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第六章 二回戦とすれ違い
四話
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傷は浅い内に……とはよくいうもので、その舞台は、僕こと夜神黄泉と、彼女こと天道晴菜双方の侍女により整えられることとなった。全く、段取りの良い女性達だと感心する。
僕達は武闘大会三回戦の後、会うという予定になったとのこと。
「さあ、さっさと試合終わらせて」
「仲直りしちゃいましょう♪」
朝から何ともテンション高い侍女様がいらっしゃる。
「何でそんなにテンション高いの、君たちは?」
「何でって……、決まっているじゃないですか?」
「「主人の幸せがまた一歩深くなるのです。主人の幸せは私達の幸せ。主人の幸せが深くなる。それは、私達の幸せも深くなることを意味するのです♪」」
「そうなの? 僕は、侍女たる君たちも幸せになって欲しいと思っているよ」
「「ありがたき幸せ」」
「しかし、一度は奴隷に堕ち、人生を諦めかけた私達……、光を灯して頂いた皆さんに幸せになって頂くことが私達にできる恩返しなのです」
「母上様には、息子たる黄泉様のことをよろしく頼むと仰せつかっております。黄泉様の人生の華を枯らし散らせてしまったとあっては顔向けできません」
「ありがとう。僕は、いい侍女を持てたことを初めて邪神に感謝するよ」
「「邪神というのが素直に喜べないところですね……」」
「仕方ないでしょ、神にというと、すごいダメージ受けるんだ。僕は悪魔だから」
茶番はこれくらいにして……、
「そろそろ行こうか」
「さっさと試合終わらせましょう♪」
「テンション低いですよ、黄泉様」
「君たちが高すぎなんだよ……」
侍女様二人のせいで僕迄目立ってしまっているよ。同じ穴に住む狢、っていう感じだよ。
「じゃあ、行って来るよ」
「「早く終わらせてくださいね♪」」
「了解……」
「二日ぶりですね……」
「そうだな、小僧。だが、ここまでだ。何故なら、俺に敗れ去るからだ!」
ここにも同類がいた……。
試合開始のゴングが鳴らされた。
「ふははは……、リア充は砕け散れ!」
物騒な台詞叫び、斧を振り下ろすおっさん。
「なかなか早いですが……、遅い!」
矛盾した台詞を放ちながら攻撃を避ける。僕は小太刀に魔力を込める。
「来い、おっさん!」
「調子に乗るな。くたばれ、リア充!」
リア充、リア充うるさい。僕は晴菜一筋なんだ!
「リア充うるさい! “武器破壊”(ウエポンブレイカー)!」
小太刀と斧が衝突し、火花が散り、斧の刃が飛び、柄だけになった。
「……」
呆然とするおっさん。
「戦いにおいて、隙を見せたら負けです」
僕は、おっさんの後ろに回り手刀を打ち込み、気絶させた。
「さすが♪ 私達も負けておられません!」
「そうですね。侍女たる私達も、主人たる黄泉様に続くのであります♪」
楽しんでるよ、絶対。戦闘狂かよ!
見事勝利を収め、僕達は四回戦に進んだ。残り3試合……。
「それでは黄泉様、本日のメインイベント、晴菜さんと仲直り会の時間が近づいて参りました」
「黄泉様、晴菜さんと仲直りできなければ、お帰りになりやがらないで下さい!」
「わかった。仲直りして来いって事だね。美菜、佳奈の協力は無駄にしないよ」
「「その意気ですよ、我らが主人」」
色々突っ込みたいけど、まあいいや。
「「大船に乗ったつもりでいて下さいね」」
「わかった」
「黄泉様、こちらで腰掛けてお待ち下さい」
「私達が晴菜さんをお連れして参ります」
「ふぅ……、どうしたものか……」
僕から謝れば済む事なんだ。だけど、何を謝る?
