31 / 320
第31話 1つの町、それを分かつ”もの”達
しおりを挟む
エミルとアリュースが話をしている頃。
クライス達はモッテジンの入り口まで来ていた。
来てはいたのだが……。
何故か、ゲートが2つある。
真ん中に高さ3メートル程、幅50センチ程のレンガ壁を挟んで。
ゲートの上には。
それぞれ右が〔フチルベ領〕、左が〔エプドモ領〕と書かれた旗が掲げられている。
どうやら町は完全に分断されていて、もう片方に行くには一度町の外に出る必要が有るらしい。
何と七面倒な事か。
「どうする?どっちから行く?」
両方を見比べながら悩むラヴィ。
息子と面識が有る分、フチルベの方が話を通し易そうだが……。
「行商人を装ってるから、まあ右が妥当だろうな。」
クライスは考える。
同じ商人の方へ挨拶に行く方が自然だろう。
しかし……。
「恐らく、同時に攻略する必要が有るな。」
ゲートから何かがチラッと見える。
一同が中を覗き込むと、レンガ壁に張り紙がしてあるのを見つけた。
それには。
〔選択せよ!相応しき主を!〕
デカデカと書いてある文字を見て、アンとセレナは呆れ返る。
ここまで酷いとは。
この様な事態が発生している以上、確かに同時攻略の必要性がある。
となると……。
「本当に大丈夫かしら?」
「クライス様なら、何とかして下さるでしょう。」
「そうそう、もう少し兄様を信頼して貰いたいわね。」
「じゃなくて、向こう側の情勢よ。クライスの心配なんかして無いわ。」
話しながら町中を進む3人。
結局。
クライスが、まだ関わりの無いエプドモサイド。
息子と面識のある残り3人が、フチルベサイドへと行く事に。
エプドモサイドは騎士団を相手にするので。
クライス1人の方が、いざと言う時に動き易いだろうとの判断だった。
「私も結構、鍛錬を積んでいるつもりですが……。」
役不足と判断された様で、納得が行かないセレナ。
「兄様は戦いに行くんじゃないわよ。それにあなたは、守るべき人が居るでしょう?」
アンに諭されるセレナ。
それは重々承知している。
でも、もう少し頼ってくれても……。
ブツブツ小言を言いながら歩く。
「あなたがそんな事言うなんて、珍しいわね。」
意外な面を見たラヴィ。
もしかして、自分も姫様の様に守られたいとか……?
そう思うと、ふふっと微笑まずにはいられなかった。
「そうそう、《あれ》は持ってるわよね?」
無理やり話をそらそうと、アンに振るセレナ。
「勿論。ここに。」
服の左ポケットをポンと叩くアン。
二手に分かれる前に、例の金銀のリンゴを複製しておいたのだ。
まあ2つ作っただけなので、両方本物だが。
これを利用して相手の関心を引く作戦だった。
それが上手く行くかどうか。
今から緊張するラヴィだった。
「うーん、何か活気が無いなあ。」
エプドモ領を掲げる方に来たクライスは、閑散とする町内を歩いていた。
人が居る事には居るが、緊張感が漂っている。
店も在るが、ぽつぽつと最低限存在するだけ。
商店街は元々こちら側では無かった様だ。
「それもそうか。」
『フチルベはまず商店街を押さえた』と考えるのが妥当。
食料の供給元を牛耳れば、自ずと人がそちらに流れる。
商売人らしい発想だと思った。
それに比べて、こちらのリーダーは民の心を読み違えている様だった。
「力で抑え込んでも、人は動かない。分かっている筈だがな。」
仮にも騎士長を名乗る男。
信義に熱いと思っていたが、見当外れか……?
それとも、この様な状況にするのを急ぐ理由でも有ったのか……?
それも、本人に聞けば分かる事。
町中を見てヒントを探りながら、エプドモの元へ進むクライスだった。
「それにしても賑やかね。」
「解放感が有りますね。」
「と言うより、無理に元気を出してるみたいにも見えるけど。」
ラヴィ達3人は、町を見た感想を出し合いながらフチルベの元へと歩んでいた。
あちら側には無い自由でもあるのか。
はたまた、空元気でも出さないとやっていけないのか。
商店街には品物がずらっと並んでいるが、買い物客があまり居ない。
「客が来なければ、店は繁盛しない。考えたわね。」
ラヴィはそう漏らす。
エプドモは、町を守るのがそもそもの役目。
だから、住民が多く住む地域を先に抑えたのだろう。
そうすれば店の売り上げは落ち込み、向こう側に店を出そうとする者も出て来る。
金を稼ぎ、店主として生き残っていく為に。
守護者としては、まあ真っ当な理由だ。
それに比べ、こちらの主はそこを見抜けなかった様だった。
「物流を押さえても、裏切り者が出たら元も子も無いのにね。」
商売人として甘い部分があると感じた。
しかし、本当にそうだろうか?
