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自由2

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 ちなみにブレンドレル魔法学院は王都のほぼ真ん中、貴族街に位置しているため、人通りはかなり多い。
 今もたくさんの人間が行き交っているが、誰一人としてクリスティナを見ている者はいなかった。
 それは何故かというと、クリスティナは自分の周りだけに結界を張っているからだ。

 膨大な光の<神聖力>を持つクリスティナは光の屈折を調整し、簡易の光学迷彩で自分の姿を隠しつつ、結界で防音していた。
 だから誰もクリスティナの百面相や大きな独り言に気付かないので、彼女は溜まっていた鬱憤を思いっきりぶち撒けることが出来ている。

「……ふぅ。いっぱい叫んだらスッキリした。もう王宮や神殿のことなんて綺麗サッパリ忘れてこれからは悠々自適のスローライフだ!!」

 気持ちを切り替えたクリスティナは、軽い足取りで王都の街を歩いていく。

 貴族街の道は広く街並みは綺麗に保たれていたが、クリスティナは貴族街から外れるように反対方向に向かう。

 それからしばらくすると、雑多な街並みの市場のような場所へ辿り着いた。
 ここは中流階級の人間が暮らすエリアで、先程までいた貴族街より人が多く、活気に溢れている。

 クリスティナが結界を解き、人ごみに紛れながら歩いていると、道の端に人相の悪い男達がたむろしていた。
 その内の一人がクリスティナに気付くと、ニヤニヤと笑みを浮かべて近づいて来る。

「おう! ティナじゃねぇか!!」

 仲間の声でクリスティナに気づいた他の男達が、ゾロゾロとクリスティナを取り囲む。

「お! ホントだ! こんな時間に来るなんて珍しいなぁ!」

「どうした? ついに神殿から逃げ出してきたのか?」

「いやいや、きっとボンクラ王子に愛想を尽かしたんだろ! あの王子は頭の中がお花畑だからよ!」

「違ぇねぇ!! ガハハハハッ!!」

 人相が悪い男達はクリスティナの知り合いのようだった。
 その男達はゲラゲラ笑いながら好き勝手に予想を立てているが、あながち間違っていないところが恐ろしい。

「両方!!」

 下品に笑う男達に構わずクリスティナが答えた。
 しかしその答えに、男達は一瞬意味がわからなかったようで、思わずクリスティナに聞き返す。

「はぁ?! 何だって?」

「だから両方!! 婚約破棄と聖女の称号を剥奪されたの!! それと学院追放も追加で!!」

「「「「「………………」」」」」

 クリスティナの返答に男達は絶句する。驚き過ぎて言葉が出ないようだ。

「……えっと、そのことはもうギルド長には……?」

「まだだよ。今から報告に行くつもり」

 放心状態から我に返った男が、恐る恐るクリスティナに問いかけた。まさか冗談だと思っていたことが現実になるとは夢にも思わなかったのだ。

「おいおい! マジかよ……!」

「俺、ちょっと皆んなに知らせてくる!!」

 仲間の男が慌てて走っていく。他の仲間にクリスティナのことを伝えに言ったのだろう。この様子では明日には噂が王都中に広がっているかもしれない。

「俺達もギルドに戻るぞ! おいティナ! 後で詳しく教えてくれよな!」

「はいはい、ベルトルドさんに報告が終わったらね」

 クリスティナはひらひらと男達に手をふると再び歩き出した。その後ろを大柄の男達がゾロゾロとついて行く。

 小柄な少女の後ろを人相の悪い大柄な男達がついていく姿は、一見すると異様な光景に見える。何も知らない人間が見ると犯罪臭がプンプンだ。
 しかし道行く人々はクリスティナの容姿に見惚れるものの、男達を見ても怖がる様子はない。

 ──何故なら、この人相が悪い男達はゴロツキでも何でも無く、れっきとした冒険者だったからだ。

 学院でフレードリクがクリスティナに言った「ゴロツキ共や賤民達」とは、王都のギルド本部に在籍している冒険者達のことだったのだ。
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