30 / 320
第30話 妖精に嘘は付けない
しおりを挟む
アリュースが話し始める前。
エミルは首にぶら下げている金の鈴を握り締め、アリュースをジッと見つめる。
すると、鈴が一瞬虹色に光った。
それを確認すると、エミルはアリュースの声に耳を澄ませた。
「作戦は、《もっと仲良くなろう》と言う物なんだ。」
反応無し。
「昔、子供の頃。小人族の住む場所に迷い込んだ事が有ってね。」
反応無し。
「その時仲良くなったんだ。ホビイと。」
反応無し。
「それ以来、隠れて遊びに来る様になったんだ。」
反応無し。
「それから決めたんだ。この地域の人達とも仲良くなりたいって。その為の作戦なんだ。」
ジリン。
鈴が濁った音を出した。
「軍を率いて攻め込んだ振りをして、ここにずっと居座れば。セントリアはヘルメシア帝国の物になる。平和的に解決出来ると言う訳さ。」
チリーーーン!
テント内に、鈴の澄み渡った音が響く。
エミルはニヤッとして言う。
「嘘付き。駄目だよ、『正直に話す』って言ったのに。」
「い、いや。今の所、全て事実だが……。」
チリーーーン!
またしても鈴の音。
「また嘘かい?これじゃあ協力出来ないなあ。」
エミルは淡々とした口調。
これもクライスの真似。
人心掌握はクライスの十八番。
その内、相手の心を揺さぶるコツを前に教えて貰っていたのだ。
万が一捕まった時、逃げ易い様に。
それが役に立った。
もう1つ、秘策が有った。
それは、首に下げている金の鈴。
ラヴィ達はただのアクセサリーとしか見ていないが、実は珍品の1つ。
名を【真実の鈴】と言う。
昔クライスとひと悶着あった時、仲直りの印に贈られた。
クライスが生み出した金の鈴に、エフィリアが力を込めた代物。
これを握り締め、特定の人物の像を心に浮かべる。
すると。
指定した人物が嘘を付いた時、高らかに鈴の音が響くのだ。
簡単に言うと《嘘発見器》である。
虹色に光ったのは、ターゲットロックオンの印。
今はアリュースの言葉に反応する様になっている。
だから、嘘を付いていると断言出来るのだ。
そうとは知らず、焦るアリュース。
助け舟を出そうとするホビイ。
それをエミルは制止する。
「駄目!本人がちゃんと理由を言わないと!どうして嘘付くの?」
「いや、その……。」
「ここの人達に関係するけど、作戦の内容は違うよね?セントリアを奪う為じゃ無い。そうでしょ?」
「あ、あの……。」
「そうしないといけない理由が有るんでしょ?《アリュース自身》に。」
核心に近付く質問を、どんどん繰り出すエミル。
完全にノリノリ。
その勢いに押され、言葉を無くして行くアリュース。
沈黙して行くその姿を見かねて、ホビイは言う。
「もう全部話した方が良いんじゃねえか?きちんとさ。」
「そうだな、この状況では致し方が無い……。」
誤魔化しの利かない相手を前に、とうとうアリュースは降参した。
改めて気を引き締め、低いトーンで語り出す。
「君の言う通り。セントリア奪取が目的じゃ無い。これは兄貴の発案なんだ。」
「兄貴って?」
「現ヘルメシア帝国皇帝、【シルベスタ3世】だよ。」
「こ、皇帝!」
鈴は鳴らない。
真実だ。
「俺の本当の名は、【アリューセント・G・シルベスタ】と言う。兄貴とは異母兄弟なんだ。」
「いぼ……?」
「『父親が同じで母親が違う』って事。」
「へえ。」
「色々有ってね。俺も兄貴も命を狙われている。これは兄貴が俺を国外へ逃がそうと言う、苦肉の策なんだ。」
「何で狙われてるの?」
「君もうっすらと気付いてるんじゃないか?ヘルメシアの中も、仲良しこよしじゃ無いんだ。」
「ふうん。そうなのかあ。」
ラヴィの一件を知っているので、何と無くは納得した。
王族って、大変なんだなあ。
「どちらかが生き残れば、一族の血が絶える事は無いからね。」
「そんなに大事なの?」
「ああ、民衆の希望の様な物だからな。」
なるほど、ラヴィに似ているな。
民思いな所が。
そうエミルは感じた。
でもじゃあ、あちこちで悪さをしているのは誰だろう?
