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そんなこんなでドタバタしているうちに、ついに学園へ向かう日となった。
『不可思議な幻想曲ファンタジア』では基本的に移動中はあまり描写が無かったのだがどんな感じなのか…
大体の場合は行き先を選択と一瞬で行けて、イベントなどに伴う特殊な移動だけが「○○から××に移動中」みたいな表示が出て、移動中は行動が制限されていたはず。
朝の支度の時点で着付けられたのは…正装の真っ赤なドレス。

「このまま入学式に向かうわよ?」

朝食も終わるかとのタイミングで母に尋ねると、実にあっさりした回答が返ってきた。

「いや、今日から入寮でしょ?なんか準備とかそういえばしてないけど大丈夫なの?」

「足りないものがあるならダニエラに取りに行かせれば…ああ、そのあたりの記憶は戻っていないのね。」

ダニエラというのは私付きの侍女で、転生当初から世話になっている前世と同じぐらい(おそらくアラサー)の赤茶髪の彼女だ。
というか取りに行かせるって…そんな頻繁に行き来できるの?
学園編の舞台、ヴァイナモイネン貴族学院は各公国に取り囲まれるように中央に存在する帝都にあって、南のイルマリネン公国のなかでもオーケシュトレーム家のこのお屋敷は中央よりちょっと南側ぐらいだったと思うんだけど…
もしかして転移的な魔法陣とか異空間を通れる扉とかがあるとか?

「当分の間で必要そうな荷物はしばらく前に送ってあるわ。部屋ももう整っているはずよ。同室はアーネだから…」

そこまで言いかけて思案顔になった母。
あ、もしかしてアーネの話?

「言い忘れていたわね。セシルからはエイドーロンの可能性があると聞いていたアーネについてだけど…結論としては、彼女はエイドーロンではなかったわ。現時点では、だけど。」

「そうなんだ…」

そっか、さすがに一緒に転生、とまではいかなかったか…
まあ、戻れるかどうかわからないし前世の時代よりも過酷な環境になることを考えたら、来ないほうがいいよね。うん。
ちょっと寂しくはあるけれど…

「入学前に覚醒する例が多いだけで、大人になってから覚醒する場合もあるわ。もしアーネがエイドーロンであればイルマリネンとしては喜ばしいことよ。兆候が見えたら教えてもらえるかしら。」

「うん、わかった。」

「それじゃ、支度して移動をしましょう。」

そう母が言って全員が仕上げの準備にかかる。
案内されたのは見上げるほど大きな扉の前だった。
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