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エピローグ「いつまでもこの愛を」
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「……やはり、こうして二人きりでいるときが一番落ち着くな」
「はい……あの結婚式は、なんだか祝われているはずなのに肩身が狭い思いでした」
国を挙げた結婚式から三日、ピースレイヤー領にようやく帰還できたわたしたちは、中庭のテラスでティータイムを楽しんでいた。
たくさんのご馳走に、目も眩むような献上品の数々は、思い返せば豪奢でこそあったし、それをいただけるのも光栄でこそあったけれど、やっぱりどこか、身の丈に合わない心地がして。
こうして、エスティさんたちが作ってくれたショートケーキと紅茶をささやかに楽しむのが、やっぱりわたしたちにはお似合いのようだった。
「だが、一つの区切りになったのは確かだろう」
「はい……ようやく夫婦になれたような、そんな心地がします」
思えば、わたしがピースレイヤーの家に嫁いできたきっかけは、色々散々なものだったっけ。
でも。
「……スターク様、わたし……貴方の元に嫁ぐことができて、貴方の妻になれて、本当に幸せです」
「……もったいない言葉だ、俺は君に助けられてばかりだからな」
「もったいなくなんかないです、受け取ってもらえない方が傷ついてしまいます」
「……ふっ、そうだな」
かつて言われたことをそのまま返すと、勘弁してくれとばかりにスターク様は肩を竦める。
「ならば一つ、君の伴侶らしいことをさせてはくれないか、リリアーヌ」
「……な、なんでしょう……?」
「リリアーヌ……いや、我が最愛の妻、リリア。これからは、君をそう呼ばせてくれないか」
リリア。
ただ、名前を縮めて呼んでいるだけなのに、なんだかとってもあたたかくて甘酸っぱい想いが、胸の中から溢れ出さんばかりの勢いで込み上げてきて。
じわり、と、涙が滲んでしまう。ああ、きっとようやく。
ようやくわたしは、このお方に出会えて……スターク様に見初めていただいて、初めてこの世に産まれることができたのだ。
「スターク様……わがままを一つだけ言っても、いいでしょうか?」
「いくらでも構わない」
「……ありがとうございます。では……もう一度。リリア、と。そう呼んで、くださいますか?」
そう願って差し伸べた手の甲に口づけてから、スターク様はわたしの瞳を覗き込み、大きく頷く。
「リリア。何度でもその名を呼ぼう」
「スターク、様……」
「愛している、リリア」
「わたしもです……スターク様……」
そして、わたしたちは二度目のベーゼを交わす。
初めてのベーゼと同じで、ショートケーキの味がする、とっても甘くて、少しだけ酸っぱい、恋と愛の味を、舌先でなぞり合うように。
いつまでもこの恋が、愛が、続いていくことを願いながら。
「はい……あの結婚式は、なんだか祝われているはずなのに肩身が狭い思いでした」
国を挙げた結婚式から三日、ピースレイヤー領にようやく帰還できたわたしたちは、中庭のテラスでティータイムを楽しんでいた。
たくさんのご馳走に、目も眩むような献上品の数々は、思い返せば豪奢でこそあったし、それをいただけるのも光栄でこそあったけれど、やっぱりどこか、身の丈に合わない心地がして。
こうして、エスティさんたちが作ってくれたショートケーキと紅茶をささやかに楽しむのが、やっぱりわたしたちにはお似合いのようだった。
「だが、一つの区切りになったのは確かだろう」
「はい……ようやく夫婦になれたような、そんな心地がします」
思えば、わたしがピースレイヤーの家に嫁いできたきっかけは、色々散々なものだったっけ。
でも。
「……スターク様、わたし……貴方の元に嫁ぐことができて、貴方の妻になれて、本当に幸せです」
「……もったいない言葉だ、俺は君に助けられてばかりだからな」
「もったいなくなんかないです、受け取ってもらえない方が傷ついてしまいます」
「……ふっ、そうだな」
かつて言われたことをそのまま返すと、勘弁してくれとばかりにスターク様は肩を竦める。
「ならば一つ、君の伴侶らしいことをさせてはくれないか、リリアーヌ」
「……な、なんでしょう……?」
「リリアーヌ……いや、我が最愛の妻、リリア。これからは、君をそう呼ばせてくれないか」
リリア。
ただ、名前を縮めて呼んでいるだけなのに、なんだかとってもあたたかくて甘酸っぱい想いが、胸の中から溢れ出さんばかりの勢いで込み上げてきて。
じわり、と、涙が滲んでしまう。ああ、きっとようやく。
ようやくわたしは、このお方に出会えて……スターク様に見初めていただいて、初めてこの世に産まれることができたのだ。
「スターク様……わがままを一つだけ言っても、いいでしょうか?」
「いくらでも構わない」
「……ありがとうございます。では……もう一度。リリア、と。そう呼んで、くださいますか?」
そう願って差し伸べた手の甲に口づけてから、スターク様はわたしの瞳を覗き込み、大きく頷く。
「リリア。何度でもその名を呼ぼう」
「スターク、様……」
「愛している、リリア」
「わたしもです……スターク様……」
そして、わたしたちは二度目のベーゼを交わす。
初めてのベーゼと同じで、ショートケーキの味がする、とっても甘くて、少しだけ酸っぱい、恋と愛の味を、舌先でなぞり合うように。
いつまでもこの恋が、愛が、続いていくことを願いながら。
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