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番外編1-4 ベラの家族観
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子供たちにおやすみの挨拶をしてから寝室に向かう。それはヘンリーが生まれてから続く、俺達の日課だった。
そして、俺達はベッドに入ってからもすぐには眠らない。ほんの少しだけおしゃべりをして一日を終えるのだ。
「モラン侯爵家でも家族会議をしていたの?」
前々から気になっていたことを何となく今、聞いてみた。
「いいえ」
意外な返事に驚いているとベラは家族会議の意図を話始めた。
「お父様とお母様は難しい話をする時は、いつも二人で話し合って決めていたんです。私、それが少し寂しくて嫌だったんです」
「それは二人が大人で親だからだろう。ベラは子供だったんだから仕方がないよ」
「それは分かっています。でも、悔しかったんです。私だってお父様の考えをちゃんと聞かせてもらえる機会があれば、少しはお父様の役に立てたのに。それに、エドと楽しい思い出も作れたと思うと何だかなあって」
「ん? 何? どういうこと?」
最後の一文が前の言葉と脈絡がなくて混乱する。俺との思い出って何のことだろう?
「結婚式の前に教えてもらったんですけど。お父様はエドの婚約者に私を推薦するべきかどうかですごく悩んだそうです。でも、色々と考えた末に推薦することはなく、最終的に決まったのが・・・・・・」
「フィリップというわけか。それは残念だな」
俺が言うとベラは頷いた。
「私のことなんだから、私にも一言くらい話しておいて欲しかったです。もし、学園に入学する前にエドと会う機会があれば私達はすぐに恋人になっていたんじゃないかと考えちゃうんです。そうしたら、楽しい学園生活を送れたかもしれないのにって思うとお父様を恨んじゃいます」
可愛らしい恨み言を言うベラが愛おしくて俺は彼女の頬にキスをした。
「君と学園のイベントを一緒に過ごせたらきっと楽しかっただろうね」
「ええ」
「でも、遠くから見るベラはいちいち可愛くて仕方がなかったら、あれはあれで素敵な思い出だ」
「私もよくエドを見るべきでした」
あんなにも俺に無関心だったベラの口からそんな言葉が出るなんて嬉しいことこの上ない。
幸せな気分に浸っていたのに、ベラは急に真剣な顔になった。
「ルーシーはいずれ大きくなったらどこかに嫁ぐことになります」
「そうだね」
俺達のかわいい天使を嫁に出すなんて考えたくはないけれど、いつまでも俺達の手元においておく訳にもいかない。いずれは誰かと政略結婚をすることになるだろう。
「だから、ルーシーには知っておいて欲しいんです。私達やヘンリーの考えを。その上で自分が何をすべきなのかを考えて幸せになって欲しい」
ベラの願いにも似た言葉がいじらしくて、俺は彼女の唇にキスをした。
「ルーシーにはエドくらい・・・・・・、ううん。エドよりももっと素敵な人を見つけなきゃ」
「いるかな、そんな人」
冗談でそう言ったら、ベラは少し考える素振りを見せて「いないわ」と答えた。
バカップルのようなやり取りに俺達は顔を見合わせて笑った。
「ルーシーとヘンリーには、私達と同じくらい伴侶と仲良くして欲しいわ」
「そうだね。・・・・・・それじゃあ、久しぶりに"仲良く"しようか」
俺は返事も待たずにベラにキスをした。ベラは異論はないようで俺の首筋に腕を回してくる。
明日も早いけど関係ない。いつものルーティンが崩れるかもしれないけれど、たまにはそんな日があってもいいじゃないか。
そんなことを考えていたら、ベラは「おはようのキスをできなかったらごめんなさいね?」といたずらっぽく言った。
番外編「ベラの家族観」 了
そして、俺達はベッドに入ってからもすぐには眠らない。ほんの少しだけおしゃべりをして一日を終えるのだ。
「モラン侯爵家でも家族会議をしていたの?」
前々から気になっていたことを何となく今、聞いてみた。
「いいえ」
意外な返事に驚いているとベラは家族会議の意図を話始めた。
「お父様とお母様は難しい話をする時は、いつも二人で話し合って決めていたんです。私、それが少し寂しくて嫌だったんです」
「それは二人が大人で親だからだろう。ベラは子供だったんだから仕方がないよ」
「それは分かっています。でも、悔しかったんです。私だってお父様の考えをちゃんと聞かせてもらえる機会があれば、少しはお父様の役に立てたのに。それに、エドと楽しい思い出も作れたと思うと何だかなあって」
「ん? 何? どういうこと?」
最後の一文が前の言葉と脈絡がなくて混乱する。俺との思い出って何のことだろう?
「結婚式の前に教えてもらったんですけど。お父様はエドの婚約者に私を推薦するべきかどうかですごく悩んだそうです。でも、色々と考えた末に推薦することはなく、最終的に決まったのが・・・・・・」
「フィリップというわけか。それは残念だな」
俺が言うとベラは頷いた。
「私のことなんだから、私にも一言くらい話しておいて欲しかったです。もし、学園に入学する前にエドと会う機会があれば私達はすぐに恋人になっていたんじゃないかと考えちゃうんです。そうしたら、楽しい学園生活を送れたかもしれないのにって思うとお父様を恨んじゃいます」
可愛らしい恨み言を言うベラが愛おしくて俺は彼女の頬にキスをした。
「君と学園のイベントを一緒に過ごせたらきっと楽しかっただろうね」
「ええ」
「でも、遠くから見るベラはいちいち可愛くて仕方がなかったら、あれはあれで素敵な思い出だ」
「私もよくエドを見るべきでした」
あんなにも俺に無関心だったベラの口からそんな言葉が出るなんて嬉しいことこの上ない。
幸せな気分に浸っていたのに、ベラは急に真剣な顔になった。
「ルーシーはいずれ大きくなったらどこかに嫁ぐことになります」
「そうだね」
俺達のかわいい天使を嫁に出すなんて考えたくはないけれど、いつまでも俺達の手元においておく訳にもいかない。いずれは誰かと政略結婚をすることになるだろう。
「だから、ルーシーには知っておいて欲しいんです。私達やヘンリーの考えを。その上で自分が何をすべきなのかを考えて幸せになって欲しい」
ベラの願いにも似た言葉がいじらしくて、俺は彼女の唇にキスをした。
「ルーシーにはエドくらい・・・・・・、ううん。エドよりももっと素敵な人を見つけなきゃ」
「いるかな、そんな人」
冗談でそう言ったら、ベラは少し考える素振りを見せて「いないわ」と答えた。
バカップルのようなやり取りに俺達は顔を見合わせて笑った。
「ルーシーとヘンリーには、私達と同じくらい伴侶と仲良くして欲しいわ」
「そうだね。・・・・・・それじゃあ、久しぶりに"仲良く"しようか」
俺は返事も待たずにベラにキスをした。ベラは異論はないようで俺の首筋に腕を回してくる。
明日も早いけど関係ない。いつものルーティンが崩れるかもしれないけれど、たまにはそんな日があってもいいじゃないか。
そんなことを考えていたら、ベラは「おはようのキスをできなかったらごめんなさいね?」といたずらっぽく言った。
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