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魔剣の返却 新たな展開1
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昼休みの時間に呼び出された職員室の傍のゲストルーム。
久し振りに会うノイマンにリリスは丁寧に頭を下げた。
「お久し振りです、ノイマン様。」
柔和な表情のノイマンはリリスに笑顔を向けた。
「アストレア神聖王国を訪問した時以来だね。リリス、元気そうで何よりだ。」
物腰の柔らかいノイマンの言葉に礼を言って、リリスはその対面のソファに座った。
芋虫を肩に生やした小人は、何時ものメリンダ王女とフィリップ王子である。
その芋虫が単眼をパチパチと瞬きしてリリスの顔を凝視した。
「リリス。急に呼び出してごめんね。でもあんたが持っている魔剣の事で揉め事が起きているのよ。」
やはりアクアスフレアの件だ。
リリスは何を言われるのかと不安になっていた。
「アクアスフレアと言ったね? 君が持ち帰って来た魔剣が国宝級の物だと判明して、ドラゴニュートの王族が特使として我が国に来たのだ。魔剣を返して欲しいと正式に申し伝えて来た。勿論その見返りを存分に用意した上でね。」
ノイマンの言葉にリリスは表情を曇らせた。
「返すのは構いませんが、元々ドラゴニュートのウバイド国王様が私に、褒賞として持って帰れと言って手渡したんですよ。いまさら何を言っているのかって思っちゃいますけど・・・」
一言文句を言ってやりたいと言うのがリリスの本心だ。
「うむ。君の言うのも分かるのだが、相手はドラゴニュートとは思えぬほどに平身低頭で申し出て来ているんだ。ミラ王国としてもここで恩を売っておいて、幾つかの交渉事を有利に持っていきたいところなんだよ。協力してくれないかね?」
「それは勿論です。」
そう言いながらリリスはマジックバッグから魔剣アクアスフレアを取り出し、テーブルの上に無造作に置いた。
芋虫と小人が興味深そうに魔剣を覗き込んだ。
「これが・・・国宝級の魔剣なの? 何となく地味な魔剣ね。」
芋虫の言葉に小人もうんうんと頷いた。
「この魔剣は封印を掛けられているのよ。それはドラゴニュートの国王様も知っているわ。」
リリスはそう言ってアクアスフレアの剣身を軽く撫でながら、ノイマンの顔を覗き込んだ。
「これをノイマン様にお預けすれば良いのですか?」
「そうだね。私は数日後に国家間の交渉事でドラゴニュートの王国を訪れる予定だ。その際に返却する事になっている。」
そこまでは確定事項なのね。
リリスにはこの件に関して意を挟む余地は無い。
返せと言われれば返すだけだ。
ノイマンは自分のマジックバッグを取り出し、アクアスフレアをその中に収納した。
「ところでリリス、君は覇竜の姫君を魔剣返却の際に立会人にしたそうだね。」
「ああ、リンちゃんの事ですね。そうしろと勧める人が居ましたので・・・」
キングドレイクさんって人では無かったわよね。
自分の言葉に自分で突っ込むリリスである。
リリスの言葉にノイマンは大きく頷いた。
「それについては得策だったね。」
ノイマンの言葉に芋虫も小人も同意して頷いた。
「ドラゴニュートは狡猾であり強引だ。君が立会人を立てていなければ、彼等は君が彼等を騙して魔剣を持って帰ったとでも言い出しただろう。」
「そんな事って・・・」
リリスはそう言って言葉を詰まらせた。
現実にはそう言う言い掛かりを吹っかけられたわけではないのだが、そんな局面を想像しただけでも怒りがこみ上げてくる。
そのリリスの表情を見てノイマンは穏やかな笑顔を見せた。
「リリス。君は賢明な事に立会人を立てた。しかも覇竜と言えばドラゴニュート達の上位種だから、ドラゴニュート達が難癖をつけたり、言い逃れする事の出来ない状況に置かれている事は自明だ。そんな事をしたら覇竜とその配下の竜達を怒らせて、ドラゴニュートの住むオアシス都市を全て焼き尽くされかねない。それを思うと実に滑稽だね。」
ノイマンはニヤリと笑って、傍に座っている小人の肩の芋虫に顔を向けた。
「王女様はどうされますか? 使い魔の形で私に同行するか否か迷っておられたと聞きましたが。」
ノイマンの言葉に芋虫はう~んと唸り、
「国宝級の魔剣がどんなものか気になってそう言ったんだけど、現物を見たら興味が失せちゃったわ。同行する話は無かった事にしてね。」
