩ミルク味が新登場して大ヒットしていた。




 開発力が高い!






あとがき

その後、細工師の弟子は助けてくれた白銀の天使を探し町を彷徨うのだった……。

弟子「恋に落ちたんだ」


ヒュー「やめて」
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