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成功?2

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「ははは! ミミは好奇心旺盛だねえ。偉いなぁ!」

「うむうむ。何事も挑戦するのは良いことじゃ!」

 父さまたちは私の無謀とも言える実験を誉めてくれた。たとえ失敗しても頑張ったね、と誉めてくれそうだ。

「うーん、クシュロか。そう言えば昔魔物を討伐していた時に、似たような魔物がいたなぁ」

 父さまが何かを思い出したのか、昔話を聞かせてくれた。

「その魔物は小さい生物の集合体でね。普段は目立たないんだけど、雨や水を吸収すると膨張してね。小さい動物を飲み込むんだよ」

「ひえっ?!」

「ああ、あれか! 乾燥しても死なず仮死状態で生きとるらしいのう。水をやったらすぐ復活して増殖するとか何とか……」

 私は父さまたちの話を聞いて恐怖に震えた。そんな恐ろしい魔物がいるなんて……。もしかしてスライムのようなものだろうか。

「その魔物はどうやって倒すのですか? 燃やすのですか?」

「それがねぇ。超高温の炎じゃないと中々死ななかったんだよ。でもある日の夜──」

 父さまが話をしてくれた内容はこうだ。

 ──酒を飲んでいた騎士の一人が酔っ払い、魔物を誤って踏んで滑ってしまう。その時零れたお酒を被った魔物は結晶化し、水を浴びても復活しないまま死んだという。
 そこで父さまたちはその魔物はお酒で倒せると気がついたのだ。
 それからその魔物を見つけたらお酒を撒いて、結晶化させてから粉々にし燃やすという退治法が確立したのだった。

「お酒……! すごいです! そんな方法があるなんて!」

 クシュロと魔物は違うから、お酒を入れてもクシュロは固まらないかもしれない。だけど試してみる価値はあるはずだ。

 私は父さまにお礼を言うと、明日さっそく実験してみよう、と心に決める。

 もしクシュロがダメだったら、例の魔物──スライムモドキで実験してみるのも良いかもしれない。
 ただその場合、父さまたちにお願いしてスライムモドキを捕まえてもらう必要があるけれど。

 アクリル再現の手掛かりを掴んだ私は、朝早くから実験の続きに取り掛かった。

 厨房からお酒を少しだけ分けてもらい、多めの水で溶かしたクシュロが入ったクッキー型に数滴垂らしてみた。

 結果──。

「うわぁっ!! すごいっ!! 出来たっ!! やったっ!! 成功だーっ!!」

 クシュロは見事に固まったのである!
 ……これはもはやノーベル賞モノではないだろうか。割とマジで。

 自分でも不思議に思うけれど、植物由来のクシュロでもお酒を入れると硬くなるようだ。
 もしかすると、ぬるっとした滑る成分がスライムモドキと同じなのかもしれない。よう知らんけど。

 とにかく実験は成功したのだ。その質感はまさに私が探し求めていたアクリルととても似ている。

「やってみるもんだなぁ……。もしかして私、研究者の素質がある……?」

 正直、こんなに早く問題が解決するとは思わなかった。何事も諦めずに頑張ってみるものだ。

 しかし、調子に乗って自画自賛する身の程知らずな私を諌めるように、新たなる問題が発生する。
 固まったクシュロがクッキー型から取り出せないのだ。

「ぐぬぬ……っ! ぴったりくっついていて取れない……っ! すっごいカッチンコッチンじゃん!!」

 まさかこんなトラップがあったとは……! 神様は意地悪だ!! 
 これじゃあアクリルを再現できても型抜きが出来ないではないか。

「また親方にクッキー型を頼まなきゃ……! それにそろそろクロヴィスからお茶会の連絡が来るはずだから、ホーン・ラビットのクッキー型もいるし……」

 ついついアクリルの再現に夢中になっていたけれど、次のお茶会の準備をしなければならないのをすっかり失念していた。
 まあ、場所はクロヴィスんちなので、私が用意するべきはクッキーだけなんだけど。

 こうしちゃいられない、と慌てた私は急いで親方のところへと向かった。
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