そう言うと芋虫は照れたような仕草をし、おもむろにリリスに話し掛けた。
「それであの魔剣の封印って外せないの?」
「う~ん。外せない事は無いんだけどねえ。」
リリスは魔剣にこびりついている魔金属をはがすと、どのような状況になるのかを簡単に説明した。
リリスが魔金属錬成のスキルを持っていると言う事は伝えていないが、いずれその事もメリンダ王女に知られてしまうかもしれない。
それでもメリンダ王女とのこれまでの信頼関係があるので、リリスの持つスキルを今更あれこれと言及される事も無いだろう。
説明を受けた芋虫はう~んと唸って身体を仰け反らせた。
「封印をはがすたびに竜族のアンデッドに襲われるって言うのもキツイわねえ。ドラゴニュートは寿命が長いから、年月を掛けて少しずつ地道にはがすのが賢明ね。」
芋虫の言葉に小人が言葉を挟む。
「ドラゴニュートにそんな地道な事が出来るのかい? 手っ取り早く一気にはがそうとしないかな?」
「それはそれで彼等が決める事だと思うわよ。」
芋虫の言葉に小人はう~んと唸った。
リリスの心にもその事に関して若干の不安が沸き上がってきたが、結局はドラゴニュート達の決める事だ。
そのとばっちりがこちらに来なければ良いのだけれど・・・・・。
リリスの感じたこの小さな不安がその後に現実になるとは、この時リリスも全く思っていなかった。
ノイマン達とゲストルームで会ったその日の夜。
早めに床に就いたリリスは突然起こされた。
半覚醒状態のリリスの目の周りに紫の空間が広がっている。
またもやデルフィの構築した仮想空間に呼び出されたようだ。
今回もまた別室ではあるが、その割には高級そうなソファと装飾で飾られたデスクが用意されている。
仮想空間なので設定次第でどうにでもなるのだろうが、それでも若干気遣ってくれているのかも知れない。
ソファに座って手招きしているのはデルフィだ。
その招きに応じて対面のソファにリリスは座った。ソファの心地良い感触がリリスの身体を包み込む。
こう言う設定ならありがたいわね。
そう思ってソファを軽く撫でるリリスにデルフィは語り掛けた。
「リリス。急に呼び出してすまなかったね。だがどうしても伝えておかねばならない事があるのだよ。」
デルフィの笑顔とは裏腹に、若干不安になるような話の切り出しだ。
「君も伝え聞いているだろうが、魔剣アクアスフレアの件だ。ウバイド国王様からリリスに詫びを入れてくれと頼まれてなあ。」
デルフィはポリポリと頭を掻いた。
「直接国王様が謝辞を述べれば良いのだが、君に報償だと言ってあの魔剣を手渡した手前、バツが悪くて君に顔を合わせられんと言うのだよ。」
そんな事、気にしなくても良いのに。
ドラゴニュートの国王らしく尊大に振舞えば良いのよ。
どのみち子供にご褒美を与えたようなものじゃないの。
リリスはあれこれと思いながらも笑顔をデルフィに向けた。
「そんなにお気遣いをされなくても良いですよ。喜んでお返ししますのでお気遣いなく。数日中に特使のノイマン様がそちらにお持ちすると聞いていますので、もう少しお待ちください。」
「でもどうやってあのショートソードこそが魔剣アクアスフレアだと分かったんですか?」
「ああ、それはだな・・・・」
リリスの問い掛けにデルフィは少し間を置いて話を続けた。
「先日ウバイド国王様があのロングソードを先代国王様にお見せしたのだ。その際、普段は半惚け状態の先代国王様は突然覚醒され、これはアクアスフレアではないと叫ばれた。一緒にシューサックに修復を依頼したショートソードこそがアクアスフレアであると。」
「それで慌てたウバイド国王様が特使をミラ王国に派遣したのが、今回の事の発端なのだよ。」
そうだったのね。
それは慌てるわよね。
納得したリリスの表情を見ながら、デルフィはふと気になった事を口にした。
「リリス。君はあのショートソードこそが本物のアクアスフレアであると、最初から知っていたのか?」
「いいえ。その事実を知ったのは数日前です。」
リリスはそう言うとユリアから聞いた話を簡単に伝えた。
デルフィはその話に驚きの声を上げた。
「水の女神が現れたのか! しかも水の女神がイメルダ様にアクアスフレアを授けたと・・・・・」
デルフィは感慨深そうに唸って中空に目を向けた。ドラゴニュートの賢者ですら知らない事実だったのだろうか?
