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13-1 パーティでのハプニング

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 翌朝のゴシップ紙には、私がエドを家に招いたことが書かれていた。自室でエドを誘惑して、大人の関係になったということになっていた。
 お母様が見る前に、お父様がゴシップ紙を回収してくれておいてよかった。もし、お母様が見ていたら怒りのあまり家の中をめちゃくちゃにしていたに違いない。

「ベラ、こんな物を見せてすまないな」
「いえ」
 お父様は、この記事を読んでゴシップ紙を相手に訴えることを決めたそうだ。だから、私に記事を見せてきて、そのことを伝えた。
 三流の新聞社を訴えると恥をかいてしまわないかと問うと、お父様はそれでも訴えるのだと説明した。
「私も人の親だ。自分の娘がこんな風に書かれるなんて最早我慢ならんよ。この記事を書いた人間を徹底的に追い詰める」
 いつも冷静なお父様にしては珍しく、語気が強かった。本当に、今日の記事には腹が立ったのだろう。

「ゴシップ紙のことは、エドワード殿下と国王陛下もご存知のようでな。記事のネタにされないために、いっそのこと婚約を早く行おうと提案されたよ」
 昨日、エドが言っていたことだった。
「私もそうした方がいいと思っている。ベラも構わないね?」
「はい。何も問題ありません」
「では、来月の頭には発表することになるだろう。その前に、国王陛下の下へご挨拶にいかねばならないな」
「そうですね」

 話が終わったから部屋を出ようとした時、お父様は今日の私の予定について聞いてきた。
「今日の夜、アンドレ公爵夫人のパーティに出席します」
「アンドレ公爵夫人か」
 公爵夫人は国王陛下の妹であり、エドの叔母にあたる人だ。親交のない彼女からパーティの招待状が来たから驚いた。きっと、公爵夫人は、私がエドの婚約者になることが内定しているのを知っているのだろう。
「夫人は国王陛下と非常に仲の良いことで知られている。嫌われないように気をつけなさい」
「はい」
「それから、夫人の好きなブランデーがあるからお土産に持って行きなさい」
「ありがとうございます」
 私はお礼を言うと部屋から出た。







 お父様に言われた通り、ブランデーを持参してパーティに赴いた。会場に着くと、まずアンドレ公爵夫人の下に行き、彼女に挨拶をした。
「アンドレ公爵夫人、お招きいただきありがとうございます。イザベラ・モランです」
「まあ! イザベラ嬢。お会いできて嬉しいわ」
 夫人はエドと同じ青い瞳を細めて笑った。夫人がふくよかな体型をしているのも相まって、とても優しそうな人に見える。
「夫人がお好きだというブランデーを持って参りました。どうぞお納め下さい」
「あら。気を使わなくていいのに」
 そう言いながらも、夫人はブランデーを受け取った。
「でも、折角だからいただくわ。私がこのお酒を好きだってことはモラン侯爵から聞いたの?」
「はい」
「やっぱり。モラン侯爵は無愛想だけど、記憶力がとてもいいから」
 夫人は朗らかな微笑みを浮かべるとブランデーを従者に手渡した。
「後でエドもやって来るはずだから。それまでは他の方と歓談なさって。あなたに挨拶したい方も大勢いるのよ?」
 そう言われても今一つ実感が湧かない。でも、反論するわけにもいかず、私はアンドレ公爵夫人の下を離れた。

 パーティには、よく知った人は来ていないようだった。私には友人と呼べるような人は少ないから、こういう場所では時間をもて余すことが多い。することがないからひとまずテーブルに向かい、並べられたお茶菓子を取っていると、声をかけられた。
「イザベラ・モラン侯爵令嬢でしょうか?」
 私とそんなに歳の変わらない女性だった。アンドレ公爵夫人と良く似ている。夫人の娘かしら。
「はい。・・・・・・すみません、どちら様でしょうか」
「ローズマリー・アンドレです」
 やはり公爵夫人の娘だった。私達より2つ年上のローズマリー嬢は、少し前まで隣国に留学していた。だから、学園でも顔を合わせたことがなかった。

「はじめまして、ローズマリー嬢」
「帰国してみたらびっくりしたわ。エドが婚約するって言うんですもの」
 ローズマリー嬢がそう言った途端、周囲の視線が一斉に私に向けられた。でも、それは一瞬のことで、彼らは何事もなかったかのようにまた元の様子に戻った。それが不気味で私は彼らのことが気になって仕方がなかった。
「イザベラ嬢?」
 ローズマリー嬢はきょとんとした顔で私を見つめている。
「ごめんなさい。ぼーっとして」
 私は謝ってから話題を変えた。婚約の発表が正式にされていない今は、エドとの婚約を匂わせるような発言をしたくなかった。
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