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救えるのか、《極端な世界》を

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「ふう、これで終わりか。」

【イオ】と言う名の少年は。
『やっと楽になれる』と、その時思った。



【大災害】、人は或る事象をそう呼んだ。
イオは力を直ぐ発動する様言われ、その声のままに開放しただけなのだ。
急に授かった、その力。
その凄まじさは、この星全体が一瞬で暗くなった事でも明らかだ。
一斉に停電、その後。
地磁気の乱れで、オーロラが各地で観測された。
空振も起き、窓ガラスが粉々になって。
耳が聞こえ辛くなる者も居た。



イオは所謂いわゆる、【素粒子使い】。
簡単に言うと、《錬金術師の特別バージョン》だ。
素粒子を自在に制御する力。
無から有を、有から無を生み出す。
〔掌の上で核融合〕なぞ、お手のもの。
その気になれば反物質やブラックホールも作れる、恐るべき力。
原理は本人にも分からない、出来てしまうのだからしょうがない。
ただ、代償も大きかった。
人間である事を捨てなければならなかった。
力のコントロールを身に着ける過程で、力の発動に耐えられる様体を改造した。
自身を構成する炭素を、ケイ素に置き換え。
精神を、プラズマ知的生命体に変えた。
これでイオは、星と同等の存在になった。



大災害によって、この星は大きく傷付いた。
イオは毎日、自分を責め。
何日か後にようやく、『世界に対し償いをしよう』と決心した。
イオは旅に出ると、世界中の傷付いた人や町を直して回った。
その行為に。
或る者は〔救世主〕と崇め、或る者は〔悪魔〕とののしった。
それをイオは、甘んじて受けた。
旅の中で、イオは。
この世界に大きな迷惑を掛けた…ここには居られない…。
そんな思いを強くしていた。
そしてやっと今日、全てを修復した。



これからどうしようか。
このまま居ても、なぁ。
この世界は全てスキャンしたし。
いっそ、宇宙へ飛び出すか。
そんな事を考えていた、その時。

《どうか、私の世界をお救い下さい!》

ん? 何だ今のは? 幻聴か?

《どうか、私の願いをお聞き取り下さい!》

うるさいなあ。

《どうか!》

分かった分かった、俺が行ってやるよ。
どうせ、ここには居たく無いからな。
そう、イオが考えると。
『シュンッ!』とこの世界から、イオと言う存在が消えた。



「わあっ!」

次の瞬間、イオは。
噴水らしき物の上に現れた。
バシャーン!

「冷てーっ!」

何だ!?
流石のイオも、己の身に何が起きたか分からなかった。



噴水の周りには、直ぐに人だかりが出来た。
その中から、青いフードを被った少女が近付いて来る。

「願いが通じたのですね!ありがとうございます!」

天を仰いで祈る少女。
どうやらこの子が、声の主の様だ。
この子に聞いた方が、状況を把握するのに早そうだ。

「ちょっと、君。」

イオは、少女に声を掛ける。
『はい?』と反応を示す少女、続けてイオは尋ねる。

「君が呼んだのか?俺を。」

『どうやら、その様です』と、少女は笑いながら返事をする。
そして、自身の事を語り出す。

「私は。あそこに見える教会に在る、修道院に仕える者です。この世界を助けて下さる方を、神を通じて呼んでいました。」

「俺で良かったのか?」

「神が選ばれた方です。申し分有りません。」

「そうか、なら良いんだけど。」

そのやり取りを聞いていた野次馬は、急に歓声を上げる。

「とうとう救世主様が現れたぞー!」
「これで私達は救われる!」
「やっと、やっと……。」

キョトンとするイオ。
彼に少女は告げる。

「無理も有りません。この世界の不条理を集めたみたいな町ですから。」

「きちんと説明してくれるか?」

イオは、少女の口から確かめたかった。
スキャンは、後でも良いだろう。
少女の説明は、以下の様な内容だった。



この世界は、3つの国に分かれている。
魔法・超能力・科学が、それぞれ異常に発達した国。
この世界の住人はどれかの力に秀でていて、その国に属して暮らしている。
そして長い間覇権争いを繰り広げ、今はこう着状態。
民は、心も体も疲弊していた。
その中でも、この町の人は特別だった。
民の中には、何の力も持たない人もごくまれに存在する。
《UH(UnHold・持たざる者)》と呼ばれる彼等は。
迫害はされないが、無視される事も多い。
そんな、悲しい人達。
そんなUH達が集まって出来たのが、この町。
3つの国の国境が交わる、この場所に。
だから。
〔イオが救世主かも知れない〕と分かった時に、歓声を上げたのだ。
こんな理不尽な仕組みを終わらせてくれる。
きっと、きっと。
そう信じて。



「救世主、か。」

元の世界でも、そう呼ぶ人達が居たっけ。
成れたのだろうか、その人達の救世主に。
もしそれが十分でなければ、ここで力を貸す事も悪く無い。
自分の存在意義を見出すのには、十分だった。


「分かったよ。俺で良ければ力を貸すよ。期待通りに成れるか分からないけど……。」

「宜しくお願いします!」

少女は深々と頭を下げる。
そして少女は、自身の名をイオに告げる。

「私は、【アーシャレイト=レンドル】と申します。【アーシェ】とお呼び下さい。」

「俺は〔イオ〕。宜しく。」

こうして。
イオの、新たな旅が始まった。
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