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第3話 急襲

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クライスの暮らす家に、マリーとエリーが連れて来られ一休みしている頃。
或る者から、改めて命が下った。
王女の抹殺。
それを指示したのは誰か?



「ええい、何をしている!」

イライラしている男が1人。
マリーの嫁ぎ先の領主だった。
元々王家には、渋々従っていた身。
主従に似た関係を切り崩す切っ掛けに、敢えて政略結婚を承諾した。
王女が、輿入れ途中で賊に殺された。
そのていに見せかけ、消してしまおう。
そう考えた。
それが、得体の知れない錬金術師に邪魔をされてしまった。
その行方を部下に探らせているが、連絡はまだ無い。
このままでは、自分が王国軍に捕らえられ処刑されてしまう。
焦る一方だった。
ようやく場所特定の知らせが来たのは、賊に偽装した兵が逃げ帰って来た時点から半日後。
どうやら山の奥深くに、隠れ住んでいるらしい。
早速、虎の子の兵士を集めて命じる。

「こうなったら手段は問わん!確実に抹殺せよ!邪魔する者も同様にだ!」

兵士の中には、錬金術を学ぶ者も居た。
彼は匿っている者が誰かを何と無く分かっていたので、出来れば助けたいと思った。
そこで、この兵士は一計を案じる。

「家の近くで爆薬を仕込み、轟音で家から飛び出した所を仕留めましょう。」

それとなく、リーダー格の兵士に提案。
兵士からの提案に。

「それはもっともだ。お前が言うのなら……。」

リーダーは、あっさりと採用した。
兵士は願う。
これで異常事態に気付いてくれれば……。
それは。
錬金術を学ぶ者としての、精一杯の抵抗だった。



クライスの暮らす家の近くへと到着し。
悟られぬ様、慎重に周りを取り囲み始める兵士達。
彼等にも、心の余裕は無い。
失敗すれば、どんな罰が下るか分からないのだから。
本人にも、家族にも。
爆薬を設置する兵士達に指示を出しながら、心の中で彼は謝る。
それでも錬金術に関わる者として、あのお方だけは助けたい。
土壇場の今でも、その覚悟に変わりは無かった。



爆薬の設置が終わると。
サッと下がり、兵士達は隠れる。
タイミングを計る間、彼等に緊張が走る。
そして、遂に……。



ドウーーーンッ!
異常な音と振動が、4人の居る住まいを襲う。
それに対し、クライスは状況を察して。
すぐに、とある行動を始める。

「何をする気?何が起こってるか分かってるの?」

急な出来事に混乱しながら、頭を抱え座り込むも。
クライスの動きに目をやるマリー。
即座に答えたのは、彼では無く。
アンだった。

「しっ!今から周辺を探ります!」

クライスはしゃがんで、床に右手を付いた。
すると、手と床との隙間が『キラッ!』と光り。
目では分からない細さの金色の糸が、四方八方に『シュンッ!』と伸びて行く。
あっと言う間に、金の糸は網目状へと展開。

「兄様は日頃から狙われているので、索敵が得意なんです。金の糸から、あらゆる情報を読み取ります。」

「なるほど。それで危機を先に察知して、回避して来られたのですね。」

小声で感心するエリー。
手を付いてから数秒で、周りの状況を把握したらしい。
むくっとクライスは立ち上がる。

「玄関前に3人。2つの窓の近くにそれぞれ2人。離れた場所に2人。内1人は、錬金術の心得が有る様だ。彼がわざと知らせてくれた。」

「そんな事まで分かるの!」

マリーは驚嘆した。
『道理で強い筈だ』と。

「感心は後。皆、剣を構えている。慌てて飛び出した所を、刺し殺すつもりだろう。」

クライスの言葉に、エリーとマリーはうろたえる。

「では、私達はどうすれば……!」

「エリー!ここは潔く、打って出ましょう!らちが明かないもの!」

「2人共、冷静になって。兄様なら……。」

何とかしてくれる、そう思いながら。
マリーとエリーに声を掛けて、アンがクライスを見やる。

「ふむ……今回は《これ》で行くか……。」

何か思い付いた様に、クライスがそう呟くと。
マリー達の体が、金色に輝き出した。
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