ここまでしてリンゴの販売権を何としても握ろうとする理由が、別に有るのではないか?
そう思えてならないラヴィだった。
両サイドに別れて向かった一行。
それぞれの思惑を想像しながら、ごたごたを起こしている張本人に近付く。
そこに待ち受けるのは、ドロドロの泥仕合か?
はたまた……?
クライス達はモッテジンの入り口まで来ていた。
来てはいたのだが……。
何故か、ゲートが2つある。
真ん中に高さ3メートル程、幅50センチ程のレンガ壁を挟んで。
ゲートの上には。
それぞれ右が〔フチルベ領〕、左が〔エプドモ領〕と書かれた旗が掲げられている。
どうやら町は完全に分断されていて、もう片方に行くには一度町の外に出る必要が有るらしい。
何と七面倒な事か。
「どうする?どっちから行く?」
両方を見比べながら悩むラヴィ。
息子と面識が有る分、フチルベの方が話を通し易そうだが……。
「行商人を装ってるから、まあ右が妥当だろうな。」
クライスは考える。
同じ商人の方へ挨拶に行く方が自然だろう。
しかし……。
「恐らく、同時に攻略する必要が有るな。」
ゲートから何かがチラッと見える。
一同が中を覗き込むと、レンガ壁に張り紙がしてあるのを見つけた。
それには。
〔選択せよ!相応しき主を!〕
デカデカと書いてある文字を見て、アンとセレナは呆れ返る。
ここまで酷いとは。
この様な事態が発生している以上、確かに同時攻略の必要性がある。
となると……。
「本当に大丈夫かしら?」
「クライス様なら、何とかして下さるでしょう。」
「そうそう、もう少し兄様を信頼して貰いたいわね。」
「じゃなくて、向こう側の情勢よ。クライスの心配なんかして無いわ。」
話しながら町中を進む3人。
結局。
クライスが、まだ関わりの無いエプドモサイド。
息子と面識のある残り3人が、フチルベサイドへと行く事に。
エプドモサイドは騎士団を相手にするので。
クライス1人の方が、いざと言う時に動き易いだろうとの判断だった。
「私も結構、鍛錬を積んでいるつもりですが……。」
役不足と判断された様で、納得が行かないセレナ。
「兄様は戦いに行くんじゃないわよ。それにあなたは、守るべき人が居るでしょう?」
アンに諭されるセレナ。
それは重々承知している。
でも、もう少し頼ってくれても……。
ブツブツ小言を言いながら歩く。
「あなたがそんな事言うなんて、珍しいわね。」
意外な面を見たラヴィ。
もしかして、自分も姫様の様に守られたいとか……?
そう思うと、ふふっと微笑まずにはいられなかった。
「そうそう、《あれ》は持ってるわよね?」
無理やり話をそらそうと、アンに振るセレナ。
「勿論。ここに。」
服の左ポケットをポンと叩くアン。
二手に分かれる前に、例の金銀のリンゴを複製しておいたのだ。
まあ2つ作っただけなので、両方本物だが。
これを利用して相手の関心を引く作戦だった。
それが上手く行くかどうか。
今から緊張するラヴィだった。
「うーん、何か活気が無いなあ。」
エプドモ領を掲げる方に来たクライスは、閑散とする町内を歩いていた。
人が居る事には居るが、緊張感が漂っている。
店も在るが、ぽつぽつと最低限存在するだけ。
商店街は元々こちら側では無かった様だ。
「それもそうか。」
『フチルベはまず商店街を押さえた』と考えるのが妥当。
食料の供給元を牛耳れば、自ずと人がそちらに流れる。
商売人らしい発想だと思った。
それに比べて、こちらのリーダーは民の心を読み違えている様だった。
「力で抑え込んでも、人は動かない。分かっている筈だがな。」
仮にも騎士長を名乗る男。
信義に熱いと思っていたが、見当外れか……?
それとも、この様な状況にするのを急ぐ理由でも有ったのか……?
それも、本人に聞けば分かる事。
町中を見てヒントを探りながら、エプドモの元へ進むクライスだった。
「それにしても賑やかね。」
「解放感が有りますね。」
「と言うより、無理に元気を出してるみたいにも見えるけど。」
ラヴィ達3人は、町を見た感想を出し合いながらフチルベの元へと歩んでいた。
あちら側には無い自由でもあるのか。
はたまた、空元気でも出さないとやっていけないのか。
商店街には品物がずらっと並んでいるが、買い物客があまり居ない。
「客が来なければ、店は繁盛しない。考えたわね。」
ラヴィはそう漏らす。
エプドモは、町を守るのがそもそもの役目。
だから、住民が多く住む地域を先に抑えたのだろう。
そうすれば店の売り上げは落ち込み、向こう側に店を出そうとする者も出て来る。
金を稼ぎ、店主として生き残っていく為に。
守護者としては、まあ真っ当な理由だ。
それに比べ、こちらの主はそこを見抜けなかった様だった。
「物流を押さえても、裏切り者が出たら元も子も無いのにね。」
商売人として甘い部分があると感じた。
しかし、本当にそうだろうか?
