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ヒューとカトリーナの放課後 1
しおりを挟むヒューにどきどきさせられてたら、いつのまにか下校の時間になっていた。
帰り支度をするカトリーナに、同じく支度をしながらヒューが声をかけた。
「朝はお父さんと来たんでしょう? 帰りはどうするの?」
「パパと帰るよ。パパが帰る時間まで、事務所で待たせてもらうの」
もらった教本でも読んでいようと思う。
異世界転生ボーナス、言語チートのおかげで読み書きに困らないカトリーナに、例えるならひらがなの絵本のような教本は簡単すぎるが、挿し絵がなかなかかわいい。
時間つぶしにはなりそう。
「うちに来ない? うちで待っていればいいよ。ここから近いんだ」
お友達のおうちにお呼ばれ! 初めて!
「嬉しいけど、事務所に行かなかったらパパ驚いちゃうよ」
「お父さんのところに寄ってから行けばいいよ。何番地?」
そう言ってまたするりと手を取られた。
せっかく落ち着いていたのに、またのぼせてしまう。
「ヒュー!」
「また真っ赤になってるよカトリーナ」
会ったばかりの美少年に手を取られて、平静でいられるわけがない。
しかもとても優しいから、振り払う気なんておきないのだ。
手を繋いだまま校舎を出ると、門の辺りに見慣れた人影があった。
「パパ!」
真っ赤な髪に逞しい身体。
加藤里菜の記憶を持って改めて見ると、パパはとても会計士には見えなかった。
かっこよくてすごく強そう。勇者っぽい。
「今、事務所に行くところだったんだよ。もしかして遅かったから心配した?」
「おかえりカトリーナ。 初めて町の中を歩くのに一人で来させるのは心配になってね。休憩をもらって迎えに来たんだ。……そっちの子は……?」
パパは繋いだままの手を見ていた。
気になるよね。私も気になる。
「はじめまして、カトリーナのお父さん。僕は同じクラスのヒューです。僕のうちに誘ったので、お父さんに許可をもらいに一緒に行くつもりでした」
「君のうちに?」
「はい。お父さんの仕事が終わるまで待つと言うので、うちで一緒に遊んでたらどうかなと思って」
ね、とカトリーナと目を合わせて微笑むヒューに、こくこくと頷いた。
「そう……。わかったよ、じゃあ送るよ。お家の人にあいさつさせてもらえるかな?」
パパはカトリーナが美少年にのぼせ上がっているのを見て呆れているのだろう。
ちょっと投げやりに許可をくれた。
お友達のおうちなんて、初めて!
カトリーナはわくわくしながら、ヒューと繋いでいない左手をパパと繋いだ。
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