5 / 23
マジカルチーム、急襲
しおりを挟む
何時だったか。
〔自分が高い魔法力を持っている〕と気付いたのは。
無自覚にそれを使い、多くの人を傷付け。
それと共に、多くの悲しみを生んだ。
もう、そんな事は嫌だ。
誰かを守る事に、力を使いたいんだ。
なのに……。
「隊長殿、如何されました?」
隊長の様子をうかがいながら、隊員の1人が尋ねる。
それを受け、隊長が答える。
「いや、何でも無い。」
「心のお優しいあなたの事だ。これは、本意では無いのでしょう?」
その隊員は、続けて尋ねるも。
『それ以上は言うな』と、他の隊員から止めが入る。
隊員は、隊長に対し謝罪する。
「申し訳有りません、無粋でした。」
「気にするな。」
隊長がそう、声掛けすると。
隊は淡々と、前へ進むのだった。
隊長の【リンネ=スカイホーク】は。
当代一と謳われた、魔法剣士の少女。
その実力は、王の右腕にも成りうると言う。
この世界の7属性〔火水木金土+光闇〕の内、光と闇以外を自在に使いこなす。
その華麗な動きは、敵をも魅了した。
しかし、心の内はそうでは無い。
〔大臣に拾われた孤児〕として育ち。
人を守りたくて修行し、力を付けた。
人の役に立ちたかっただけ。
なのに、今は暗殺へと向かっている。
幼気な少女には、荷が重過ぎる指令だった。
その頃、アンネの町では。
慌ただしさが、町中を駆け巡っていた。
「食料を持って来たぞ!何処に運べば良い!」
「町には簡単に入れるな!備えを!」
「俺達も、イオの役に立つんだ!」
マギクメギトが、何やら仕掛けて来るらしい。
教会から知らせを受けた町長は、議会を開いて策を練った。
イオは『大丈夫』と言ったのだが。
『自分達でも、出来るだけの事はしよう』と議会は決め、住民に協力を願い出た。
日頃からイオに世話になっていた住民は、喜んで引き受けた。
こうして町は、1つになった。
一方、アンナの町に隣接する土地の領主は。
静かに情勢を見守っていた。
事と次第によっては、どちらに付くか考えなくてはならない。
『自分は民を守る義務が有る』、その自覚はあった。
でも心の何処かでは、イオの勝利を願っていた。
そうこうして。
町が一丸となって、備えを急いでいる中。
イオはイオで、いつも通りだった。
「あのー、町の人達が騒いでますけど……。」
アーシェはイオに、そう話し掛けるも。
イオは、気楽な感じを取り続けていた。
『大丈夫』と、イオの顔は。
自信に満ち溢れていた。
何日か経った夜。
リンネ達は、アンナの町の直ぐ近くまで来た。
早速魔法で、様子を探ってみると。
自分達の動きが相手方にバレたらしい、町は万全の防衛体制を敷いていた。
「迂闊には近付けませんね。」
隊員の1人が輪廻に言う。
こちらは7人の小隊、動きは身軽。
固まって行動すれば、難なく突破出来そうだが。
それでは相手に気付かれて、暗殺どころでは無くなる。
リンネが皆に命ずる。
「バラけて動くぞ。魔法で思念を繋いで、やり取り出来る様にしておけ。」
「承知しました。」
隊員達は、そう返事をして。
各自町を包囲する様に、拡散して行った。
バラけてから、数分後。
《何だ!》 《うわぁ!》 《ひいいぃぃ!》
次々と、隊員の思念が途絶えて行く。
何が起きている?
リンネが原因を探ろうとした、その時。
「やあ。あんたがリーダーか。」
……!
気配も無しにイオが突然、リンネの目の前に現れた。
呆気に取られるも、直ぐに戦闘態勢を取る。
それを見て、イオが言う。
「何だ、こっちの話を聞く気は無いのか?」
「話だと?」
「そうだよ。このまま黙って、引き下がってくれないか?」
「そんな事出来るか!」
ターゲットを目前に見据えても、尚も強がるリンネ。
そんな彼女に、イオはこう告げる。
「恩義の有る大臣は裏切れないと?自分の信念を曲げてもか?」
……何故それを!
唖然とし、心の中でそう呟くリンネ。
それに構わず、イオは続ける。
「あんたの事を、俺は何でも知っている。孤児だった事も、人を守る為に力を振るいたい事も。」
「戯言を!」
「戯言?本当にそうか?」
「そ、それは……。」
イオの問いに、リンネの思考が一瞬停止する。
しかし、その一瞬で切り替えた。
「お前を倒さねば、国の民が苦しむ!覚悟!」
そう言ってリンネは、魔法を発動させた。
〔右足に水を〕、〔左足に炎を〕、〔右手に木を〕、〔左手と盾に土を〕、〔剣に金を〕。
「行くぞっ!」
リンネは『ギュンッ!』と素早く、イオの前へ移動する。
と同時に、左足で胴体へキックを。
剣で頭へ斬撃を、仕掛けようとする。
しかし。
シュンッ!
イオがリンネの目の前から、突如居なくなったと同時に。
背中をドンッと押されたリンネ。
「なにをっ!」
今度は、右足で頭を蹴落とそうとすると同時に。
右手から木の枝を鋭く伸ばして、胸元を突き刺そうとする。
その瞬間、またしてもイオは。
目の前から居なくなって、リンネは頭をポンと叩かれた。
イライラして来たリンネは、イオに向かって叫ぶ。
「舐めているのか!戦士なら、堂々と勝負しろ!」
「俺は戦士じゃ無い。だからそんな事、知ったこっちゃない。」
「くそう!こうなったら意地でも!」
《土+木=毒!》
リンネは属性を組み合わせる事で、状態異常の魔法も使えるのだ。
でも出来るだけ、人相手には使いたく無かった。
『目的を達成する為には仕方が無い』、そう割り切った。
「毒の剣を!食らえええぇぇぇ!」
パシッ。
イオは剣を、左手一本で軽々と受け止める。
『自ら毒を食らった』、リンネにはそう見えた。
しかしイオは平然としながら、リンネに告げる。
「悪いな、その手の類も効かないんだ。」
イオの発言後、直ぐに。
《だ、大丈夫ですか!隊長!》
途切れていた隊員の思念が復活した。
リンネは皆に直ぐ様呼び掛ける。
《お前達!無事か!》
《はい!一瞬の事でした……。》
《圧倒されました……。我々では、最早太刀打ち出来ません!》
《せめて、隊長だけでも逃げて下さい!》
隊員達の悲痛な叫びに、リンネは。
《そんな事出来るか!みんなで国に帰るんだ!》
《我々が時間を稼ぎます!早く!》
その直後、隊員達からの思念が一瞬途絶えたかと思うと。
アンネの町の空に、どす黒い雲が広がる。
町の人々は驚いて、外に出て来たが。
誰かが叫んだ。
「危ない!雷の全体魔法が発動するぞ!」
その声に、慌てて皆はな家の中へ避難する。
そして身を屈め、必死になって女神に祈った。
「どうか、我々をお救い下さい!どうか……!」
《早く!》
《出来ない!それにそんな事をしたら、町が……!》
《責は我々が負います!どうか御無事で!》
隊員の、その言葉を最後に。
思念が完全に途絶える。
そして空全体に立ち込める雷雲から、雷の全体魔法が発動した。
筈だった。
「……何も起きないぞ?」
「不発か?」
町の人達は驚くと共に、ホッとした。
隊員達の思念が、《何故だ!》との一言から復活する。
すると。
《俺のせいに決まってるだろ。》
イオが、思念の通信網へ割り込んだ。
冷静な口調でイオは、隊員達にこう明かす。
《町に対して魔法が使えない様、予め【魔法を無効化するトラップ】を仕掛けておいた。何をしようとしても無駄だ。》
《何てこった!そんな事も出来るのか!》
《出来るよ。無効化も反射もな。何なら、己自身で体験してみるか?》
イオにそう言われて、隊員達は魔法の発動を解いた。
その一瞬。
リンネの剣が、イオの首を捉える。
が、刎ね上げる寸前で止めた。
リンネが必死の形相で、イオへ叫ぶ。
「何故避けない!」
「殺気が感じられないからな。元々、攻撃のつもりじゃ無かったんだろ?」
「くっ!」
リンネは観念して、魔法を解くと。
その場にガクッと崩れ落ちた。
「さて。どうするか、ね。」
暗殺と言う状況は、これで収まった。
イオは少し考えると『しょうが無い、こうするか』と呟く。
すると、隊員達は目を丸くした。
彼等の前に、国で帰りを待っている筈の家族が現れたのだ。
イオは、隊員達に告げる。
「俺を討ちそこなったから、国には帰れない。でも家族が心配。なら家族毎、アンナの町に移住すれば良い。」
え? 良いのか?
隊員達は動揺する。
しかし、目の前に居る家族の顔を見ると。
皆決心し、移住する道を選んだ。
イオはリンネに、右手を差し出しながら言う。
「お前も来いよ。」
「わ、私は……。」
リンネは迷うが、イオがその背中を押す。
「隊員達を守れるのは、お前だけなんだぜ?他でも無い、【お前だけ】が出来るんだ。」
「私だけ……。」
リンネは、イオの言葉に心を動かされた。
『ならば』とリンネは、或る事を1つイオに願い出る。
「隊員のこの町での権利を、保障してやってくれ。」
「任せろ。その代わり、ちゃんと彼等の身を守ってやるんだぞ?《お前は、俺が守ってやるから》。」
その言葉を聞いて、リンネは子供の様に泣きじゃくった。
そして、温かい何かに包まれている気がした。
「と言う訳だ。宜しく頼むよ。」
イオの紹介で、隊員達は。
アンナの町へ引き取られた。
警戒する住民も居たが。
イオから直々に説得され、それを受け入れた。
隊員達は町の人達に心から謝り、この町に貢献する事を誓った。
そして。
「だからって、ここに住まわせる事は無いでしょう!」
アーシェがイオに、不満を漏らす。
リンネは、イオの家に同居する事となったのだが。
ア-シェは、リンネが嫌なのでは無く。
イオと2人きりで無くなるのが嫌だったのだ。
「済まない。出来るだけ、迷惑は掛けない様にする。」
深々と頭を下げるリンネ。
『そう言う事だから、仲良くしろよ?』と、イオがアーシェに笑い掛ける。
「べ、別に怒ってなんて……。」
そう呟きながらも。
『私の気持ちを知ってる癖に!』と、心の中で拗ねるアーシェ。
アーシェとイオのやり取りを見て、ふとリンネは思った。
『ずっとイオの傍に居たい』と。
これが、リンネの初恋だった。
〔自分が高い魔法力を持っている〕と気付いたのは。
無自覚にそれを使い、多くの人を傷付け。
それと共に、多くの悲しみを生んだ。
もう、そんな事は嫌だ。
誰かを守る事に、力を使いたいんだ。
なのに……。
「隊長殿、如何されました?」
隊長の様子をうかがいながら、隊員の1人が尋ねる。
それを受け、隊長が答える。
「いや、何でも無い。」
「心のお優しいあなたの事だ。これは、本意では無いのでしょう?」
その隊員は、続けて尋ねるも。
『それ以上は言うな』と、他の隊員から止めが入る。
隊員は、隊長に対し謝罪する。
「申し訳有りません、無粋でした。」
「気にするな。」
隊長がそう、声掛けすると。
隊は淡々と、前へ進むのだった。
隊長の【リンネ=スカイホーク】は。
当代一と謳われた、魔法剣士の少女。
その実力は、王の右腕にも成りうると言う。
この世界の7属性〔火水木金土+光闇〕の内、光と闇以外を自在に使いこなす。
その華麗な動きは、敵をも魅了した。
しかし、心の内はそうでは無い。
〔大臣に拾われた孤児〕として育ち。
人を守りたくて修行し、力を付けた。
人の役に立ちたかっただけ。
なのに、今は暗殺へと向かっている。
幼気な少女には、荷が重過ぎる指令だった。
その頃、アンネの町では。
慌ただしさが、町中を駆け巡っていた。
「食料を持って来たぞ!何処に運べば良い!」
「町には簡単に入れるな!備えを!」
「俺達も、イオの役に立つんだ!」
マギクメギトが、何やら仕掛けて来るらしい。
教会から知らせを受けた町長は、議会を開いて策を練った。
イオは『大丈夫』と言ったのだが。
『自分達でも、出来るだけの事はしよう』と議会は決め、住民に協力を願い出た。
日頃からイオに世話になっていた住民は、喜んで引き受けた。
こうして町は、1つになった。
一方、アンナの町に隣接する土地の領主は。
静かに情勢を見守っていた。
事と次第によっては、どちらに付くか考えなくてはならない。
『自分は民を守る義務が有る』、その自覚はあった。
でも心の何処かでは、イオの勝利を願っていた。
そうこうして。
町が一丸となって、備えを急いでいる中。
イオはイオで、いつも通りだった。
「あのー、町の人達が騒いでますけど……。」
アーシェはイオに、そう話し掛けるも。
イオは、気楽な感じを取り続けていた。
『大丈夫』と、イオの顔は。
自信に満ち溢れていた。
何日か経った夜。
リンネ達は、アンナの町の直ぐ近くまで来た。
早速魔法で、様子を探ってみると。
自分達の動きが相手方にバレたらしい、町は万全の防衛体制を敷いていた。
「迂闊には近付けませんね。」
隊員の1人が輪廻に言う。
こちらは7人の小隊、動きは身軽。
固まって行動すれば、難なく突破出来そうだが。
それでは相手に気付かれて、暗殺どころでは無くなる。
リンネが皆に命ずる。
「バラけて動くぞ。魔法で思念を繋いで、やり取り出来る様にしておけ。」
「承知しました。」
隊員達は、そう返事をして。
各自町を包囲する様に、拡散して行った。
バラけてから、数分後。
《何だ!》 《うわぁ!》 《ひいいぃぃ!》
次々と、隊員の思念が途絶えて行く。
何が起きている?
リンネが原因を探ろうとした、その時。
「やあ。あんたがリーダーか。」
……!
気配も無しにイオが突然、リンネの目の前に現れた。
呆気に取られるも、直ぐに戦闘態勢を取る。
それを見て、イオが言う。
「何だ、こっちの話を聞く気は無いのか?」
「話だと?」
「そうだよ。このまま黙って、引き下がってくれないか?」
「そんな事出来るか!」
ターゲットを目前に見据えても、尚も強がるリンネ。
そんな彼女に、イオはこう告げる。
「恩義の有る大臣は裏切れないと?自分の信念を曲げてもか?」
……何故それを!
唖然とし、心の中でそう呟くリンネ。
それに構わず、イオは続ける。
「あんたの事を、俺は何でも知っている。孤児だった事も、人を守る為に力を振るいたい事も。」
「戯言を!」
「戯言?本当にそうか?」
「そ、それは……。」
イオの問いに、リンネの思考が一瞬停止する。
しかし、その一瞬で切り替えた。
「お前を倒さねば、国の民が苦しむ!覚悟!」
そう言ってリンネは、魔法を発動させた。
〔右足に水を〕、〔左足に炎を〕、〔右手に木を〕、〔左手と盾に土を〕、〔剣に金を〕。
「行くぞっ!」
リンネは『ギュンッ!』と素早く、イオの前へ移動する。
と同時に、左足で胴体へキックを。
剣で頭へ斬撃を、仕掛けようとする。
しかし。
シュンッ!