ここまでしてリンゴの販売権を何としても握ろうとする理由が、別に有るのではないか?
そう思えてならないラヴィだった。
両サイドに別れて向かった一行。
それぞれの思惑を想像しながら、ごたごたを起こしている張本人に近付く。
そこに待ち受けるのは、ドロドロの泥仕合か?
はたまた……?
1
お気に入りに追加
59
あなたにおすすめの小説
『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる
農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」
そんな言葉から始まった異世界召喚。
呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!?
そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう!
このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。
勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定
私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。
ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。
他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。
なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。
大賢者の弟子ステファニー
楠ノ木雫
ファンタジー
この世界に存在する〝錬金術〟を使いこなすことの出来る〝錬金術師〟の少女ステファニー。
その技を極めた者に与えられる[大賢者]の名を持つ者の弟子であり、それに最も近しい存在である[賢者]である。……彼女は気が付いていないが。
そんな彼女が、今まであまり接してこなかった[人]と関わり、成長していく、そんな話である。
※他の投稿サイトにも掲載しています。
召喚されたら無能力だと追放されたが、俺の力はヘルプ機能とチュートリアルモードだった。世界の全てを事前に予習してイージーモードで活躍します
あけちともあき
ファンタジー
異世界召喚されたコトマエ・マナビ。
異世界パルメディアは、大魔法文明時代。
だが、その時代は崩壊寸前だった。
なのに人類同志は争いをやめず、異世界召喚した特殊能力を持つ人間同士を戦わせて覇を競っている。
マナビは魔力も闘気もゼロということで無能と断じられ、彼を召喚したハーフエルフ巫女のルミイとともに追放される。
追放先は、魔法文明人の娯楽にして公開処刑装置、滅びの塔。
ここで命運尽きるかと思われたが、マナビの能力、ヘルプ機能とチュートリアルシステムが発動する。
世界のすべてを事前に調べ、起こる出来事を予習する。
無理ゲーだって軽々くぐり抜け、デスゲームもヌルゲーに変わる。
化け物だって天変地異だって、事前の予習でサクサククリア。
そして自分を舐めてきた相手を、さんざん煽り倒す。
当座の目的は、ハーフエルフ巫女のルミイを実家に帰すこと。
ディストピアから、ポストアポカリプスへと崩壊していくこの世界で、マナビとルミイのどこか呑気な旅が続く。
辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します
潮ノ海月@書籍発売中
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる!
トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。
領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。
アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。
だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう
完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。
果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!?
これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。
天職はドロップ率300%の盗賊、錬金術師を騙る。
朱本来未
ファンタジー
魔術師の大家であるレッドグレイヴ家に生を受けたヒイロは、15歳を迎えて受けた成人の儀で盗賊の天職を授けられた。
天職が王家からの心象が悪い盗賊になってしまったヒイロは、廃嫡されてレッドグレイヴ領からの追放されることとなった。
ヒイロは以前から魔術師以外の天職に可能性を感じていたこともあり、追放処分を抵抗することなく受け入れ、レッドグレイヴ領から出奔するのだった。
30代社畜の私が1ヶ月後に異世界転生するらしい。
ひさまま
ファンタジー
前世で搾取されまくりだった私。
魂の休養のため、地球に転生したが、地球でも今世も搾取されまくりのため魂の消滅の危機らしい。
とある理由から元の世界に戻るように言われ、マジックバックを自称神様から頂いたよ。
これで地球で買ったものを持ち込めるとのこと。やっぱり夢ではないらしい。
取り敢えず、明日は退職届けを出そう。
目指せ、快適異世界生活。
ぽちぽち更新します。
作者、うっかりなのでこれも買わないと!というのがあれば教えて下さい。
脳内の空想を、つらつら書いているのでお目汚しな際はごめんなさい。
集団転移した商社マン ネットスキルでスローライフしたいです!
七転び早起き
ファンタジー
「望む3つのスキルを付与してあげる」
その天使の言葉は善意からなのか?
異世界に転移する人達は何を選び、何を求めるのか?
そして主人公が○○○が欲しくて望んだスキルの1つがネットスキル。
ただし、その扱いが難しいものだった。
転移者の仲間達、そして新たに出会った仲間達と異世界を駆け巡る物語です。
基本は面白くですが、シリアスも顔を覗かせます。猫ミミ、孤児院、幼女など定番物が登場します。
○○○「これは私とのラブストーリーなの!」
主人公「いや、それは違うな」
異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた
りゅう
ファンタジー
異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。
いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。
その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる