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2 噂はあっという間に広がって

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 次の日の朝、私はお母様に叩き起こされた。

「ベラ! これはどういうことなの?」
 新聞を片手にお母様は声をあげた。
 朝の支度もしていないのに、差し出された新聞を読んだ。

 "イザベラ・モラン侯爵令嬢、マシュー公爵子息との婚約解消後、すぐにエドワード王太子殿下から婚約を申し込まれる!"

 一面の長い見出しには、大きな文字でそう書かれていた。

「ああ、昨日の卒業パーティのことですね」
「昨日のって、これは事実だというの?」
「はい」
 記事の内容を読んでみたけれど、概ね内容はあっている。
 お母様は額に手を当てて頭を振った。
「何がどうなっているの!」
「この記事に書いている通りです」
「ああ! あなたはこんな事があっても冷静なのね。本当に信じられない! 旦那様~!」
 お母様は、大きな声をあげながら私の部屋を出ていった。お父様に昨日のことを報告するつもりなのだろう。

 お母様と入れ違いでメイドが入ってきたから、私は朝の支度を始めた。







 着替えを済ませて下に降りて行ったら、お父様は怖い顔で私を迎え入れた。隣に座っているお母様から話を聞いたようだ。
「ここに書かれている事は事実なんだな?」
「はい」
「何で昨日、帰ってすぐに言わなかった?」
「お父様もお母様も寝ていらしたので」
「叩き起こしてでも報告すべき内容だ」
「ごめんなさい」
 お父様は呆れたと言わんばかりに首を振った。横で黙って話を聞いていたお母様はお父様の背中に手を当てた。
「旦那様、怒るべき相手はベラではありませんよ」
「ああ、そうだな」
 お父様はそう言うと再び私の方を向いた。
「マシュー公爵と話をしてくる。向こうが大衆の面前で婚約破棄を宣言した上、王太子殿下から婚約を申し込まれたのだ。フィリップ子息の望む通り、婚約を解消せざるを得んが」
「問題ないです」
「そうか」
 お父様は苦笑をした。

 私達の婚約は家同士の利害関係によって成り立ったものだ。私とフィリップ様の気持ちは関係なかった。それに、私達は愛し合っていないし、フィリップ様はエリナのことが好きだ。だから、私とフィリップ様の間においていえば、婚約の解消は何の問題もなかった。
 
「エドワード殿下とはどうなんだ?」
「どう、とは?」
「もう! ベラったら、分かるでしょう?」
 お母様が口を挟んだ。何のことか分からなくて首を傾げたら、お母様は「困った子」と呟いた。
「殿下とは恋仲だったの?」
 言われてやっと分かった。恋愛関係にあったのかどうか聞きたかったらしい。
「いいえ。時折お話をすることはありましたが、在学中は特に何も」
「そう」
 お母様はお父様をちらりと見た。
「エドワード殿下のお考えが分からない以上、婚約についての返答は後回しだ。ベラ、くれぐれも軽率な行動は取らないように」
「分かりました」

 お父様は話を終えると、書斎へと向かった。私とお母様はいつもより少し遅い、朝食を食べることになった。
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