だがデルフィはすぐにリリスの方に向き直った。
「それにしても驚いたな。人族の口から国母イメルダ様の名前が出てくるとは思わなかったよ。」
このデルフィの言葉にリリスは意外だと言わんばかりの表情を見せた。
「王家が管理している正史でもイメルダ様の名前は出てこない。開祖はあくまでもロムス様なのだ。イメルダ様は建国の偉業をロムス様のものとするため、ご自分の名前を正史に記さないように指示されたと聞いている。」
「王家に属する者だけはイメルダ様の存在を知っているが、一般のドラゴニュートはその名前すら知らない。ましてや人族においては知る者など居ないはずだ。」
「その事を考えても・・・リリスが水の女神に会ったと言う、今聞いた話の信憑性が裏付けられるよ。」
饒舌に語り続けた後、デルフィは少し考え込んだ。
そのデルフィの様子を見ながら、リリスはユリアに会う直前、薬草園で封印を少しはがした際の出来事をふと思い出した。
「余計な事かも知れませんが、アクアスフレアの封印をはがす際には充分に注意してくださいね。」
「封印をはがす? それはあの魔剣の剣身にこびりついている魔金属をはがす事だな? 君はそれをやってみたのか?」
デルフィの言葉にリリスはうんうんと頷いた。
「驚いたな。あのこびりついている魔金属は、それなりのスキルを持っていないとはがせないはずだ・・・・・」
デルフィの眼差しがリリスに突き刺さる。だがデルフィは直ぐにその眼差しをリリスから逸らした。
「まあ、何も言うまい。リリスに驚かされる事など数え切れないからな。」
ほどなくデルフィは興味深そうな目つきでリリスの顔を覗き込んだ。
「それで、魔金属を少しはがしてどうなったのだ?」
デルフィの問い掛けにリリスは薬草園での出来事を簡単にまとめて話した。その話にデルフィはう~んと唸り声をあげた。
「封印をはがすたびに竜族のアンデッドが出現するのか! 何とも厄介な魔剣だな。」
「だがそれを先に聞いておいて良かったよ。私からもウバイド国王様には、一気に封印を解くような迂闊な事をしない様に進言しておこう。」
そうよね。
そんな事をしたらドラゴニュートの国中が、とんでもない災厄に巻き込まれるわよ。
「リリス。今日、私は君から色々な貴重な情報を得る事が出来た。本当に感謝しているよ。」
デルフィの顔には満足げな様子が窺える。
「明日の授業もあるだろうから、今日はこれで終わりにしよう。元気でな。」
そう言ってデルフィはソファから立ち上がり、手を振って消えていった。
それと共に周囲が暗闇になり、リリスは再び深い眠りに就いた。
その日の放課後。
リリスは何時ものように生徒会の部屋に向かった。
部屋の扉越しにエリスとニーナの笑い声が聞こえてくる。
またニーナが遊びに来ているのね。
エリスと仲の良いニーナはたびたび生徒会の部屋にやってくる。
勿論エリスの作業の邪魔はしない。むしろ手伝いながら、何気無い会話をして楽しんでいるだけだ。
だがそれがニーナにとっては貴重な時間なのだろう。
その気持ちがニーナの笑顔から伝わってくる。
部屋に入って来たリリスと挨拶を交わし、エリスは手に小さな袋を持ってリリスに近付いて来た。
「リリス先輩。これ、先日帰省した時のお土産です。」
休暇を利用して地方の実家の領地に帰省するとは聞いていた。その際に持ち帰って来た物なのだろう。
ありがとうと礼を言いながら、リリスは自分の席に着いた。
手渡された小さな布袋を開けると、そこにはカラフルなミサンガが三つ入っていた。
ああ、あのミサンガね。
リリスは以前にもエリスからミサンガを貰ったことがあった。その時のミサンガは不思議な作用を起こし、窮地に至ったリリスを救う切っ掛けにもなった事を、リリスは昨日の事のように鮮明に覚えている。
あの時のチャーリーの話では、このミサンガを創ったのはダークエルフの精霊使いだったと言う。
「これって貴重なお守りじゃないの?」
リリスの言葉にエリスは手を横に振りながら、
「まだそれなりに数がありますから、使って貰って大丈夫ですよ。それに私よりリリス先輩の方が、このミサンガの需要がありそうですからね。」
