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28-5 昔の私
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「何笑ってるのよ」
フェイが低い声で言った。
「あなたには銀の冠がよく似合うだろうなって思って」
笑って答えると、フェイは目を丸くした。
「さっきからどうしたの? 怒ったり驚いたりして」
「シアっ!」
フェイは突然、私の肩にすがりついて来た。そして、微かにフェイのすすり泣く声が聞こえた。
「フェイ? 本当にどうしちゃったの?」
左手を差し伸べて指に座るように促すと、フェイは素直に応じてきた。暗い顔で俯くフェイを慰めようと、私は右手の指先で彼女の頭を撫でた
「ごめんね、シア。私、嫌な子だったわ」
フェイは涙を乱暴に拭うと呟いた。
「え? 何の話?」
「みんな、私なんかティターニアにはなれないっていうから・・・・・・」
何となくフェイの言いたい事が分かった。
「だから私もあなたを馬鹿にしているんだと思ったの?」
「うん」
バツが悪そうに言うフェイに私は思わず苦笑した。
「他の妖精や人がフェイの夢を馬鹿にしたって、私は応援するわ」
「ありがとう。例えお世辞でも嬉しい言葉だわ」
「お世辞なんかじゃないわよ。優しくて美しくて、それに好奇心が旺盛で行動力に溢れるフェイこそがティターニアに相応しいって信じてる」
笑って言えばフェイの瞳からまたポロポロと涙が溢れた。
「もう泣かないで」
「ごめん。さっきと逆になっちゃったわね」
フェイは泣きながら笑うと、涙を拭った。
「ねえ、せっかくだからティターニアについてもっと教えてくれない?」
何か少しでも力になれる事を探したくて質問すると、フェイはぽつぽつと話し始めた。
「ティターニアはね、代々、銀の冠と金細工の首飾り、ガラスの靴を身に着けるの」
「素敵。フェイならきっとどれも似合うわ」
私の言葉にフェイは照れくさそうに笑った。
「シアの期待に応えて、その姿を見せてあげたいんだけどね。ただ、それを身に着けるための資格がいくつかあるの。そして、その中でも神聖力の無さがネックになっているわ」
「つまり、逆に言えば神聖力さえ身に着ければいいってこと?」
「ええ。他の部分は何とか努力で補えると思うわ」
「それなら、私の神聖力を貸してあげられたらいいんだけどね・・・・・・」
「それ、本気で言ってる?」
フェイがぽつりと呟いた。目の端に赤さを残したまま、真剣な眼差しで私の目を見つめている。
「勿論よ。フェイの言う通り、私の神聖力は宝の持ち腐れになるでしょう? "ジョルネスの娘"の神聖力は誰かのために使うべき力なのによ? だから、力を使わないのなら、フェイにあげたいと思うのは当然じゃないかしら?」
「もったいないものね」
「それは違うわ」
私が否定すると、フェイは首を傾げた。
「フェイが困っているから。大切な友達が困っているから、私はこの力をあなたに貸したいと思ったの」
私はフェイを真っ直ぐに見据えた。
「何か方法があれば、すぐにでも貸し出すんだけど・・・・・・」
ジョルネス城にいた頃であれば、書庫に収められた本で調べられた。明確な答えは見つからなくても、何かしらの解決の糸口は見つかったかもしれない。
でも、今の私は平凡な平民の子として暮らし、人里離れた山に住んでいる。魔法や神聖力を調べる事は、不可能に近いだろう。
「もどかしいわ」
私は思わず呟いた。
「本当に、・・・・・・真剣に、私のために考えてくれているのね」
フェイの目の淵がまたキラキラと輝いていた。「泣かないで」と言おうとした所で、フェイは口を開いた。
「ねえ、シア。あなたの神聖力を借りられる方法が一つだけあるの」
「本当!? ねえ、どんな方法なの?」
興奮を抑えきれない私を見て、フェイの口からは小さな笑い声が漏れた。
でも、それは束の間の事で、フェイは再び真剣な顔つきに戻って言った。
「私と契約を結ぶの。そうすれば、シアの神聖力を私が借りる事ができるわ」
