1 / 23
救えるのか、《極端な世界》を
しおりを挟む
「ふう、これで終わりか。」
【イオ】と言う名の少年は。
『やっと楽になれる』と、その時思った。
【大災害】、人は或る事象をそう呼んだ。
イオは力を直ぐ発動する様言われ、その声のままに開放しただけなのだ。
急に授かった、その力。
その凄まじさは、この星全体が一瞬で暗くなった事でも明らかだ。
一斉に停電、その後。
地磁気の乱れで、オーロラが各地で観測された。
空振も起き、窓ガラスが粉々になって。
耳が聞こえ辛くなる者も居た。
イオは所謂、【素粒子使い】。
簡単に言うと、《錬金術師の特別バージョン》だ。
素粒子を自在に制御する力。
無から有を、有から無を生み出す。
〔掌の上で核融合〕なぞ、お手のもの。
その気になれば反物質やブラックホールも作れる、恐るべき力。
原理は本人にも分からない、出来てしまうのだからしょうがない。
ただ、代償も大きかった。
人間である事を捨てなければならなかった。
力のコントロールを身に着ける過程で、力の発動に耐えられる様体を改造した。
自身を構成する炭素を、ケイ素に置き換え。
精神を、プラズマ知的生命体に変えた。
これでイオは、星と同等の存在になった。
大災害によって、この星は大きく傷付いた。
イオは毎日、自分を責め。
何日か後に漸く、『世界に対し償いをしよう』と決心した。
イオは旅に出ると、世界中の傷付いた人や町を直して回った。
その行為に。
或る者は〔救世主〕と崇め、或る者は〔悪魔〕と罵った。
それをイオは、甘んじて受けた。
旅の中で、イオは。
この世界に大きな迷惑を掛けた…ここには居られない…。
そんな思いを強くしていた。
そしてやっと今日、全てを修復した。
これからどうしようか。
このまま居ても、なぁ。
この世界は全てスキャンしたし。
いっそ、宇宙へ飛び出すか。
そんな事を考えていた、その時。
《どうか、私の世界をお救い下さい!》
ん? 何だ今のは? 幻聴か?
《どうか、私の願いをお聞き取り下さい!》
うるさいなあ。
《どうか!》
分かった分かった、俺が行ってやるよ。
どうせ、ここには居たく無いからな。
そう、イオが考えると。
『シュンッ!』とこの世界から、イオと言う存在が消えた。
「わあっ!」
次の瞬間、イオは。
噴水らしき物の上に現れた。
バシャーン!
「冷てーっ!」
何だ!?
流石のイオも、己の身に何が起きたか分からなかった。
噴水の周りには、直ぐに人集りが出来た。
その中から、青いフードを被った少女が近付いて来る。
「願いが通じたのですね!ありがとうございます!」
天を仰いで祈る少女。
どうやらこの子が、声の主の様だ。
この子に聞いた方が、状況を把握するのに早そうだ。
「ちょっと、君。」
イオは、少女に声を掛ける。
『はい?』と反応を示す少女、続けてイオは尋ねる。
「君が呼んだのか?俺を。」
『どうやら、その様です』と、少女は笑いながら返事をする。
そして、自身の事を語り出す。
「私は。あそこに見える教会に在る、修道院に仕える者です。この世界を助けて下さる方を、神を通じて呼んでいました。」
「俺で良かったのか?」
「神が選ばれた方です。申し分有りません。」
「そうか、なら良いんだけど。」
そのやり取りを聞いていた野次馬は、急に歓声を上げる。
「とうとう救世主様が現れたぞー!」
「これで私達は救われる!」
「やっと、やっと……。」
キョトンとするイオ。
彼に少女は告げる。
「無理も有りません。この世界の不条理を集めたみたいな町ですから。」
「きちんと説明してくれるか?」
イオは、少女の口から確かめたかった。
スキャンは、後でも良いだろう。
少女の説明は、以下の様な内容だった。
この世界は、3つの国に分かれている。
魔法・超能力・科学が、それぞれ異常に発達した国。
この世界の住人はどれかの力に秀でていて、その国に属して暮らしている。
そして長い間覇権争いを繰り広げ、今は膠着状態。
民は、心も体も疲弊していた。
その中でも、この町の人は特別だった。
民の中には、何の力も持たない人も極稀に存在する。
《UH(UnHold・持たざる者)》と呼ばれる彼等は。
迫害はされないが、無視される事も多い。
そんな、悲しい人達。
そんなUH達が集まって出来たのが、この町。
3つの国の国境が交わる、この場所に。
だから。
〔イオが救世主かも知れない〕と分かった時に、歓声を上げたのだ。
こんな理不尽な仕組みを終わらせてくれる。
きっと、きっと。
そう信じて。
「救世主、か。」
元の世界でも、そう呼ぶ人達が居たっけ。
成れたのだろうか、その人達の救世主に。
もしそれが十分でなければ、ここで力を貸す事も悪く無い。
自分の存在意義を見出すのには、十分だった。
「分かったよ。俺で良ければ力を貸すよ。期待通りに成れるか分からないけど……。」
「宜しくお願いします!」
少女は深々と頭を下げる。
そして少女は、自身の名をイオに告げる。
「私は、【アーシャレイト=レンドル】と申します。【アーシェ】とお呼び下さい。」
「俺は〔イオ〕。宜しく。」
こうして。
イオの、新たな旅が始まった。
【イオ】と言う名の少年は。
『やっと楽になれる』と、その時思った。
【大災害】、人は或る事象をそう呼んだ。
イオは力を直ぐ発動する様言われ、その声のままに開放しただけなのだ。
急に授かった、その力。
その凄まじさは、この星全体が一瞬で暗くなった事でも明らかだ。
一斉に停電、その後。
地磁気の乱れで、オーロラが各地で観測された。
空振も起き、窓ガラスが粉々になって。
耳が聞こえ辛くなる者も居た。
イオは所謂、【素粒子使い】。
簡単に言うと、《錬金術師の特別バージョン》だ。
素粒子を自在に制御する力。
無から有を、有から無を生み出す。
〔掌の上で核融合〕なぞ、お手のもの。
その気になれば反物質やブラックホールも作れる、恐るべき力。
原理は本人にも分からない、出来てしまうのだからしょうがない。
ただ、代償も大きかった。
人間である事を捨てなければならなかった。
力のコントロールを身に着ける過程で、力の発動に耐えられる様体を改造した。
自身を構成する炭素を、ケイ素に置き換え。
精神を、プラズマ知的生命体に変えた。
これでイオは、星と同等の存在になった。
大災害によって、この星は大きく傷付いた。
イオは毎日、自分を責め。
何日か後に漸く、『世界に対し償いをしよう』と決心した。
イオは旅に出ると、世界中の傷付いた人や町を直して回った。
その行為に。
或る者は〔救世主〕と崇め、或る者は〔悪魔〕と罵った。
それをイオは、甘んじて受けた。
旅の中で、イオは。
この世界に大きな迷惑を掛けた…ここには居られない…。
そんな思いを強くしていた。
そしてやっと今日、全てを修復した。
これからどうしようか。
このまま居ても、なぁ。
この世界は全てスキャンしたし。
いっそ、宇宙へ飛び出すか。
そんな事を考えていた、その時。
《どうか、私の世界をお救い下さい!》
ん? 何だ今のは? 幻聴か?
《どうか、私の願いをお聞き取り下さい!》
うるさいなあ。
《どうか!》
分かった分かった、俺が行ってやるよ。
どうせ、ここには居たく無いからな。
そう、イオが考えると。
『シュンッ!』とこの世界から、イオと言う存在が消えた。
「わあっ!」
次の瞬間、イオは。
噴水らしき物の上に現れた。
バシャーン!
「冷てーっ!」
何だ!?
流石のイオも、己の身に何が起きたか分からなかった。
噴水の周りには、直ぐに人集りが出来た。
その中から、青いフードを被った少女が近付いて来る。
「願いが通じたのですね!ありがとうございます!」
天を仰いで祈る少女。
どうやらこの子が、声の主の様だ。
この子に聞いた方が、状況を把握するのに早そうだ。
「ちょっと、君。」
イオは、少女に声を掛ける。
『はい?』と反応を示す少女、続けてイオは尋ねる。
「君が呼んだのか?俺を。」
『どうやら、その様です』と、少女は笑いながら返事をする。
そして、自身の事を語り出す。
「私は。あそこに見える教会に在る、修道院に仕える者です。この世界を助けて下さる方を、神を通じて呼んでいました。」
「俺で良かったのか?」
「神が選ばれた方です。申し分有りません。」
「そうか、なら良いんだけど。」
そのやり取りを聞いていた野次馬は、急に歓声を上げる。
「とうとう救世主様が現れたぞー!」
「これで私達は救われる!」
「やっと、やっと……。」
キョトンとするイオ。
彼に少女は告げる。
「無理も有りません。この世界の不条理を集めたみたいな町ですから。」
「きちんと説明してくれるか?」
イオは、少女の口から確かめたかった。
スキャンは、後でも良いだろう。
少女の説明は、以下の様な内容だった。
この世界は、3つの国に分かれている。
魔法・超能力・科学が、それぞれ異常に発達した国。
この世界の住人はどれかの力に秀でていて、その国に属して暮らしている。
そして長い間覇権争いを繰り広げ、今は膠着状態。
民は、心も体も疲弊していた。
その中でも、この町の人は特別だった。
民の中には、何の力も持たない人も極稀に存在する。
《UH(UnHold・持たざる者)》と呼ばれる彼等は。
迫害はされないが、無視される事も多い。
そんな、悲しい人達。
そんなUH達が集まって出来たのが、この町。
3つの国の国境が交わる、この場所に。
だから。
〔イオが救世主かも知れない〕と分かった時に、歓声を上げたのだ。
こんな理不尽な仕組みを終わらせてくれる。
きっと、きっと。
そう信じて。
「救世主、か。」
元の世界でも、そう呼ぶ人達が居たっけ。
成れたのだろうか、その人達の救世主に。
もしそれが十分でなければ、ここで力を貸す事も悪く無い。
自分の存在意義を見出すのには、十分だった。
「分かったよ。俺で良ければ力を貸すよ。期待通りに成れるか分からないけど……。」
「宜しくお願いします!」
少女は深々と頭を下げる。
そして少女は、自身の名をイオに告げる。
「私は、【アーシャレイト=レンドル】と申します。【アーシェ】とお呼び下さい。」