アリュースには関係無さそうだけど。
一応聞いてみるか。
「じゃあ何で、メインダリーの周りで悪さしてる人達が居るの?」
その言葉を聞いて、アリュースは激しく反応。
「それは本当かい!」
「う、うん。あちこちの町で混乱させてるんだ。国の中が騒がしいってのは、そう言う事だよ。」
逆に圧倒されるエミル。
エミルの言葉で事態を確かめた、アリュースとホビイ。
「作戦と言うのは、正にそれなんだ。その為にホビイ達に協力して貰ってるんだ。」
意外な答えが返って来た。
どうやら、ラヴィの疑念の答えに近付いた様だ。
エミルは首にぶら下げている金の鈴を握り締め、アリュースをジッと見つめる。
すると、鈴が一瞬虹色に光った。
それを確認すると、エミルはアリュースの声に耳を澄ませた。
「作戦は、《もっと仲良くなろう》と言う物なんだ。」
反応無し。
「昔、子供の頃。小人族の住む場所に迷い込んだ事が有ってね。」
反応無し。
「その時仲良くなったんだ。ホビイと。」
反応無し。
「それ以来、隠れて遊びに来る様になったんだ。」
反応無し。
「それから決めたんだ。この地域の人達とも仲良くなりたいって。その為の作戦なんだ。」
ジリン。
鈴が濁った音を出した。
「軍を率いて攻め込んだ振りをして、ここにずっと居座れば。セントリアはヘルメシア帝国の物になる。平和的に解決出来ると言う訳さ。」
チリーーーン!
テント内に、鈴の澄み渡った音が響く。
エミルはニヤッとして言う。
「嘘付き。駄目だよ、『正直に話す』って言ったのに。」
「い、いや。今の所、全て事実だが……。」
チリーーーン!
またしても鈴の音。
「また嘘かい?これじゃあ協力出来ないなあ。」
エミルは淡々とした口調。
これもクライスの真似。
人心掌握はクライスの十八番。
その内、相手の心を揺さぶるコツを前に教えて貰っていたのだ。
万が一捕まった時、逃げ易い様に。
それが役に立った。
もう1つ、秘策が有った。
それは、首に下げている金の鈴。
ラヴィ達はただのアクセサリーとしか見ていないが、実は珍品の1つ。
名を【真実の鈴】と言う。
昔クライスとひと悶着あった時、仲直りの印に贈られた。
クライスが生み出した金の鈴に、エフィリアが力を込めた代物。
これを握り締め、特定の人物の像を心に浮かべる。
すると。
指定した人物が嘘を付いた時、高らかに鈴の音が響くのだ。
簡単に言うと《嘘発見器》である。
虹色に光ったのは、ターゲットロックオンの印。
今はアリュースの言葉に反応する様になっている。
だから、嘘を付いていると断言出来るのだ。
そうとは知らず、焦るアリュース。
助け舟を出そうとするホビイ。
それをエミルは制止する。
「駄目!本人がちゃんと理由を言わないと!どうして嘘付くの?」
「いや、その……。」
「ここの人達に関係するけど、作戦の内容は違うよね?セントリアを奪う為じゃ無い。そうでしょ?」
「あ、あの……。」
「そうしないといけない理由が有るんでしょ?《アリュース自身》に。」
核心に近付く質問を、どんどん繰り出すエミル。
完全にノリノリ。
その勢いに押され、言葉を無くして行くアリュース。
沈黙して行くその姿を見かねて、ホビイは言う。
「もう全部話した方が良いんじゃねえか?きちんとさ。」
「そうだな、この状況では致し方が無い……。」
誤魔化しの利かない相手を前に、とうとうアリュースは降参した。
改めて気を引き締め、低いトーンで語り出す。
「君の言う通り。セントリア奪取が目的じゃ無い。これは兄貴の発案なんだ。」
「兄貴って?」
「現ヘルメシア帝国皇帝、【シルベスタ3世】だよ。」
「こ、皇帝!」
鈴は鳴らない。
真実だ。
「俺の本当の名は、【アリューセント・G・シルベスタ】と言う。兄貴とは異母兄弟なんだ。」
「いぼ……?」
「『父親が同じで母親が違う』って事。」
「へえ。」
「色々有ってね。俺も兄貴も命を狙われている。これは兄貴が俺を国外へ逃がそうと言う、苦肉の策なんだ。」
「何で狙われてるの?」
「君もうっすらと気付いてるんじゃないか?ヘルメシアの中も、仲良しこよしじゃ無いんだ。」
「ふうん。そうなのかあ。」
ラヴィの一件を知っているので、何と無くは納得した。
王族って、大変なんだなあ。
「どちらかが生き残れば、一族の血が絶える事は無いからね。」
「そんなに大事なの?」
「ああ、民衆の希望の様な物だからな。」
なるほど、ラヴィに似ているな。
民思いな所が。
そうエミルは感じた。
でもじゃあ、あちこちで悪さをしているのは誰だろう?
アリュースには関係無さそうだけど。
一応聞いてみるか。
「じゃあ何で、メインダリーの周りで悪さしてる人達が居るの?」
その言葉を聞いて、アリュースは激しく反応。
「それは本当かい!」
「う、うん。あちこちの町で混乱させてるんだ。国の中が騒がしいってのは、そう言う事だよ。」
逆に圧倒されるエミル。
エミルの言葉で事態を確かめた、アリュースとホビイ。
「作戦と言うのは、正にそれなんだ。その為にホビイ達に協力して貰ってるんだ。」
意外な答えが返って来た。
どうやら、ラヴィの疑念の答えに近付いた様だ。
1
お気に入りに追加
59
あなたにおすすめの小説
異世界で生きていく。
モネ
ファンタジー
目が覚めたら異世界。
素敵な女神様と出会い、魔力があったから選ばれた主人公。
魔法と調合スキルを使って成長していく。
小さな可愛い生き物と旅をしながら新しい世界で生きていく。
旅の中で出会う人々、訪れる土地で色々な経験をしていく。
3/8申し訳ありません。
章の編集をしました。
元平凡高校生の異世界英雄譚 ~転生してチートを手に入れましたが絶対に使いたくありません~
一☆一
ファンタジー
ごく一般的なゲーム好きの少年、相良 彰人は、神様の抽選の結果、突如心臓発作で死んでしまう。
死者が少ないときに行われるその抽選によって死んでしまったものは神様によってチートを付与され、記憶を残したまま異世界で生きていくことになるのだが、彰人はチートを忌み嫌う、真面目系ゲーマーだった。
貴族、エイリアス・シーダン・ナインハイトとして生まれた彼は、一つの誓いを立てた。
【絶対にチートを使わない。】
努力を重ねるエイリアスだったが、そう簡単に理想は現実に追いつかない。
葛藤し、彼が出す結論とは。
「……生まれ直したこの世界で。後悔だけは、したくないんだ。絶対に」
※俺TUEEEです。お察しください。
大賢者の弟子ステファニー
楠ノ木雫
ファンタジー
この世界に存在する〝錬金術〟を使いこなすことの出来る〝錬金術師〟の少女ステファニー。
その技を極めた者に与えられる[大賢者]の名を持つ者の弟子であり、それに最も近しい存在である[賢者]である。……彼女は気が付いていないが。
そんな彼女が、今まであまり接してこなかった[人]と関わり、成長していく、そんな話である。
※他の投稿サイトにも掲載しています。
召喚されたら無能力だと追放されたが、俺の力はヘルプ機能とチュートリアルモードだった。世界の全てを事前に予習してイージーモードで活躍します
あけちともあき
ファンタジー
異世界召喚されたコトマエ・マナビ。
異世界パルメディアは、大魔法文明時代。
だが、その時代は崩壊寸前だった。
なのに人類同志は争いをやめず、異世界召喚した特殊能力を持つ人間同士を戦わせて覇を競っている。
マナビは魔力も闘気もゼロということで無能と断じられ、彼を召喚したハーフエルフ巫女のルミイとともに追放される。
追放先は、魔法文明人の娯楽にして公開処刑装置、滅びの塔。