イオがリンネの目の前から、突如居なくなったと同時に。
背中をドンッと押されたリンネ。
「なにをっ!」
今度は、右足で頭を蹴落とそうとすると同時に。
右手から木の枝を鋭く伸ばして、胸元を突き刺そうとする。
その瞬間、またしてもイオは。
目の前から居なくなって、リンネは頭をポンと叩かれた。
イライラして来たリンネは、イオに向かって叫ぶ。
「舐めているのか!戦士なら、堂々と勝負しろ!」
「俺は戦士じゃ無い。だからそんな事、知ったこっちゃない。」
「くそう!こうなったら意地でも!」
《土+木=毒!》
リンネは属性を組み合わせる事で、状態異常の魔法も使えるのだ。
でも出来るだけ、人相手には使いたく無かった。
『目的を達成する為には仕方が無い』、そう割り切った。
「毒の剣を!食らえええぇぇぇ!」
パシッ。
イオは剣を、左手一本で軽々と受け止める。
『自ら毒を食らった』、リンネにはそう見えた。
しかしイオは平然としながら、リンネに告げる。
「悪いな、その手の類も効かないんだ。」
イオの発言後、直ぐに。
《だ、大丈夫ですか!隊長!》
途切れていた隊員の思念が復活した。
リンネは皆に直ぐ様呼び掛ける。
《お前達!無事か!》
《はい!一瞬の事でした……。》
《圧倒されました……。我々では、最早太刀打ち出来ません!》
《せめて、隊長だけでも逃げて下さい!》
隊員達の悲痛な叫びに、リンネは。
《そんな事出来るか!みんなで国に帰るんだ!》
《我々が時間を稼ぎます!早く!》
その直後、隊員達からの思念が一瞬途絶えたかと思うと。
アンネの町の空に、どす黒い雲が広がる。
町の人々は驚いて、外に出て来たが。
誰かが叫んだ。
「危ない!雷の全体魔法が発動するぞ!」
その声に、慌てて皆はな家の中へ避難する。
そして身を屈め、必死になって女神に祈った。
「どうか、我々をお救い下さい!どうか……!」
《早く!》
《出来ない!それにそんな事をしたら、町が……!》
《責は我々が負います!どうか御無事で!》
隊員の、その言葉を最後に。
思念が完全に途絶える。
そして空全体に立ち込める雷雲から、雷の全体魔法が発動した。
筈だった。
「……何も起きないぞ?」
「不発か?」
町の人達は驚くと共に、ホッとした。
隊員達の思念が、《何故だ!》との一言から復活する。
すると。
《俺のせいに決まってるだろ。》
イオが、思念の通信網へ割り込んだ。
冷静な口調でイオは、隊員達にこう明かす。
《町に対して魔法が使えない様、予め【魔法を無効化するトラップ】を仕掛けておいた。何をしようとしても無駄だ。》
《何てこった!そんな事も出来るのか!》
《出来るよ。無効化も反射もな。何なら、己自身で体験してみるか?》
イオにそう言われて、隊員達は魔法の発動を解いた。
その一瞬。
リンネの剣が、イオの首を捉える。
が、刎ね上げる寸前で止めた。
リンネが必死の形相で、イオへ叫ぶ。
「何故避けない!」
「殺気が感じられないからな。元々、攻撃のつもりじゃ無かったんだろ?」
「くっ!」
リンネは観念して、魔法を解くと。
その場にガクッと崩れ落ちた。
「さて。どうするか、ね。」
暗殺と言う状況は、これで収まった。
イオは少し考えると『しょうが無い、こうするか』と呟く。
すると、隊員達は目を丸くした。
彼等の前に、国で帰りを待っている筈の家族が現れたのだ。
イオは、隊員達に告げる。
「俺を討ちそこなったから、国には帰れない。でも家族が心配。なら家族毎、アンナの町に移住すれば良い。」
え? 良いのか?
隊員達は動揺する。
しかし、目の前に居る家族の顔を見ると。
皆決心し、移住する道を選んだ。
イオはリンネに、右手を差し出しながら言う。
「お前も来いよ。」
「わ、私は……。」
リンネは迷うが、イオがその背中を押す。
「隊員達を守れるのは、お前だけなんだぜ?他でも無い、【お前だけ】が出来るんだ。」
「私だけ……。」
リンネは、イオの言葉に心を動かされた。
『ならば』とリンネは、或る事を1つイオに願い出る。
「隊員のこの町での権利を、保障してやってくれ。」
「任せろ。その代わり、ちゃんと彼等の身を守ってやるんだぞ?《お前は、俺が守ってやるから》。」
その言葉を聞いて、リンネは子供の様に泣きじゃくった。
そして、温かい何かに包まれている気がした。
「と言う訳だ。宜しく頼むよ。」
イオの紹介で、隊員達は。
アンナの町へ引き取られた。
警戒する住民も居たが。
イオから直々に説得され、それを受け入れた。
隊員達は町の人達に心から謝り、この町に貢献する事を誓った。
そして。
「だからって、ここに住まわせる事は無いでしょう!」
アーシェがイオに、不満を漏らす。
リンネは、イオの家に同居する事となったのだが。
ア-シェは、リンネが嫌なのでは無く。
イオと2人きりで無くなるのが嫌だったのだ。
「済まない。出来るだけ、迷惑は掛けない様にする。」
深々と頭を下げるリンネ。
『そう言う事だから、仲良くしろよ?』と、イオがアーシェに笑い掛ける。
「べ、別に怒ってなんて……。」
そう呟きながらも。
『私の気持ちを知ってる癖に!』と、心の中で拗ねるアーシェ。
アーシェとイオのやり取りを見て、ふとリンネは思った。
『ずっとイオの傍に居たい』と。
これが、リンネの初恋だった。
0
お気に入りに追加
113
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
異世界で買った奴隷が強すぎるので説明求む!