そう言ってリリスの手からミサンガを取り、エリスはリリスの右の手首にそのミサンガを嵌めた。
確かにエリスの言う様に、自分の方がエリスよりも危険な目に遭っている事は多いだろう。それ故にエリスの言葉通り、リリスの方がお守りの需要が多い事は間違いない。
ミサンガを手首に巻き付けられた途端に、リリスの右手から不思議な魔力の波動が伝わってくる。
それはそのミサンガの持つ固有の波動なのだろう。
「ありがとう、エリス。大事にするわね。」
ミサンガを巻き付けた手首を目の前に突き出すと、同じようにミサンガを巻き付けたニーナがリリスの方に手首を突き出していた。
ニーナもエリスから貰ったようだ。
「このミサンガって精霊を呼ぶんでしょ?」
ニーナが嬉しそうに自分のミサンガを撫でた。
「必ず呼んでくれるってわけじゃないと思うわよ、ニーナ。」
「うん。それは分かってるよ。上手くタイミングが合えばって事よね。」
ニーナはそう言いながらミサンガをツンツンと突いた。
「このミサンガの放つ魔力の波動って好きだなあ。自分の魔力のコントロールが良くなる気がするの。」
確かにそうかもしれない。
ミサンガの特殊な効用なのか、リリスも気分が若干高揚している。
さあ、作業に取り掛かろう。
そう思って書類を取り出したその時、リリスは右の手首にピリッと軽く静電気が走るのを感じた。
何気にミサンガを少しずらしてみると、うっすらと小さな痣のようなものが手首に付いている。
大きさは5mmほどで、目を凝らして良く見ると、それはトランプのダイヤのマークのようだった。
これって何なの?
ミサンガと魔力を交えた事で付いたのかしら?
そう思いながらも、リリスはその時その薄い痣をそれほど気にもしなかった。
そのうちに消えるわよね。
リリスの思いとは裏腹に、その後数日間痣は消える事が無かった。
そしてミサンガをエリスから貰った数日後。
リリスは昼休みに再度、職員室の隣のゲストルームに呼び出された。
またあの魔剣絡みの用件じゃないでしょうね。
何故か胸騒ぎがする。
リリスは言い知れぬ不安を感じつつ、ゲストルームに入っていった。
久し振りに会うノイマンにリリスは丁寧に頭を下げた。
「お久し振りです、ノイマン様。」
柔和な表情のノイマンはリリスに笑顔を向けた。
「アストレア神聖王国を訪問した時以来だね。リリス、元気そうで何よりだ。」
物腰の柔らかいノイマンの言葉に礼を言って、リリスはその対面のソファに座った。
芋虫を肩に生やした小人は、何時ものメリンダ王女とフィリップ王子である。
その芋虫が単眼をパチパチと瞬きしてリリスの顔を凝視した。
「リリス。急に呼び出してごめんね。でもあんたが持っている魔剣の事で揉め事が起きているのよ。」
やはりアクアスフレアの件だ。
リリスは何を言われるのかと不安になっていた。
「アクアスフレアと言ったね? 君が持ち帰って来た魔剣が国宝級の物だと判明して、ドラゴニュートの王族が特使として我が国に来たのだ。魔剣を返して欲しいと正式に申し伝えて来た。勿論その見返りを存分に用意した上でね。」
ノイマンの言葉にリリスは表情を曇らせた。
「返すのは構いませんが、元々ドラゴニュートのウバイド国王様が私に、褒賞として持って帰れと言って手渡したんですよ。いまさら何を言っているのかって思っちゃいますけど・・・」
一言文句を言ってやりたいと言うのがリリスの本心だ。
「うむ。君の言うのも分かるのだが、相手はドラゴニュートとは思えぬほどに平身低頭で申し出て来ているんだ。ミラ王国としてもここで恩を売っておいて、幾つかの交渉事を有利に持っていきたいところなんだよ。協力してくれないかね?」
「それは勿論です。」
そう言いながらリリスはマジックバッグから魔剣アクアスフレアを取り出し、テーブルの上に無造作に置いた。
芋虫と小人が興味深そうに魔剣を覗き込んだ。
「これが・・・国宝級の魔剣なの? 何となく地味な魔剣ね。」
芋虫の言葉に小人もうんうんと頷いた。
「この魔剣は封印を掛けられているのよ。それはドラゴニュートの国王様も知っているわ。」
リリスはそう言ってアクアスフレアの剣身を軽く撫でながら、ノイマンの顔を覗き込んだ。