ここで命運尽きるかと思われたが、マナビの能力、ヘルプ機能とチュートリアルシステムが発動する。
世界のすべてを事前に調べ、起こる出来事を予習する。
無理ゲーだって軽々くぐり抜け、デスゲームもヌルゲーに変わる。
化け物だって天変地異だって、事前の予習でサクサククリア。
そして自分を舐めてきた相手を、さんざん煽り倒す。
当座の目的は、ハーフエルフ巫女のルミイを実家に帰すこと。
ディストピアから、ポストアポカリプスへと崩壊していくこの世界で、マナビとルミイのどこか呑気な旅が続く。
固有スキルガチャで最底辺からの大逆転だモ~モンスターのスキルを使えるようになった俺のお気楽ダンジョンライフ~
うみ
ファンタジー
恵まれない固有スキルを持って生まれたクラウディオだったが、一人、ダンジョンの一階層で宝箱を漁ることで生計を立てていた。
いつものように一階層を探索していたところ、弱い癖に探索者を続けている彼の態度が気に入らない探索者によって深層に飛ばされてしまう。
モンスターに襲われ絶体絶命のピンチに機転を利かせて切り抜けるも、ただの雑魚モンスター一匹を倒したに過ぎなかった。
そこで、クラウディオは固有スキルを入れ替えるアイテムを手に入れ、大逆転。
モンスターの力を吸収できるようになった彼は深層から無事帰還することができた。
その後、彼と同じように深層に転移した探索者の手助けをしたり、彼を深層に飛ばした探索者にお灸をすえたり、と彼の生活が一変する。
稼いだ金で郊外で隠居生活を送ることを目標に今日もまたダンジョンに挑むクラウディオなのであった。
『箱を開けるモ』
「餌は待てと言ってるだろうに」
とあるイベントでくっついてくることになった生意気なマーモットと共に。
異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた
りゅう
ファンタジー
異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。
いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。
その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。
追放された引きこもり聖女は女神様の加護で快適な旅を満喫中
四馬㋟
ファンタジー
幸福をもたらす聖女として民に崇められ、何不自由のない暮らしを送るアネーシャ。19歳になった年、本物の聖女が現れたという理由で神殿を追い出されてしまう。しかし月の女神の姿を見、声を聞くことができるアネーシャは、正真正銘本物の聖女で――孤児院育ちゆえに頼るあてもなく、途方に暮れるアネーシャに、女神は告げる。『大丈夫大丈夫、あたしがついてるから』「……軽っ」かくして、女二人のぶらり旅……もとい巡礼の旅が始まる。
異世界ハズレモノ英雄譚〜無能ステータスと言われた俺が、ざまぁ見せつけながらのし上がっていくってよ!〜
mitsuzoエンターテインメンツ
ファンタジー
【週三日(月・水・金)投稿 基本12:00〜14:00】
異世界にクラスメートと共に召喚された瑛二。
『ハズレモノ』という聞いたこともない称号を得るが、その低スペックなステータスを見て、皆からハズレ称号とバカにされ、それどころか邪魔者扱いされ殺されそうに⋯⋯。
しかし、実は『超チートな称号』であることがわかった瑛二は、そこから自分をバカにした者や殺そうとした者に対して、圧倒的な力を隠しつつ、ざまぁを展開していく。
そして、そのざまぁは図らずも人類の命運を握るまでのものへと発展していくことに⋯⋯。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる