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5 噂を広める悪人は誰?
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家に帰ると、私は次のデートに着ていくためのコートを借りようとお母様の部屋に向かった。
ドアをノックして部屋の中に入ると、お母様は読んでいた新聞を机の上に置いた。その見出しには「イザベラ嬢、婚約解消から日を開けずにデートか!?」と書かれているのが見えた。
私の視線に気づいたのだろう。お母様は慌てて新聞を折りたたんだ。
「どうしたの?」
「今度エドワード殿下と自然公園に行くことになりました。ですので、コートを借りたいのですが」
「秋口にあなた用のコートを新調していたはずよ。後でメイドに持ってくるように伝えておくわ」
「ありがとうございます」
「次のデートは自然公園なのね?」
「はい」
「いいわね。運がよければ可愛らしい小動物に会えるかもしれないわ」
そう言って、お母様はにこりと笑った。
「それにしても、ゴシップ紙にどこから情報が漏れているんでしょうね」
ゴシップ紙の話題を出した途端に、お母様の表情が険しくなった。
「ベラはエドワード殿下と今日会うことを私とお父様以外の誰かに言ったかしら?」
「支度を手伝ってくれたメイド数人と馬車の御者に言いました」
「うちの使用人以外には話していないのね?」
お母様の言葉に私は頷いた。
「この屋敷の中に、おしゃべりな人間がいるのね。見つけて追い出さないといけないわ」
「私が話をした人達は、長い事我が家に仕えてくれています。信用のできる者と思っていたのに・・・・・・」
人間は分からないものだ。そう思ったら、何だか悲しくなってきた。
「そんなに落ち込まないで。もしかしたら、誰かに脅されたり騙されてベラの情報を流してしまったのかもしれないじゃない」
「誰かって?」
そんな都合よく黒幕のような人物がいるのかしら。
「これはあくまでも私の勘だけど。私はフィリップ子息の愛人の仕業だと思うの」
お母様は真剣な顔で言った。
エリナが犯人だとは、到底思えない。私とフィリップ様の婚約が解消されたなら、あの子が私に嫌がらせをしたところで何になるわけでもないのに。
「どうしてです? 何のメリットがあるんですか?」
「メリットなんてないわ。嫉妬にかられてやってるだけよ」
「嫉妬? エリナにあって私にないものなんて、家柄と財産くらいですよ?」
エリナは見た目がかわいらしいのは勿論のこと、明るい性格で社交界でも人気者だった。普段は天真爛漫なところもあるけれど、ここぞというところでは、落ち着いた振る舞いのできる。だから、子爵家に生まれながらにして、高位の貴族達の集まりに呼ばれることもあった。
「彼女が私を恨む理由なんて見つかりません」
「ベラと婚約解消させたのはいいけど、フィリップ子息との結婚が叶わないから、逆恨みでってことはないかしら?」
「私に何かをするくらいなら、マシュー公爵に何かしらのアクションをした方が良くないですか」
「うーん。そう言われればそうね」
お母様はそう言って黙り込んだ。
「単純に、お金が欲しい人か噂話が好きな人が記事にしているだけだと思うんです」
私が言うとお母様は首をひねった。
「でも、何かが引っかかるのよね・・・・・・」
お母様はそう言って腕を組んだ。
「まあ、ゴシップ紙の方は私とお父様の方で何とかするわ。ベラはこれからも念の為に気をつけてね」
「分かりました」
そう言うと、私は部屋を出た。
ドアをノックして部屋の中に入ると、お母様は読んでいた新聞を机の上に置いた。その見出しには「イザベラ嬢、婚約解消から日を開けずにデートか!?」と書かれているのが見えた。
私の視線に気づいたのだろう。お母様は慌てて新聞を折りたたんだ。
「どうしたの?」
「今度エドワード殿下と自然公園に行くことになりました。ですので、コートを借りたいのですが」
「秋口にあなた用のコートを新調していたはずよ。後でメイドに持ってくるように伝えておくわ」
「ありがとうございます」
「次のデートは自然公園なのね?」
「はい」
「いいわね。運がよければ可愛らしい小動物に会えるかもしれないわ」
そう言って、お母様はにこりと笑った。
「それにしても、ゴシップ紙にどこから情報が漏れているんでしょうね」
ゴシップ紙の話題を出した途端に、お母様の表情が険しくなった。
「ベラはエドワード殿下と今日会うことを私とお父様以外の誰かに言ったかしら?」
「支度を手伝ってくれたメイド数人と馬車の御者に言いました」
「うちの使用人以外には話していないのね?」
お母様の言葉に私は頷いた。
「この屋敷の中に、おしゃべりな人間がいるのね。見つけて追い出さないといけないわ」
「私が話をした人達は、長い事我が家に仕えてくれています。信用のできる者と思っていたのに・・・・・・」
人間は分からないものだ。そう思ったら、何だか悲しくなってきた。
「そんなに落ち込まないで。もしかしたら、誰かに脅されたり騙されてベラの情報を流してしまったのかもしれないじゃない」
「誰かって?」
そんな都合よく黒幕のような人物がいるのかしら。
「これはあくまでも私の勘だけど。私はフィリップ子息の愛人の仕業だと思うの」
お母様は真剣な顔で言った。
エリナが犯人だとは、到底思えない。私とフィリップ様の婚約が解消されたなら、あの子が私に嫌がらせをしたところで何になるわけでもないのに。
「どうしてです? 何のメリットがあるんですか?」
「メリットなんてないわ。嫉妬にかられてやってるだけよ」
「嫉妬? エリナにあって私にないものなんて、家柄と財産くらいですよ?」
エリナは見た目がかわいらしいのは勿論のこと、明るい性格で社交界でも人気者だった。普段は天真爛漫なところもあるけれど、ここぞというところでは、落ち着いた振る舞いのできる。だから、子爵家に生まれながらにして、高位の貴族達の集まりに呼ばれることもあった。
「彼女が私を恨む理由なんて見つかりません」
「ベラと婚約解消させたのはいいけど、フィリップ子息との結婚が叶わないから、逆恨みでってことはないかしら?」
「私に何かをするくらいなら、マシュー公爵に何かしらのアクションをした方が良くないですか」
「うーん。そう言われればそうね」
お母様はそう言って黙り込んだ。
「単純に、お金が欲しい人か噂話が好きな人が記事にしているだけだと思うんです」
私が言うとお母様は首をひねった。
「でも、何かが引っかかるのよね・・・・・・」
お母様はそう言って腕を組んだ。
「まあ、ゴシップ紙の方は私とお父様の方で何とかするわ。ベラはこれからも念の為に気をつけてね」
「分かりました」
そう言うと、私は部屋を出た。
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