「これをノイマン様にお預けすれば良いのですか?」
「そうだね。私は数日後に国家間の交渉事でドラゴニュートの王国を訪れる予定だ。その際に返却する事になっている。」
そこまでは確定事項なのね。
リリスにはこの件に関して意を挟む余地は無い。
返せと言われれば返すだけだ。
ノイマンは自分のマジックバッグを取り出し、アクアスフレアをその中に収納した。
「ところでリリス、君は覇竜の姫君を魔剣返却の際に立会人にしたそうだね。」
「ああ、リンちゃんの事ですね。そうしろと勧める人が居ましたので・・・」
キングドレイクさんって人では無かったわよね。
自分の言葉に自分で突っ込むリリスである。
リリスの言葉にノイマンは大きく頷いた。
「それについては得策だったね。」
ノイマンの言葉に芋虫も小人も同意して頷いた。
「ドラゴニュートは狡猾であり強引だ。君が立会人を立てていなければ、彼等は君が彼等を騙して魔剣を持って帰ったとでも言い出しただろう。」
「そんな事って・・・」
リリスはそう言って言葉を詰まらせた。
現実にはそう言う言い掛かりを吹っかけられたわけではないのだが、そんな局面を想像しただけでも怒りがこみ上げてくる。
そのリリスの表情を見てノイマンは穏やかな笑顔を見せた。
「リリス。君は賢明な事に立会人を立てた。しかも覇竜と言えばドラゴニュート達の上位種だから、ドラゴニュート達が難癖をつけたり、言い逃れする事の出来ない状況に置かれている事は自明だ。そんな事をしたら覇竜とその配下の竜達を怒らせて、ドラゴニュートの住むオアシス都市を全て焼き尽くされかねない。それを思うと実に滑稽だね。」
ノイマンはニヤリと笑って、傍に座っている小人の肩の芋虫に顔を向けた。
「王女様はどうされますか? 使い魔の形で私に同行するか否か迷っておられたと聞きましたが。」
ノイマンの言葉に芋虫はう~んと唸り、
「国宝級の魔剣がどんなものか気になってそう言ったんだけど、現物を見たら興味が失せちゃったわ。同行する話は無かった事にしてね。」
そう言うと芋虫は照れたような仕草をし、おもむろにリリスに話し掛けた。
「それであの魔剣の封印って外せないの?」
「う~ん。外せない事は無いんだけどねえ。」
リリスは魔剣にこびりついている魔金属をはがすと、どのような状況になるのかを簡単に説明した。
リリスが魔金属錬成のスキルを持っていると言う事は伝えていないが、いずれその事もメリンダ王女に知られてしまうかもしれない。
それでもメリンダ王女とのこれまでの信頼関係があるので、リリスの持つスキルを今更あれこれと言及される事も無いだろう。
説明を受けた芋虫はう~んと唸って身体を仰け反らせた。
「封印をはがすたびに竜族のアンデッドに襲われるって言うのもキツイわねえ。ドラゴニュートは寿命が長いから、年月を掛けて少しずつ地道にはがすのが賢明ね。」
芋虫の言葉に小人が言葉を挟む。
「ドラゴニュートにそんな地道な事が出来るのかい? 手っ取り早く一気にはがそうとしないかな?」
「それはそれで彼等が決める事だと思うわよ。」
芋虫の言葉に小人はう~んと唸った。
リリスの心にもその事に関して若干の不安が沸き上がってきたが、結局はドラゴニュート達の決める事だ。
そのとばっちりがこちらに来なければ良いのだけれど・・・・・。
リリスの感じたこの小さな不安がその後に現実になるとは、この時リリスも全く思っていなかった。
ノイマン達とゲストルームで会ったその日の夜。
早めに床に就いたリリスは突然起こされた。
半覚醒状態のリリスの目の周りに紫の空間が広がっている。
またもやデルフィの構築した仮想空間に呼び出されたようだ。
今回もまた別室ではあるが、その割には高級そうなソファと装飾で飾られたデスクが用意されている。
仮想空間なので設定次第でどうにでもなるのだろうが、それでも若干気遣ってくれているのかも知れない。
ソファに座って手招きしているのはデルフィだ。
その招きに応じて対面のソファにリリスは座った。ソファの心地良い感触がリリスの身体を包み込む。
こう言う設定ならありがたいわね。
そう思ってソファを軽く撫でるリリスにデルフィは語り掛けた。