「黄泉君……」
「晴菜……、一日ぶりだね。」
「うん……」
晴菜は向かいに座った。
「黄泉君」「晴菜」
二人ハモった。
「晴菜、ごめん! 僕が悪かった。」
「黄泉君……」
「僕は、彼奴等に嫉妬していた。普段、僕は晴菜と会いたくても会えない、一緒に居たくても居られない。一緒に出かければ毎回誰や彼や、僕の邪魔をし、自分達は邪魔される事なく会える。自分達が偉い訳でない、父親やご先祖様が築いた財産や地位でありながら、自分達が偉い感じに振る舞う貴族連中が憎いのと同時に妬ましかった。そんな奴らと笑って話している晴菜にも嫉妬を抱いた。何も知らない晴菜が笑って話し掛けていて、僕に対する不満を話している。分からなくて仕方ないよね、君と僕の境遇は全く異なるものだから……。僕は晴菜とやり直したいけど、晴菜を危険な目に遭わすことはしたくない。万が一でも晴菜が僕とやり直したいというなら、鷹司の従兄さんと縁を切る位でないと同じ事の繰り返しだって事、覚悟して欲しい。まあ、晴菜は優しいから無理だと思っているし、敢えて無理強いもしないよ?」
何か、関係修復と反対に動いている気がする……。
僕達は武闘大会三回戦の後、会うという予定になったとのこと。
「さあ、さっさと試合終わらせて」
「仲直りしちゃいましょう♪」
朝から何ともテンション高い侍女様がいらっしゃる。
「何でそんなにテンション高いの、君たちは?」
「何でって……、決まっているじゃないですか?」
「「主人の幸せがまた一歩深くなるのです。主人の幸せは私達の幸せ。主人の幸せが深くなる。それは、私達の幸せも深くなることを意味するのです♪」」
「そうなの? 僕は、侍女たる君たちも幸せになって欲しいと思っているよ」
「「ありがたき幸せ」」
「しかし、一度は奴隷に堕ち、人生を諦めかけた私達……、光を灯して頂いた皆さんに幸せになって頂くことが私達にできる恩返しなのです」
「母上様には、息子たる黄泉様のことをよろしく頼むと仰せつかっております。黄泉様の人生の華を枯らし散らせてしまったとあっては顔向けできません」
「ありがとう。僕は、いい侍女を持てたことを初めて邪神に感謝するよ」
「「邪神というのが素直に喜べないところですね……」」
「仕方ないでしょ、神にというと、すごいダメージ受けるんだ。僕は悪魔だから」
茶番はこれくらいにして……、
「そろそろ行こうか」
「さっさと試合終わらせましょう♪」
「テンション低いですよ、黄泉様」
「君たちが高すぎなんだよ……」
侍女様二人のせいで僕迄目立ってしまっているよ。同じ穴に住む狢、っていう感じだよ。
「じゃあ、行って来るよ」
「「早く終わらせてくださいね♪」」
「了解……」
「二日ぶりですね……」
「そうだな、小僧。だが、ここまでだ。何故なら、俺に敗れ去るからだ!」
ここにも同類がいた……。
試合開始のゴングが鳴らされた。
「ふははは……、リア充は砕け散れ!」
物騒な台詞叫び、斧を振り下ろすおっさん。
「なかなか早いですが……、遅い!」
矛盾した台詞を放ちながら攻撃を避ける。僕は小太刀に魔力を込める。
「来い、おっさん!」
「調子に乗るな。くたばれ、リア充!」
リア充、リア充うるさい。僕は晴菜一筋なんだ!
「リア充うるさい! “武器破壊”(ウエポンブレイカー)!」
小太刀と斧が衝突し、火花が散り、斧の刃が飛び、柄だけになった。
「……」
呆然とするおっさん。
「戦いにおいて、隙を見せたら負けです」
僕は、おっさんの後ろに回り手刀を打ち込み、気絶させた。
「さすが♪ 私達も負けておられません!」
「そうですね。侍女たる私達も、主人たる黄泉様に続くのであります♪」
楽しんでるよ、絶対。戦闘狂かよ!
見事勝利を収め、僕達は四回戦に進んだ。残り3試合……。
「それでは黄泉様、本日のメインイベント、晴菜さんと仲直り会の時間が近づいて参りました」
「黄泉様、晴菜さんと仲直りできなければ、お帰りになりやがらないで下さい!」
「わかった。仲直りして来いって事だね。美菜、佳奈の協力は無駄にしないよ」
「「その意気ですよ、我らが主人」」
色々突っ込みたいけど、まあいいや。
「「大船に乗ったつもりでいて下さいね」」
「わかった」
「黄泉様、こちらで腰掛けてお待ち下さい」
「私達が晴菜さんをお連れして参ります」
「ふぅ……、どうしたものか……」
僕から謝れば済む事なんだ。だけど、何を謝る?
「黄泉君……」
「晴菜……、一日ぶりだね。」
「うん……」
晴菜は向かいに座った。
「黄泉君」「晴菜」
二人ハモった。
「晴菜、ごめん! 僕が悪かった。」
「黄泉君……」
「僕は、彼奴等に嫉妬していた。普段、僕は晴菜と会いたくても会えない、一緒に居たくても居られない。一緒に出かければ毎回誰や彼や、僕の邪魔をし、自分達は邪魔される事なく会える。自分達が偉い訳でない、父親やご先祖様が築いた財産や地位でありながら、自分達が偉い感じに振る舞う貴族連中が憎いのと同時に妬ましかった。そんな奴らと笑って話している晴菜にも嫉妬を抱いた。何も知らない晴菜が笑って話し掛けていて、僕に対する不満を話している。分からなくて仕方ないよね、君と僕の境遇は全く異なるものだから……。僕は晴菜とやり直したいけど、晴菜を危険な目に遭わすことはしたくない。万が一でも晴菜が僕とやり直したいというなら、鷹司の従兄さんと縁を切る位でないと同じ事の繰り返しだって事、覚悟して欲しい。まあ、晴菜は優しいから無理だと思っているし、敢えて無理強いもしないよ?」
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