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精霊の祝福3
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「……つい長話をしてしまったのう。嬢ちゃんは腹減っておらんか? 一緒に飯でも食うか?」
黙り込んでしまったティナを気遣うように、ノアが食事にしようと言ってくれた。
「はい、そうですね。じゃあ、私がノアさんにご馳走しますよ」
ティナは感謝の気持ちを込めて、ノアに食事を作ってあげたいと思う。
この場所でノアに出会えたのは僥倖の極みだろう。彼に出会わなければきっと、道に迷わなかったとしても、精霊王に会えなかったような気がするのだ。
「そうかそうか! そりゃ楽しみじゃわい! 人の手料理なんぞ何年振りかのう……」
「えへへ。料理上手じゃありませんけど、食材をたくさん持っていますから」
それからティナは、いつの間にか眠っていたアウルムを起こさないように、料理を作り始めた。
街で買ったチーズやソーセージなどの加工品も惜しむことなくふんだんに振る舞った。
野菜たっぷりのラタトゥイユにミートボールを入れて旨みを足した煮込み料理や、ソーセージにハーブや野菜をベーコンで巻いた炭火焼き、木の板に魚や野菜を載せて蒸し焼きにする燻製料理など、何品も作っていく。
「……おぉ、おお……っ!! な、なんて美味そうなんじゃ……!!」
『ティナー。ごはんー? いい匂いがしてるのねー』
ノアが感嘆の声をあげ、匂いに目を覚ましたアウルムが起きてきた。
「ふふ、たくさん作りましたから、いっぱい食べてくださいね。残ったら倉庫に保存していただいてもいいですし」
「お、おお!! それは嬉しいわい!! しばらくは美味い食事が食べられるわい!」
ティナの料理にノアは大喜びだ。アウルムもしっぽをブンブン振って食べている。
大量に作ったつもりだったが、意外にノアは大食漢で、料理はみるみるうちに減っていく。
「ノアさんはお酒も飲まれるんですよね? おつまみも作りましょうか?」
「なんと! おつまみ! 嬉しいのう! ぜひお願いするぞい!」
倉庫にはワインや酒類も大量に保管されていた。ティナはそれらに合いそうなおつまみを作っていく。
街のパン屋で買ったリュスティックやカンパーニュと、ブルーチーズやカマンベールなどのチーズ類を一緒に盛り付ける。
そして何種類かのきのこで作ったアヒージョを作った。
「おお! これはいかん……!! 酒がどんどん進んでしまう……!!」
ノアは倉庫から持ってきたワインを飲みながらおつまみを堪能する。
ちなみにノアはアヒージョで残ったオイルまでパンと一緒に食べてくれた。食べっぷりがとても気持ちがいい。
「あ~~。満足じゃ~~。こんな美味い料理は500年振りじゃ~~」
ワインを飲んだノアはほろ酔いで、とても気分がよさそうだ。もし明日二日酔いになっていたら、治癒魔法で直してあげようとティナは思う。
「ふふ、喜んでもらえて嬉しいです」
「大喜びじゃよ~~。嬢ちゃんにはお礼をせんといかんのう~~」
よほど嬉しかったのか、ノアはティナに何かお礼をしたいと言う。
むしろティナがノアにお礼をしたかったから料理を振る舞ったのに、それではお礼の意味がなくなってしまう。
「お礼なんてとんでもないです……! ……あ。それじゃあ、ここにしばらくテントを張らしていただいてもいいですか?」
「……ん? 外にテントを張るのかのう? なら、もう一つ部屋を拡張するから、そこで暮らせばいいぞ」
ノアの小屋にはいくつか部屋があるが、書庫だったり研究室だったりして、客室のようなものが無かった。
だからティナは外にテントを張らしてもらい、しばらくここで過ごさせてもらおうと思っていたのだが……。
さすが大魔道士というべきか、ノアはいとも簡単にティナ用の部屋を用意してくれたのだった。
黙り込んでしまったティナを気遣うように、ノアが食事にしようと言ってくれた。
「はい、そうですね。じゃあ、私がノアさんにご馳走しますよ」
ティナは感謝の気持ちを込めて、ノアに食事を作ってあげたいと思う。
この場所でノアに出会えたのは僥倖の極みだろう。彼に出会わなければきっと、道に迷わなかったとしても、精霊王に会えなかったような気がするのだ。
「そうかそうか! そりゃ楽しみじゃわい! 人の手料理なんぞ何年振りかのう……」
「えへへ。料理上手じゃありませんけど、食材をたくさん持っていますから」
それからティナは、いつの間にか眠っていたアウルムを起こさないように、料理を作り始めた。
街で買ったチーズやソーセージなどの加工品も惜しむことなくふんだんに振る舞った。
野菜たっぷりのラタトゥイユにミートボールを入れて旨みを足した煮込み料理や、ソーセージにハーブや野菜をベーコンで巻いた炭火焼き、木の板に魚や野菜を載せて蒸し焼きにする燻製料理など、何品も作っていく。
「……おぉ、おお……っ!! な、なんて美味そうなんじゃ……!!」
『ティナー。ごはんー? いい匂いがしてるのねー』
ノアが感嘆の声をあげ、匂いに目を覚ましたアウルムが起きてきた。
「ふふ、たくさん作りましたから、いっぱい食べてくださいね。残ったら倉庫に保存していただいてもいいですし」
「お、おお!! それは嬉しいわい!! しばらくは美味い食事が食べられるわい!」
ティナの料理にノアは大喜びだ。アウルムもしっぽをブンブン振って食べている。
大量に作ったつもりだったが、意外にノアは大食漢で、料理はみるみるうちに減っていく。
「ノアさんはお酒も飲まれるんですよね? おつまみも作りましょうか?」
「なんと! おつまみ! 嬉しいのう! ぜひお願いするぞい!」
倉庫にはワインや酒類も大量に保管されていた。ティナはそれらに合いそうなおつまみを作っていく。
街のパン屋で買ったリュスティックやカンパーニュと、ブルーチーズやカマンベールなどのチーズ類を一緒に盛り付ける。
そして何種類かのきのこで作ったアヒージョを作った。
「おお! これはいかん……!! 酒がどんどん進んでしまう……!!」
ノアは倉庫から持ってきたワインを飲みながらおつまみを堪能する。
ちなみにノアはアヒージョで残ったオイルまでパンと一緒に食べてくれた。食べっぷりがとても気持ちがいい。
「あ~~。満足じゃ~~。こんな美味い料理は500年振りじゃ~~」
ワインを飲んだノアはほろ酔いで、とても気分がよさそうだ。もし明日二日酔いになっていたら、治癒魔法で直してあげようとティナは思う。
「ふふ、喜んでもらえて嬉しいです」
「大喜びじゃよ~~。嬢ちゃんにはお礼をせんといかんのう~~」
よほど嬉しかったのか、ノアはティナに何かお礼をしたいと言う。
むしろティナがノアにお礼をしたかったから料理を振る舞ったのに、それではお礼の意味がなくなってしまう。
「お礼なんてとんでもないです……! ……あ。それじゃあ、ここにしばらくテントを張らしていただいてもいいですか?」
「……ん? 外にテントを張るのかのう? なら、もう一つ部屋を拡張するから、そこで暮らせばいいぞ」
ノアの小屋にはいくつか部屋があるが、書庫だったり研究室だったりして、客室のようなものが無かった。
だからティナは外にテントを張らしてもらい、しばらくここで過ごさせてもらおうと思っていたのだが……。
さすが大魔道士というべきか、ノアはいとも簡単にティナ用の部屋を用意してくれたのだった。
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