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40若者の相手は辛い②

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 レオポルドのしつこい手癖に付き合いながら、ルイはベッドから離れていった。一番初めに脱いだ清潔な衣を背中に引っかける。周りに散らかった布をおおざっぱに整えて、元の状態にできるだけ片づけておいた。

 誰のものかわからない体液が布を満たし汚している。見れば見るほど羞恥心があふれてくるから、それらには目を伏せてルイは認めなかった。

「あとで俺の部屋に来ないか」

「それは……お断りしておきます。儀礼でお疲れでしょうに、レオ様は明日も公務なのですから休んでください」

 「仕事なんて疲れてもできる」と、レオポルドが駄々をこねたところで、ルイはそっぽを向いた。疲労はお互いさまだ。特にルイのほうは、今も足腰が小鹿のようにガクガク震えている。次いで感じたこともない腰の痛み、尻に違和感を覚えて手を置いていた。

 労わるようにレオポルドが近づいてくるが、ルイは後ずさりして身を引いた。近づかれたら何をされるかわからないと身体が警戒態勢に入っている。

「どうした?」

「いや……あの、申し訳ありません。指南役なのにこれほど不甲斐なくて、本来なら私がご教示する立場なのに」

 かぶりを振る王子の表情は軽やかであった。「行こう」と手を差し伸べてくる彼の笑みは、空気の読めない子どもの無邪気ささえ感じられる。

「あの、レオ様の部屋にはどうしても」

「わかってるから。ほら、立ってるのも辛いだろ?」

 ひょいと持ち上げられ、横抱きにされる。ルイはあまりに軽そうにしているレオポルドに信じられないという顔を向けた。

「ルイ、頼むから俺から離れないでくれよ」

 空に放たれるか細い言葉を、ルイは聞かなかったことにした。


 外の光を直接浴びながら、ルイとレオポルドは役目を終えていった。王国建国から初めてとなる夜と朝にまたがる成人儀礼。終わりを告げる呼び鈴と、扉を開ける音のあとに二人は続いた。ここでようやく横抱きにされる指南役と、ほぼ裸同然の王子が公に姿を現すことになる。

 宮殿に仕える者たちの反応が荒ぶるのも無理のないことであった。
 担当の女官は、夜通し儀礼の進み具合を確かめていたし、心配しすぎて、侍従長と女官長に掛け合ったりしていた。いくら経験に富んだ女官でも、本当に朝までぶっ通しで身体をつなげ合っていたとは及びつかなかったのである。

「これは、殿下」

「ルイを頼んだ。俺は西殿に先に戻ってる」

「殿下も身を整えていかれませ。その恰好では臣下たちに勘違いされてしまいます」

「結構だ。自室ですべて済ませるゆえ」

 ルイを腕からゆるりと下ろすと、レオポルドは颯爽と去っていった。従者たちの強い勧めをすべて断ち切っていく様子は、我が道を行く王子のそれであった。

「お疲れ様でした、ルイ様」

「ララぁ」

 安心感を顔に浮かべながら、侍女を視界に捉えた。ルイはようやく解放されたのかと実感がした。

「早く眠りたい。ご飯食べたいし落ち着きたい」

「おいたわしや。急いで身を清めていきましょう、あとのことは私どもにお任せを」

 ルイは泣きつくように侍女を目で追った。自分の役目は終わったと思うと気が抜けて、力まで抜けてしまったようである。長かったし辛かった。王子に弱みを見せっぱなしであったなと、微睡む視界の中で、ルイは身の脆さを思った。
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