フェイがそう言い終わるや否や、私は「結ぶわ!」と言い放った。
フェイが低い声で言った。
「あなたには銀の冠がよく似合うだろうなって思って」
笑って答えると、フェイは目を丸くした。
「さっきからどうしたの? 怒ったり驚いたりして」
「シアっ!」
フェイは突然、私の肩にすがりついて来た。そして、微かにフェイのすすり泣く声が聞こえた。
「フェイ? 本当にどうしちゃったの?」
左手を差し伸べて指に座るように促すと、フェイは素直に応じてきた。暗い顔で俯くフェイを慰めようと、私は右手の指先で彼女の頭を撫でた
「ごめんね、シア。私、嫌な子だったわ」
フェイは涙を乱暴に拭うと呟いた。
「え? 何の話?」
「みんな、私なんかティターニアにはなれないっていうから・・・・・・」
何となくフェイの言いたい事が分かった。
「だから私もあなたを馬鹿にしているんだと思ったの?」
「うん」
バツが悪そうに言うフェイに私は思わず苦笑した。
「他の妖精や人がフェイの夢を馬鹿にしたって、私は応援するわ」
「ありがとう。例えお世辞でも嬉しい言葉だわ」
「お世辞なんかじゃないわよ。優しくて美しくて、それに好奇心が旺盛で行動力に溢れるフェイこそがティターニアに相応しいって信じてる」
笑って言えばフェイの瞳からまたポロポロと涙が溢れた。
「もう泣かないで」
「ごめん。さっきと逆になっちゃったわね」
フェイは泣きながら笑うと、涙を拭った。
「ねえ、せっかくだからティターニアについてもっと教えてくれない?」
何か少しでも力になれる事を探したくて質問すると、フェイはぽつぽつと話し始めた。
「ティターニアはね、代々、銀の冠と金細工の首飾り、ガラスの靴を身に着けるの」
「素敵。フェイならきっとどれも似合うわ」
私の言葉にフェイは照れくさそうに笑った。
「シアの期待に応えて、その姿を見せてあげたいんだけどね。ただ、それを身に着けるための資格がいくつかあるの。そして、その中でも神聖力の無さがネックになっているわ」
「つまり、逆に言えば神聖力さえ身に着ければいいってこと?」
「ええ。他の部分は何とか努力で補えると思うわ」
「それなら、私の神聖力を貸してあげられたらいいんだけどね・・・・・・」
「それ、本気で言ってる?」
フェイがぽつりと呟いた。目の端に赤さを残したまま、真剣な眼差しで私の目を見つめている。
「勿論よ。フェイの言う通り、私の神聖力は宝の持ち腐れになるでしょう? "ジョルネスの娘"の神聖力は誰かのために使うべき力なのによ? だから、力を使わないのなら、フェイにあげたいと思うのは当然じゃないかしら?」
「もったいないものね」
「それは違うわ」
私が否定すると、フェイは首を傾げた。
「フェイが困っているから。大切な友達が困っているから、私はこの力をあなたに貸したいと思ったの」
私はフェイを真っ直ぐに見据えた。
「何か方法があれば、すぐにでも貸し出すんだけど・・・・・・」
ジョルネス城にいた頃であれば、書庫に収められた本で調べられた。明確な答えは見つからなくても、何かしらの解決の糸口は見つかったかもしれない。
でも、今の私は平凡な平民の子として暮らし、人里離れた山に住んでいる。魔法や神聖力を調べる事は、不可能に近いだろう。
「もどかしいわ」
私は思わず呟いた。
「本当に、・・・・・・真剣に、私のために考えてくれているのね」
フェイの目の淵がまたキラキラと輝いていた。「泣かないで」と言おうとした所で、フェイは口を開いた。
「ねえ、シア。あなたの神聖力を借りられる方法が一つだけあるの」
「本当!? ねえ、どんな方法なの?」
興奮を抑えきれない私を見て、フェイの口からは小さな笑い声が漏れた。
でも、それは束の間の事で、フェイは再び真剣な顔つきに戻って言った。
「私と契約を結ぶの。そうすれば、シアの神聖力を私が借りる事ができるわ」
フェイがそう言い終わるや否や、私は「結ぶわ!」と言い放った。
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