「リリス。急に呼び出してすまなかったね。だがどうしても伝えておかねばならない事があるのだよ。」
デルフィの笑顔とは裏腹に、若干不安になるような話の切り出しだ。
「君も伝え聞いているだろうが、魔剣アクアスフレアの件だ。ウバイド国王様からリリスに詫びを入れてくれと頼まれてなあ。」
デルフィはポリポリと頭を掻いた。
「直接国王様が謝辞を述べれば良いのだが、君に報償だと言ってあの魔剣を手渡した手前、バツが悪くて君に顔を合わせられんと言うのだよ。」
そんな事、気にしなくても良いのに。
ドラゴニュートの国王らしく尊大に振舞えば良いのよ。
どのみち子供にご褒美を与えたようなものじゃないの。
リリスはあれこれと思いながらも笑顔をデルフィに向けた。
「そんなにお気遣いをされなくても良いですよ。喜んでお返ししますのでお気遣いなく。数日中に特使のノイマン様がそちらにお持ちすると聞いていますので、もう少しお待ちください。」
「でもどうやってあのショートソードこそが魔剣アクアスフレアだと分かったんですか?」
「ああ、それはだな・・・・」
リリスの問い掛けにデルフィは少し間を置いて話を続けた。
「先日ウバイド国王様があのロングソードを先代国王様にお見せしたのだ。その際、普段は半惚け状態の先代国王様は突然覚醒され、これはアクアスフレアではないと叫ばれた。一緒にシューサックに修復を依頼したショートソードこそがアクアスフレアであると。」
「それで慌てたウバイド国王様が特使をミラ王国に派遣したのが、今回の事の発端なのだよ。」
そうだったのね。
それは慌てるわよね。
納得したリリスの表情を見ながら、デルフィはふと気になった事を口にした。
「リリス。君はあのショートソードこそが本物のアクアスフレアであると、最初から知っていたのか?」
「いいえ。その事実を知ったのは数日前です。」
リリスはそう言うとユリアから聞いた話を簡単に伝えた。
デルフィはその話に驚きの声を上げた。
「水の女神が現れたのか! しかも水の女神がイメルダ様にアクアスフレアを授けたと・・・・・」
デルフィは感慨深そうに唸って中空に目を向けた。ドラゴニュートの賢者ですら知らない事実だったのだろうか?
だがデルフィはすぐにリリスの方に向き直った。
「それにしても驚いたな。人族の口から国母イメルダ様の名前が出てくるとは思わなかったよ。」
このデルフィの言葉にリリスは意外だと言わんばかりの表情を見せた。
「王家が管理している正史でもイメルダ様の名前は出てこない。開祖はあくまでもロムス様なのだ。イメルダ様は建国の偉業をロムス様のものとするため、ご自分の名前を正史に記さないように指示されたと聞いている。」
「王家に属する者だけはイメルダ様の存在を知っているが、一般のドラゴニュートはその名前すら知らない。ましてや人族においては知る者など居ないはずだ。」
「その事を考えても・・・リリスが水の女神に会ったと言う、今聞いた話の信憑性が裏付けられるよ。」
饒舌に語り続けた後、デルフィは少し考え込んだ。
そのデルフィの様子を見ながら、リリスはユリアに会う直前、薬草園で封印を少しはがした際の出来事をふと思い出した。
「余計な事かも知れませんが、アクアスフレアの封印をはがす際には充分に注意してくださいね。」
「封印をはがす? それはあの魔剣の剣身にこびりついている魔金属をはがす事だな? 君はそれをやってみたのか?」
デルフィの言葉にリリスはうんうんと頷いた。
「驚いたな。あのこびりついている魔金属は、それなりのスキルを持っていないとはがせないはずだ・・・・・」
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「まあ、何も言うまい。リリスに驚かされる事など数え切れないからな。」
ほどなくデルフィは興味深そうな目つきでリリスの顔を覗き込んだ。
「それで、魔金属を少しはがしてどうなったのだ?」
デルフィの問い掛けにリリスは薬草園での出来事を簡単にまとめて話した。その話にデルフィはう~んと唸り声をあげた。
「封印をはがすたびに竜族のアンデッドが出現するのか! 何とも厄介な魔剣だな。」
「だがそれを先に聞いておいて良かったよ。私からもウバイド国王様には、一気に封印を解くような迂闊な事をしない様に進言しておこう。」
そうよね。
そんな事をしたらドラゴニュートの国中が、とんでもない災厄に巻き込まれるわよ。
「リリス。今日、私は君から色々な貴重な情報を得る事が出来た。本当に感謝しているよ。」
デルフィの顔には満足げな様子が窺える。
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ありがとうと礼を言いながら、リリスは自分の席に着いた。
手渡された小さな布袋を開けると、そこにはカラフルなミサンガが三つ入っていた。
ああ、あのミサンガね。
リリスは以前にもエリスからミサンガを貰ったことがあった。その時のミサンガは不思議な作用を起こし、窮地に至ったリリスを救う切っ掛けにもなった事を、リリスは昨日の事のように鮮明に覚えている。
あの時のチャーリーの話では、このミサンガを創ったのはダークエルフの精霊使いだったと言う。
「これって貴重なお守りじゃないの?」
リリスの言葉にエリスは手を横に振りながら、
「まだそれなりに数がありますから、使って貰って大丈夫ですよ。それに私よりリリス先輩の方が、このミサンガの需要がありそうですからね。」
そう言ってリリスの手からミサンガを取り、エリスはリリスの右の手首にそのミサンガを嵌めた。
確かにエリスの言う様に、自分の方がエリスよりも危険な目に遭っている事は多いだろう。それ故にエリスの言葉通り、リリスの方がお守りの需要が多い事は間違いない。
ミサンガを手首に巻き付けられた途端に、リリスの右手から不思議な魔力の波動が伝わってくる。
それはそのミサンガの持つ固有の波動なのだろう。
「ありがとう、エリス。大事にするわね。」
ミサンガを巻き付けた手首を目の前に突き出すと、同じようにミサンガを巻き付けたニーナがリリスの方に手首を突き出していた。
ニーナもエリスから貰ったようだ。
「このミサンガって精霊を呼ぶんでしょ?」
ニーナが嬉しそうに自分のミサンガを撫でた。
「必ず呼んでくれるってわけじゃないと思うわよ、ニーナ。」
「うん。それは分かってるよ。上手くタイミングが合えばって事よね。」
ニーナはそう言いながらミサンガをツンツンと突いた。
「このミサンガの放つ魔力の波動って好きだなあ。自分の魔力のコントロールが良くなる気がするの。」
確かにそうかもしれない。
ミサンガの特殊な効用なのか、リリスも気分が若干高揚している。
さあ、作業に取り掛かろう。
そう思って書類を取り出したその時、リリスは右の手首にピリッと軽く静電気が走るのを感じた。
何気にミサンガを少しずらしてみると、うっすらと小さな痣のようなものが手首に付いている。
大きさは5mmほどで、目を凝らして良く見ると、それはトランプのダイヤのマークのようだった。
これって何なの?
ミサンガと魔力を交えた事で付いたのかしら?
そう思いながらも、リリスはその時その薄い痣をそれほど気にもしなかった。
そのうちに消えるわよね。
リリスの思いとは裏腹に、その後数日間痣は消える事が無かった。
そしてミサンガをエリスから貰った数日後。
リリスは昼休みに再度、職員室の隣のゲストルームに呼び出された。
またあの魔剣絡みの用件じゃないでしょうね。
何故か胸騒ぎがする。
リリスは言い知れぬ不安を感じつつ、ゲストルームに入っていった。
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どうしてそうなるのかノアには不思議でたまりません。
でも、それは、次々起こる不思議で幸せな出来事の始まりに過ぎなかったのでした。
※ プロローグの女の子が幸せになる話です
※ 『小説家になろう』様にも「召還社畜と魔法の豪邸 ~召喚されたおかげでデスマーチから逃れたので家主の少女とのんびり暮らす予定です~」というタイトルで投稿しています。
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