「俺は〔イオ〕。宜しく。」
こうして。
イオの、新たな旅が始まった。
0
お気に入りに追加
113
あなたにおすすめの小説
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
迷い人 ~異世界で成り上がる。大器晩成型とは知らずに無難な商人になっちゃった。~
飛燕 つばさ
ファンタジー
孤独な中年、坂本零。ある日、彼は目を覚ますと、まったく知らない異世界に立っていた。彼は現地の兵士たちに捕まり、不審人物とされて牢獄に投獄されてしまう。
彼は異世界から迷い込んだ『迷い人』と呼ばれる存在だと告げられる。その『迷い人』には、世界を救う勇者としての可能性も、世界を滅ぼす魔王としての可能性も秘められているそうだ。しかし、零は自分がそんな使命を担う存在だと受け入れることができなかった。
独房から零を救ったのは、昔この世界を救った勇者の末裔である老婆だった。老婆は零の力を探るが、彼は戦闘や魔法に関する特別な力を持っていなかった。零はそのことに絶望するが、自身の日本での知識を駆使し、『商人』として新たな一歩を踏み出す決意をする…。
この物語は、異世界に迷い込んだ日本のサラリーマンが主人公です。彼は潜在的に秘められた能力に気づかずに、無難な商人を選びます。次々に目覚める力でこの世界に起こる問題を解決していく姿を描いていきます。
※当作品は、過去に私が創作した作品『異世界で商人になっちゃった。』を一から徹底的に文章校正し、新たな作品として再構築したものです。文章表現だけでなく、ストーリー展開の修正や、新ストーリーの追加、新キャラクターの登場など、変更点が多くございます。
フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ
25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。
目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。
ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。
しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。
ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。
そんな主人公のゆったり成長期!!
最弱ステータスのこの俺が、こんなに強いわけがない。
さこゼロ
ファンタジー
俺のステータスがこんなに強いわけがない。
大型モンスターがワンパン一発なのも、
魔法の威力が意味不明なのも、
全部、幼なじみが見つけてくれたチートアイテムがあるからなんだ!
だから…
俺のステータスがこんなに強いわけがないっ!
俺は善人にはなれない
気衒い
ファンタジー
とある過去を持つ青年が異世界へ。しかし、神様が転生させてくれた訳でも誰かが王城に召喚した訳でもない。気が付いたら、森の中にいたという状況だった。その後、青年は優秀なステータスと珍しい固有スキルを武器に異世界を渡り歩いていく。そして、道中で沢山の者と出会い、様々な経験をした青年の周りにはいつしか多くの仲間達が集っていた。これはそんな青年が異世界で誰も成し得なかった偉業を達成する物語。
転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】
ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします
ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった
【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。
累計400万ポイント突破しました。
応援ありがとうございます。】
ツイッター始めました→ゼクト @VEUu26CiB0OpjtL
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
30代社畜の私が1ヶ月後に異世界転生するらしい。
ひさまま
ファンタジー
前世で搾取されまくりだった私。
魂の休養のため、地球に転生したが、地球でも今世も搾取されまくりのため魂の消滅の危機らしい。
とある理由から元の世界に戻るように言われ、マジックバックを自称神様から頂いたよ。
これで地球で買ったものを持ち込めるとのこと。やっぱり夢ではないらしい。
取り敢えず、明日は退職届けを出そう。
目指せ、快適異世界生活。
ぽちぽち更新します。
作者、うっかりなのでこれも買わないと!というのがあれば教えて下さい。
脳内の空想を、つらつら書いているのでお目汚しな際はごめんなさい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる