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 慶が起きてきたのは10時になる少し前だった。

「起こしてって言ったのにぃ。おはようななみちゃん!」


 慶は寝癖ひとつなく、寝起きに見えない。
 寝巻きにしたTシャツとスウェットパンツすらスタイリッシュに見える。

「おはよ。いいよ、疲れてた、でしょ? 私も二度寝してたし」


 ふぁ、と小さくあくびをして口元を抑える。

 掃除機は慶を起こしてしまうだろうからと、居間をコロコロで掃除した後、ソファに座っていたら寝てしまったようだ。昨日のハイテンションの疲れが出たのかもしれない。
 慶が寝ている部屋に着替えを取りに行くのを遠慮して、七海は寝巻きにしている高校の指定ジャージのままである。


「たまごサンド食べて、港に行こ。けいちゃん、コーヒー飲む?」


「いただくわぁ。気を使わせてごめんねぇ」


 昨夜慶にほうじ茶を淹れたカップにコーヒーを淹れる。ハンバーガーショップで慶はブラックで飲んでいた。
 七海も自分のカップに作ったコーヒーをブラックで一口飲んでみたが、やっぱり苦いので牛乳を並々と注いだ。


「たまごサンド、おいしい!」

「ほんとねぇ、昨夜作っておいてよかったわ」

「ブラックペッパー入れるの、今度真似する」

 ゆったりと2人で朝食を取り、のんびり身支度を整える。
 慶の布団はきっちりと畳まれてあった。今日も寝るんだから敷いておけばいいのに、きちんとさんだな、と七海は感心した。

 七海は黒のスキニーパンツ、半袖のTシャツに、デニムシャツを羽織った。


「ななみちゃん、それだけ? 昨日はダウン着てたのに突然薄着じゃない?」

「今日はあったかくなるから」

「そうなのね。この昨日は寒かったカーディガンでちょうどいいかしら」


 慶はTシャツに昨日着ていたカーディガンを羽織った。
 ちなみに昨日着ていた服は慶が風呂に入っている間に洗濯機に入れ洗った。
 慶はずいぶん恥じらっていた。


「いいんじゃないかな? 暑かったら脱げばいいし」

「やだ、暑くはないでしょ! 家の中こんなに涼しいじゃないの」


 七海が鍵を閉めているあいだに玄関フードを開け一歩先に外に出た慶は、外気の暑さに呆然とした。


「暑いわ! えっ昨日寒かったわよね!?」

「昨日は最高10℃くらいだった」


 時刻は正午近く。
 太陽は高く、雲ひとつない青空だ。

 カーディガンを冷たい風が通り抜けた昨日とはうってかわって、日差しがじりじりと暑い。

「今日は?」

「今日は最高25℃」

「気温差すごくない?!」



 雪が降った翌日が夏日だったりすることもある。
 北海道の春は、気まぐれなのだ。


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