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隠者1
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『どうするー? 離れていくけど追いかけるー?』
アウルムが気付いた何者かは、ティナたちがいる方向とは反対側の、森の奥へ移動しているらしい。
「……どうしよう。ただの冒険者かもしれないし……。悪い感じはする?」
『ううんー。しないよー』
もし悪意を持った者がこの森を徘徊しているのであれば、放っておくことはできない。しかし悪意なくただ森を散策しているのなら、ティナたちに害が及ぶことはないだろう、とティナは判断する。
「じゃあ、今は追うのはやめておこうか。私たちもテントに戻ろうね」
この森には人の手が入った形跡がなかったからすっかり油断していたが、全くの無人というわけではなさそうだ。
そのうち誰かと森の中で出会うかもしれないので、ティナは警戒を怠らないようにしなければ、と気を引き締める。
そう考えていたティナだったが、次の日さっそくその人物と遭遇してしまう。
「おやおや~? 誰か入って来たな、と思ったら、お嬢ちゃんたちかね」
テントをたたみ、再びアウルムと森の中を進んでいたティナは、森の中で小さい小屋を発見する。
その小屋には、長い髭を生やした老人が一人住んでいたのだ。
「え、あ、はい。初めまして。私はティナと言います。えっと……」
「ワシはノアじゃ。ノアじいと呼んでくれてかまわんぞ? ふぉっふぉっ」
「いきなりそれはちょっと……。えっと、ノアさん、とお呼びしてもいいですか?」
初対面でいきなり愛称呼びは気が引ける。それにノアは世捨て人のように見えるが、只者じゃない雰囲気を醸し出しているのだ。
「……そうか……それは残念じゃ……」
本当に残念そうなノアだったが、「まあ、そのうちにな」と言っていたので、愛称呼びは諦めていないようだ。
「あの、ノアさんはここで暮らして長いんですか?」
小屋が建っている場所は、かなり森の奥の方だと思う。そんな場所に人が住めるほどの建物を建てるのは、かなり難しいのではないか……とティナは考える。
「そうさなぁ……かれこれ30年ぐらいかのう……? 昔のことなんで忘れてもうたわ」
「えっ?! 30年、ですか?!」
まるで大したことではないように、ふぉっふぉっふぉと笑うノアだったが、30年という月日はそう簡単に笑い飛ばしていい時間じゃない、とティナは思う。
どうしてそんなに長い時間、こんな森の奥深くに一人で暮らしているのだろう、と不思議に思うティナだったが、人には何かしら事情があるのだ。
自分だってもしかしたら、ノアのように何十年もここで暮らすかもしれないのだ。
「その間、この小屋にたどり着いた人はいませんでしたか?」
いくら事情があるとはいえ、30年間も一人で過ごすのはとても寂しいのではないか……。もし自分だったら耐えられるかどうかわからない。
「ふぅむ。たまにそういう人間はいるのぅ……。最近では冒険者の夫婦とか」
「え?! 冒険者の夫婦?! あ、でも最近か……」
一瞬、両親がここに来たのかと期待したティナだったが、最近来たのなら人違いだろう。
アウルムが気付いた何者かは、ティナたちがいる方向とは反対側の、森の奥へ移動しているらしい。
「……どうしよう。ただの冒険者かもしれないし……。悪い感じはする?」
『ううんー。しないよー』
もし悪意を持った者がこの森を徘徊しているのであれば、放っておくことはできない。しかし悪意なくただ森を散策しているのなら、ティナたちに害が及ぶことはないだろう、とティナは判断する。
「じゃあ、今は追うのはやめておこうか。私たちもテントに戻ろうね」
この森には人の手が入った形跡がなかったからすっかり油断していたが、全くの無人というわけではなさそうだ。
そのうち誰かと森の中で出会うかもしれないので、ティナは警戒を怠らないようにしなければ、と気を引き締める。
そう考えていたティナだったが、次の日さっそくその人物と遭遇してしまう。
「おやおや~? 誰か入って来たな、と思ったら、お嬢ちゃんたちかね」
テントをたたみ、再びアウルムと森の中を進んでいたティナは、森の中で小さい小屋を発見する。
その小屋には、長い髭を生やした老人が一人住んでいたのだ。
「え、あ、はい。初めまして。私はティナと言います。えっと……」
「ワシはノアじゃ。ノアじいと呼んでくれてかまわんぞ? ふぉっふぉっ」
「いきなりそれはちょっと……。えっと、ノアさん、とお呼びしてもいいですか?」
初対面でいきなり愛称呼びは気が引ける。それにノアは世捨て人のように見えるが、只者じゃない雰囲気を醸し出しているのだ。
「……そうか……それは残念じゃ……」
本当に残念そうなノアだったが、「まあ、そのうちにな」と言っていたので、愛称呼びは諦めていないようだ。
「あの、ノアさんはここで暮らして長いんですか?」
小屋が建っている場所は、かなり森の奥の方だと思う。そんな場所に人が住めるほどの建物を建てるのは、かなり難しいのではないか……とティナは考える。
「そうさなぁ……かれこれ30年ぐらいかのう……? 昔のことなんで忘れてもうたわ」
「えっ?! 30年、ですか?!」
まるで大したことではないように、ふぉっふぉっふぉと笑うノアだったが、30年という月日はそう簡単に笑い飛ばしていい時間じゃない、とティナは思う。
どうしてそんなに長い時間、こんな森の奥深くに一人で暮らしているのだろう、と不思議に思うティナだったが、人には何かしら事情があるのだ。
自分だってもしかしたら、ノアのように何十年もここで暮らすかもしれないのだ。
「その間、この小屋にたどり着いた人はいませんでしたか?」
いくら事情があるとはいえ、30年間も一人で過ごすのはとても寂しいのではないか……。もし自分だったら耐えられるかどうかわからない。
「ふぅむ。たまにそういう人間はいるのぅ……。最近では冒険者の夫婦とか」
「え?! 冒険者の夫婦?! あ、でも最近か……」
一瞬、両親がここに来たのかと期待したティナだったが、最近来たのなら人違いだろう。
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