夜間救急事務受付
ファンタジー
仕事中、気がつくと知らない世界にいた 佐藤 惣一郎(サトウ ソウイチロウ)
安く買った、視力の悪い奴隷の少女に、瓶の底の様な分厚いメガネを与えると
めちゃめちゃ強かった!
気軽に読めるので、暇つぶしに是非!
涙あり、笑いあり
シリアスなおとぼけ冒険譚!
異世界ラブ冒険ファンタジー!
ヒューマンテイム ~人間を奴隷化するスキルを使って、俺は王妃の体を手に入れる~
三浦裕
ファンタジー
【ヒューマンテイム】
人間を洗脳し、意のままに操るスキル。
非常に希少なスキルで、使い手は史上3人程度しか存在しない。
「ヒューマンテイムの力を使えば、俺はどんな人間だって意のままに操れる。あの美しい王妃に、ベッドで腰を振らせる事だって」
禁断のスキル【ヒューマンテイム】の力に目覚めた少年リュートは、その力を立身出世のために悪用する。
商人を操って富を得たり、
領主を操って権力を手にしたり、
貴族の女を操って、次々子を産ませたり。
リュートの最終目標は『王妃の胎に子種を仕込み、自らの子孫を王にする事』
王家に近づくためには、出世を重ねて国の英雄にまで上り詰める必要がある。
邪悪なスキルで王家乗っ取りを目指すリュートの、ダーク成り上がり譚!
クラス転移で神様に?
空見 大
ファンタジー
集団転移に巻き込まれ、クラスごと異世界へと転移することになった主人公晴人はこれといって特徴のない平均的な学生であった。
異世界の神から能力獲得について詳しく教えられる中で、晴人は自らの能力欄獲得可能欄に他人とは違う機能があることに気が付く。
そこに隠されていた能力は龍神から始まり魔神、邪神、妖精神、鍛冶神、盗神の六つの神の称号といくつかの特殊な能力。
異世界での安泰を確かなものとして受け入れ転移を待つ晴人であったが、神の能力を手に入れたことが原因なのか転移魔法の不発によりあろうことか異世界へと転生してしまうこととなる。
龍人の母親と英雄の父、これ以上ない程に恵まれた環境で新たな生を得た晴人は新たな名前をエルピスとしてこの世界を生きていくのだった。
現在設定調整中につき最新話更新遅れます2022/09/11~2022/09/17まで予定
転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】
ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします
ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった
【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。
累計400万ポイント突破しました。
応援ありがとうございます。】
ツイッター始めました→ゼクト @VEUu26CiB0OpjtL
愛することをやめたら、怒る必要もなくなりました。今さら私を愛する振りなんて、していただかなくても大丈夫です。
石河 翠
恋愛
貴族令嬢でありながら、家族に虐げられて育ったアイビー。彼女は社交界でも人気者の恋多き侯爵エリックに望まれて、彼の妻となった。
ひとなみに愛される生活を夢見たものの、彼が欲していたのは、夫に従順で、家の中を取り仕切る女主人のみ。先妻の子どもと仲良くできない彼女をエリックは疎み、なじる。
それでもエリックを愛し、結婚生活にしがみついていたアイビーだが、彼の子どもに言われたたった一言で心が折れてしまう。ところが、愛することを止めてしまえばその生活は以前よりも穏やかで心地いいものになっていて……。
愛することをやめた途端に愛を囁くようになったヒーローと、その愛をやんわりと拒むヒロインのお話。
この作品は他サイトにも投稿しております。
扉絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品(写真ID 179331)をお借りしております。
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる